最近の建築基準法の改正により、米国内外で合法的なコブ建築への扉が開かれた。
文:マイケル・G・スミス(Michael G. Smith)
翻訳校正:沓名 輝政
2021年国際住宅基準(IRC: International Residential Code)の付録として、初めてコブ建築が盛り込まれました。IRCは、国際基準評議会(ICC: International Code Council)のモデル建築基準の一部で、米国内のほとんどの建築基準の基礎を形成しています。コブ研究所(CRI: Cob Research Institute)は、「コブを使った建築を希望するすべての人が合法的に利用できるようにする」ことを使命として2008年に設立された非営利団体で、いくつかの大学や研究所での長年の研究、協力、試験の結果、公共サービスとしてこの付録を開発しました。付録とその付属文書は、CRIのウェブサイト(www.CobCode.org)でご覧いただけます。
コブは「一体成形のアドビ」とも呼ばれ、イギリス、北欧、中東、西アフリカ、中国、アメリカ南西部など、世界中で何千年も前から使われてきた土の建築方法です。粘土質の土と藁、水、砂を固く混ぜたものを何層にも重ね、柱を立てずに屋根を支える一枚板の壁を作ります。コブ・ハウスは適切に設計、施工、維持管理されれば、何世紀にもわたって存続することができます。
環境に優しく、無害で、低コスト、習得が容易で、芸術的な感動を与えるとして、1990年代半ばから世界中でコブ建築が復活しています。しかし、コブに関する建築基準が存在しないため、米国のほとんどの地域でコブ建築の許可を得ることは困難か不可能でした。コブの建築基準は、米国内外で合法的なコブ建築への扉を開くものです。
新しいコブ建築基準は何を意味するのか?
IRCは3年周期で改訂され、誰でも修正案を提出することができます。変更や追加は、IRC委員会の投票、または建築・消防関係者を中心としたICCの投票権を持つ会員の過半数の賛成で承認されます。2019年10月、ラスベガスで開催されたIRCパブリック・コメント・ヒアリングで、ICCメンバーはCRIの基準案について投票を行いました。この提案は賛成93票、反対6票という圧倒的な票数を獲得し、その後オンライン投票で参加したICC会員の3分の2以上の支持を集め、2021年のIRCに「Appendix AU: Cob Construction (Monolithic Adobe)[付録AU:コブ建築(一体成形のアドビ)]」として正式に収録されるに至ったのです。
IRCはモデル建築基準法であり、それ自体に法的根拠はありませんが、一戸建て、二戸建て、タウンハウス、付属構造物の建築基準として米国のほとんどの地域で使用されています。州、郡、市などの政府管轄区域が採択することで強制力を持つようになります。これらの管轄区域には、建築規則の改訂と採用のための独自のスケジュールがあり、通常、新しい基準が採用されるまでに少なくともあと1、2年を要します。2021年版IRCに基づく改正がいつ行われるかは、地元の建築局や州の条例制定を監督する機関に確認してください。
さらに、IRCの付録は完全に任意です。IRC本体とは異なり、各付録を建築規制の一部とするには、管轄区域が特別に採択する必要があります。一般市民は、地元の建築局や州政府機関にこのような規定の必要性を訴えることで、このプロセスに影響を与えることができます。
ストローベイルや藁版築(light straw clay)など、他の自然素材の建築システムも同じプロセスを経て、まずIRCの付属書となり、その後、州や地域の建築基準法に採用されています。例えば、「IRC Appendix AS: Strawbale Construction[IRCの付録AS:ストローベイル建築]」は2015年のIRCの一部として承認され、その後、少なくとも6つの州と9つの市または郡の管轄区域で採用されています。
コブ建築の付録がお住まいの地域に採用される前でも、コブ建築の許可を得るのに役立つ可能性があります。すべての建築基準法には「Alternative Methods and Materials Request(AMMR: 代替工法・資材要求)」と呼ばれる規定があります。これは、代替案が「少なくとも規定と同等」であることを建築主事に納得してもらえる形で証明できれば、規定に含まれていない建築手法を承認できるというものです。現在までに、米国で許可されたコブ建築のほとんどはこの方式を採用していますが、許可申請を裏付ける証拠をまとめる作業は、しばしば困難なものでした。ICCが「付録 AU」を発表したことは、コブ建築が安全で合理的な代替案であることを役人に解らせて安心させるのに大いに役立つはずです。
コブ混合物のテスト
新しいコブ基準では、コブ混合物の収縮率、圧縮強度、そして場合によっては破断係数を試験することが義務付けられています。収縮試験は最も簡単で、建設者が現場で簡単に行うことができます。必要なのは、2x4材で作った箱だけです。箱の内寸は、長さ24インチ(61cm)、幅31/2インチ(9cm)、高さ31/2インチ(9cm)であることが必要です。箱の底は木製でもいいですし、底をつけずに平らな場所に置いてもかまいません。箱に薄い紙かビニールシートの内張りを敷いてから、コブを完全に詰め、その上をスクリード(左官トンボ)で平らにならし、コテで滑らかに仕上げます。
箱をそのまま置いて乾燥させます。この工程は、周囲の温度や湿度にもよりますが、2日から数週間かかります。数種類のサンプルを作った場合は、1つを割ってみて、乾いているかどうかを判断します。真ん中が黒っぽくなっている場合は、まだ乾いていません。ゆっくりと乾燥させ(直射日光よりも日陰で)、硬めの(湿度の低い)コブ混合物を使用すると、収縮を抑えることができるかと思います。24インチ(61cm)の長さのうち、1インチ(2.5cm)以上縮まないと示すだけで良いのです。これは低いハードルであり、まともなコブ混合物であればクリアできるはずです。このテストは、収縮によるひび割れが構造的な弱点にならないことを保証するだけです。。。
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