食材の切れ端や食べ残しを鶏のエサに

生ごみと菜園の残渣で1日のエサの量を調整して、鶏にもっと栄養を与えよう

 

 

雑食性の鶏は、生ごみと菜園の残渣をがっつり食べてくれることが期待できる

 

 

文:ジョエル・サラティン

翻訳:浅野綾子

 

鶏は雑食性だから、自営農園での廃物利用に最も腕利きのヤツかもしれない。歴史的に、鶏の掃除屋の役割は、積み肥作りに先立ち、生ごみや菜園の残渣を始末することや、大抵マダニや甲虫のたかり場を取り除くことだった。 

 鶏のチームメイトは、もちろんブタだった。特に、乳製品加工とチーズ作りチームでは。ブタは、溢れんばかりの大量のホエーと傷んだミルクを、がつがつといける。鶏もホエーやミルクが好きだが、ホエーを5ガロン(19ℓ弱)の消費にはたくさんの鶏が必要だ。驚くべきことに、化学肥料が導入され機械化される前の時代、脱脂乳は大豆よりも確実で安いタンパク質の供給源だったのだ。全く、時代も変わったものだ。

 鶏ささやき人であり、都会養鶏の教祖であるパット・フォーマン (Pat Foreman) は言う。私たちが消費する卵全部を産卵するのに必要な鶏、その全てをまかなうことができる生ごみが、現在アメリカにはあると。鶏卵販売会社が1つもない国を想像できるかい? そこにいる人たちが卵を食べないからではなく、その国の食物システムがクローズド・ループ [製造工程で出る廃棄物を処理して再利用するシステム] モデルにきっちりとまとめあげられて、鶏が生ごみの流出を封じているという理由でだ。今の時代、そんな場所こそが生活の場ではないだろうか。

 人間と同じように、採卵鶏には、タンパク質と炭水化物の両方が必要だ。鶏に食材の切れ端や食べ残しを与えることに私は大賛成で、生まれてこの方与えてきているが、完全にバランスのとれた食事にならないことが多い。鳥の代謝は高いため、他の動物の代謝と比べて、栄養不足に耐え難い。筋肉組織の関係で、鳥は、草食性の動物やブタよりも、体を包む脂肪が少ないのだ。

 おそらく、体に蓄えるエネルギーが低いという生理機能の何かが、鳥を、丁度飛ぶために重くなりすぎないようにしているのだ。結局のところ、鶏は鳥だ。時々、私たちはこのことを思い出す必要がある。鳥の代謝は高いのだ。ちょくちょく食べなければならないし、今日お腹一杯食べて、明日明後日は寝るということができないのだ。

 生ごみだけを鶏にあげようというのなら、継続的で安定した中身を与える必要がある。多くの場合、生ごみはそんな形で続いて出たりはしない。ある日はバケツ一杯の生ごみ、次の日は何もない、その週に2、3度外食するなら特にだ。このことについて、ハーベイ・ウサリー (Harvey Ussery) が「The Small-Scale Poultry Flock(仮題:小規模養鶏)」で書いた以上に、創造的かつ決定的に書き記した人はいないかもしれない。ここでは、彼の創造的なアイデアの1つ1つに触れることはしない。まず、この本を読んで欲しい。1つだけ、彼の数ある提案の中から触れておこう。ミミズを使った生ごみの堆肥作りについてだ。この方法をとることで、ミミズは、生ごみと残渣の量が変動する間、安定的なタンパク質供給源になるだろう。

 ミミズは、炭水化物をタンパク質に変えてもくれる。鶏は、タンパク質割合が14~16パーセントの食料を摂取する必要がある。とうもろこしは平均7パーセントがタンパク質だ。エアルーム (heritage varieties) 種にはもっと高い割合のものもあり、10パーセントを上回るものさえある。

