二組の家族が手を組んで建てたエネルギー効率の高い別荘は、山あいにあり、彼ら自身も借り手も使える。
文:エリック・トーマス (Eric Thomas)
翻訳:広松 佳苗
使用する以上のエネルギーを太陽光から生み出すゼロエネルギー住宅を想像してみて下さい。では、そのような家を建て、雪をいただいた山の素晴らしい眺めを見渡すことのできるリトリート [日常から離れ心身を休める場所] にすることを思い浮かべて下さい。あなたの小切手帳を空っぽにしてしまう代わりに、月に何千ドルものお金をもたらす所を。
数年前、妻のアレックスと私はこうしたことを夢に見始めました。私たちはすでにその夢の一部を叶えていて、2011年にシアトルで初めてのゼロエネルギー住宅 [高断熱による省エネと自家発電による創エネで実質消費エネルギーがゼロの住宅] を、近所にあるもっと小さなタウンハウスほどの価格で建てた時から、ネットゼロ [年間エネルギー消費量の収支が0] で、太陽光エネルギーで稼働する家に住んでいます。これが本当に良い経験となったので、静養休暇用の家をワシントン州のメソウバレーに建ててみたいと思うようになりました。私たちの夢は現実になったのでしょうか?
夢の共有
私たちは、シアトル初となったゼロネエルギー住宅を近隣のもっと小さなタウンハウス [庭付きの低層集合住宅] ほどの費用で2011年に建ててから、ネットゼロエネルギーの太陽光発電住宅に住んでいます。
リトリートについて夢想し始めた時、私たちは長い間いわゆる「シェアリング・エコノミー」のファンでした。私たちは Airbnb(エアビーアンドビー)で自宅の一部屋を貸し出し、ヨットを共同所有する協同組合を設立し、さらに知らない人へのバイオディーゼル車の貸し出しさえも行なっていました。ですから私たちは自然と、家を建てる冒険のためのパートナーを探し始めました。
友人のデイブとリサもメソウバレーで行えるハイキング、マウンテンバイクでするサイクリング、クロスカントリースキーが大好きでした。そしてすぐに私たちは完璧な土地区画探しに一緒に出かけるようになりました。ウィンスロップの小さな町から徒歩圏内の場所にありながら完璧なカスケード山脈の眺めを見渡すことのできる尾根の上にあった3/4エーカー(3,035 平米)の区画を見つけた時、私たちは「運命の土地」を見つけたと悟りました。私たちはLLC(合同会社)を設立し、土地を共同購入しました。
振り返ると私たちの考えは浅はかで、最初の家のようにこの別荘を簡単に建て、資金繰りができると考えていました。すぐに建築費用が思っていたよりずっと高いことが分かりました。夢を諦めるつもりはなく私たちは家の大きさを縮小し、自分たちで建築全般の手配をし、仕上げ作業の多くに取り組むことを決めました。そうした課題に加え、建築の間に私たち二組の夫婦はそれぞれ家族が増えました。コンクリート基礎を張った直後にアレックスと私に子供が生まれ、すぐ後にデイヴとリサが双子を授かりました。私たちは週末に車で建築現場へ向かいましたが、雪が降れば最大で 6 時間かかるような道のりであり、建築現場にテントを張って寝泊まりしていました。
家の仕組み
私たちの 169 平米のリゾートは 100% クリーンな太陽光発電で稼働していて、プロパン、天然ガスや薪は使いません。送電線につながってはいますが、(夜間に)送電線から電気を受けているのか、(晴れた日に)余剰電気を作っているのかによって電気メーターはプラスにもマイナスにも回ります。
エネルギーを節約するために、壁と屋根は、木製の層に挟まれた硬い発泡体である構造用断熱パネル (SIP) を使ってできています。窓は 3 重ガラスで、冬に日光が家を暖めるように配置されています。家は 2 つの小さなパナソニック製小型エアコンによって暖められ、夏には冷房としても機能します。湯沸かし器の上部には小さなヒートポンプがあります。
そもそも SIP の壁は気密ですが、さらに冷たい隙間風が入ってくることのないように自分たちで空気遮断をする時間を取り、全ての隙間にコーキングとテープ貼りをしました。屋内の気温を維持しながら全ての部屋に新鮮な空気を取り込むため、熱回収型換気システム (HRV) を設置しました。
私たちのエネルギー効率の良い家は通常の家よりもエネルギーの使用量がかなり少ないとはいえ、ゼロエネルギーという目標を達成するためにはまだ電気を生産する必要がありました。南向きの屋根にソーラーパネルを設置しましたが、これは晴れた日には最大で 5,400 ワットを生産できます。
エネルギー効率の良い私たちの山小屋は標準的な住宅よりエネルギーの消費がかなり少ないものの、ゼロエネルギーという目標を達成するには、やはり、電気を作り出す必要があります。
好きでする労働
私たちの家をゼロエネルギーにするためには全費用に追加で 26,000 ドルかかりました。これには SIP の組み立て、3 重窓、熱回収型換気システム、エネルギー効率の良い設備とソーラーパネルの費用が含まれ、政府からの払い戻し 5,000ドルを引いた後のものです。費用を抑えるために家のデザインを可能な限り立方体に近いものにし(エネルギーの節約にもなります)、仕上がりは装飾的というよりは丈夫なものを選び、多くのスウェット・エクイティー [不動産を獲得するための労力] を費やしました。
私たちの家は単に規定通りに建てるよりは多くの費用がかかりましたが、エネルギーの節約ができるとすぐに分かりました。私たちの地域で典型的な 1 月 220 ドルをエネルギー代として払うかわりに私たちは基本料金の 32 ドルを支払うだけです。一定期間、ワシントン州は私たちの太陽光発電に年間約 1,200ドルを支払うことになっています。
私たちは共同所有の形をとっていたため、従来型の住宅ローンを組むことができませんでしたが、もし私たちがネットゼロを得るための費用差 26,000 ドルを 30 年間、利率 3.92 パーセントで調達していたとしたら、年間のローン請求に 1 月あたり追加で約 123 ドルがかかっていたでしょう。私たちは公共料金に関して 1 月当たり 190 ドルを節約しているので、毎月 67 ドル得することになります。私たちの家を借りる人が、環境に優しいデザインのためにその家を選択するかどうかは分かりませんが、私たち使っていない時は、ほとんど常に借りられています。1 年と少しほど貸し出しを続けていますが、費用を差し引いた後、私たちの家族それぞれに月 1,350 ドルほどの収入をもたらしています。
そんなわけで、私たちのゼロエネルギー目標によって幾ばくかの複雑さと費用が加わりました。しかしその費用は公共料金の請求額の低減によって相殺され、よりクリーンな再生可能エネルギーを家での使用量よりも多く生み出していると知ることの満足は、追加の労力を補って余りあるものとなりました。私たちのゼロエネルギー・ホーム・プロジェクトが同じような夢を追う方々の気づきになればと願っています。
エリック・トーマス (Eric Thomas) は、Northwest Green Home Tour とシアトルの EcoBuilding Conference を共同で組織した。www.ArtemisiaCabin.com でゼロエネルギー住宅の経験をブログにまとめている。
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Zero-Energy Retreat Home
By Eric Thomas| June/July 2019
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