 生ごみと残渣を鶏のエサにする時、1番に覚えておかなければならないのは、重量のほとんどが水分であるということだ。だから、1羽の鶏が1日にどの程度のエサを食べるかを調べる時、水分含有量の調整として、少なくとも係数3をかける必要があるだろう。乾燥エサの場合、健康で産卵可能な卵肉兼用の鶏は、エサ販売店で一般的に入手可能な混合エサで、1日あたり5から6オンス(140g強)食べるだろう。係数3だと、鶏は1日あたり、1ポンド(450g強)以上必要になることに気づくだろう。エサが、トマトやレタスのようにとても汁気が多い場合、係数は4~5へと大きくなるはずだ。こうなると、かさが大きくなりすぎて、鶏は満足するまで食べることができなくなる。というのは、それ程のエサは鶏の消化管には入らないという、たったそれだけの理由だ。キャベツとレタスだけで間にあわせようとする人間を想像できるかい?

 鶏は、ミネラルと繊維以上のものが必要だ。生ごみ給餌法をさらに複雑にするのは、どのような食事の支度であっても、何種類かの食材が、いつも適当に組み合わさるとはいえないことだ。例えば、タンパク質として同等量の肉の小片がなければ、キュウリの皮は山盛りになってしまうかもしれない。幸いにも、鶏が必要とする1日のタンパク質はオンス単位だから、少しの量で大助かりだ。ミミズ、幼虫、その他どんなイモムシもタンパク質の素晴らしい供給源だ。もっとも、肉であればどのようなものでも大丈夫。

 地元で古くから農作業に従事している人たちは言う。冬に、農場の子供がする朝の仕事の1つは、大小の動物を射止めたり罠にかけたりして鶏にあげることだったと。冬は、タンパク質に富む小さな虫たちやミミズがとれなくなるからだった。お腹を開いたスカンク、リス、ウサギ、フクロネズミ、アライグマは、タンパク質に飢えた鶏をもてなすご馳走になった。

 1週間に1回で、この新鮮な肉と内臓のタンパク質が、一家の鶏達を次の週までもたせると思う。ここポリフェイスでは、現在、道路でひかれた動物の死骸か、狩りで収穫した鹿の死骸(ほとんどの肉を私たちが食べた後で)を、冬の間は日常的に鶏小屋に入れている。鶏は、最後の肉の小片を死骸から実際につついてとるまで数日間かかることもあるが、差し入れたものを味わい、次第にすっかりきれいになる。

 群れに与える生ごみの調整の難しさが、エサ箱に1日分のエサをいつも入れておくことをお勧めする理由だ。鶏がほとんどの食料を生ごみから摂取するとしても、エサ箱からいつでも補充することができる。このようにすれば、鶏が食べたがり、かつ、鶏に必要な全てのものを、鶏が摂取していることを確実にできるのだ。

 幸いなことに、鶏はテレビも見ないし、スーパーの広告を見ることもない。広告フレーズや、イメージに左右されることがない。鶏の脳は世界で一番大きいわけではないが、何を食べる必要があるか正確にくちばしに信号を送るのに十分な大きさだ。全ての動物と同じように、鶏は健康でいるために何が必要かについて、持って生まれた素晴らしい感覚があり、必要なものを探し出すだろう。

 エサ箱の側面についた給餌口の安全バルブは、鶏が、突如として大切な栄養源を欠かすことのないよう確実にするだろう。覚えておこう。鶏の代謝は、猫や牛よりも早い。生ごみをエサにする際の大きな挑戦の1つは、衛生面とごみ処理だ。鶏は頭が良いのと同じように、人間だって賢い。鶏に、はしや銀食器で食事をするよう調教している人を見たことがない。台所であまった生ごみで一杯にした夕飯の皿を鶏に出せば、採卵鶏が礼儀正しく皿を囲み、皿の縁越しにご馳走をくちばしでつつくなんてことは、間違いなく起こらない。鶏は、「お先にどうぞ、さあ食べて」なんて、マナーよく他の鶏にコケッと鳴いたりはしないだろう。それどころか、皿の至る所で、引っかき、つつき、探るだろう。折々に、皿の中身全ては、囲いの周りや、寝わらの至る所に、飛ばされてしまう。

 汁気の多い生ごみを与える時は、エサ箱が十分に深く、鶏が中に入って引っかき回ることができないものであることを確認しよう。エサ箱中を引っかきまわるのは滅茶苦茶になって見苦しいだけではなく、寄生虫の摂取も促してしまうかもしれない。理想的には、鶏の侵入を防ぎ、引っかくことができない給餌システムが最適だ。市販の工場生産のエサ箱の上部に心棒がついているのは、この理由だ。

 鶏が横からエサをつつくことはできるが、中に侵入することができないように、エサ箱の上に簡単な締め出し板をつければ、全て清潔に保つのに役立つだろう。ただ、真中まで鶏がつつくことができる、幅が十分狭い深箱であることを確認しよう。もちろん、大きくて目が粗い、菜園の雑草のようなものを、半分堆肥作り場としても使う(エサやり)場所に足すことは良いアイデアだ[鶏舎の中に、直接わらなど堆肥作りの資材を入れ、その上に残渣などエサを置き、鶏が散らかしたエサは堆肥資材に、また、引っかく動作は堆肥の切り返し作業の代わりとして活用し、堆肥作りをする飼育者もいる]。この半堆肥作り場が盛り上がるに任せよう。そうすれば、進む分解作用が、文句なくこの場所を衛生的に保ってくれるだろう。

 汁気の多い生ごみを、金網や羽根板のついた台にのせる方法もある。そうすれば、引っかかれて飛ばされたものが何であれ、地面や寝わらにつかないで済む。鶏は台に寄って来て、汁の滴るご馳走をつまみ、汁は透過性の台の下に流れていく。この台の下の炭素の寝わらを厚くしておくなら、水分は穏やかな分解作用を促し、鶏が辺りに水分を引きずって歩くことはないだろう。時々、台を新しい場所に動かして、湿気のあるところに必ず引き寄せられるミミズや小さな虫などを、鶏に味わってもらわなくてはならない。鶏は湿った場所をかきまぜて、通気性を良くする。それが堆肥の分解をさらに促し、小さな虫たちや、鶏のごちそうになるものを刺激するだろう。

 肉や生ごみを鶏に与える最も素晴らしいことは、採卵鶏が、こうした残り物と卵の中身との間に、卵の殻という生物学的バリアーを作ってくれることかもしれない。これは、皆を、鳥類から何らかの伝染病をもらうことがないという安心した気持ちにさせてくれる、そんな塩梅のバリアーなのだ[鶏肉は、鶏が摂取した生ごみの影響が色濃く出る。卵を食べる場合は、生ごみと卵の間に、卵の殻というワンクッションが入るため、生ごみに含まれる雑菌と私たちが口に入れるものとの距離が遠くなり、伝染病をもらう危険性が減るという意味]。

 確かに、採卵鶏が年を取り、シチュー鍋に入る時期になると、このバリアーによる分離作用も期待できないが、自然が完璧をもたらすのは稀だ。結局のところ、私たちは自分でも免疫を上げなければならない。総じて、生態が人間に役立ってくれる観点からみて、家庭飼育の採卵鶏よりも働き者の仲間を知らない。鶏は、独特の雰囲気をかもし出し、勤勉で、何よりも役割を果たしてくれるのだ。仕事に取り掛かる時、楽しげにコケッと鳴き、自然界で最も完全な食べ物の1つをもたらしてくれるのだ。そんな鶏を愛さずにいられようか。

 

ジョエル・サラティンは、バージニア州スウープのポリフェイス・ファームズで、農業と執筆活動に従事。農作業他についての彼の著書は、MOTHER EARTH NEWS のオンラインストアで販売中。

 

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Turn Food Scraps Into Poultry Feed

By Joel Salatin 

April/May 2017