大麦で少量の醸造

マザーアースニューズ  家

自家醸造者も穀物の達人も、この手間いらずの作物 を植えて恩恵を得られる。

文:クリス・コルビー(Chris Colby)

翻訳:沓名 輝政

 

 大麦は、小麦、トウモロコシ、米、オーツ麦、ライ麦、ソルガムなどと同じ植物学上の仲間(イネ科、学名 Poaceae)である穀物です。比較 的早く成熟する冷涼な季節の作物で、収穫前の数週間に最高気温が 21°C に達する気候で最もよく育ちます。大麦は、 冬用大麦として晩秋に植えることができ、その場合は発芽して越冬し、早春に成熟します。大麦は、夏の気温が 29°C に達する前に成長するのに十分な時間があれば、春に植えることもできます。春大麦は通常、約 90 日で成熟します。 米国では、商業用大麦は通常、気温の高い地域で育つトウモロコシや小麦よりも北側の地域で栽培されています。米 国では、アイダホ、モンタナ、ノースダコタ、ミネソタ、ワシントンの各州で広範囲に大麦が栽培されています。カナ ダでも大麦は栽培されており、アルバータ州が最も多く生産しています。過去数十年の間に、大麦の生産はより北に移 動しています。トウモロコシや小麦は大麦よりも高い価格で取引されており、これらの作物には冷涼な気候で育つ遺伝 子組換え品種が存在します。その結果、農家は大麦の栽培からトウモロコシや小麦の栽培に切り替えたのです。ま た、気候変動により、かつての大麦産地の南端で大麦を栽培することのリスクが高まっています。 かつて大麦は、主に麦芽用(ビールや蒸留酒の製造)と家畜の飼料用に栽培されていましたが、食用としての栽培量 はごくわずかでした。麦芽用の大麦は高値で取引されるため、ほとんどの農家が麦芽用の品種を栽培していました。 醸造用に必要な基準を満たせない大麦は、家畜用飼料として安価に現物市場で販売されていました。また、飼料用に 特別に品種改良された大麦もあります。現在、米国で栽培されている麦芽用大麦のほとんどは、大麦を醸造用や蒸留 用の麦芽に加工する製麦会社と契約されています。この契約は、生産者を不作から守る反面、合意された価格に拘束 するものです。

 

自分で大麦を栽培する

 米国では、ゾーン 3 から 9 までの地域で大麦を栽培することができます。庭や小規模な農園で栽培することができ ます。北部に住んでいる人は、春に大麦を植えます。その他の地域では、晩秋に植えます。大麦は、1°C という低い温 度でも発芽します。一般的に、土壌の準備ができていれば、大麦を植えることができます。お住まいの地域の最適な 植え付け時期については、お近くの地域連携センター(extension office)にお問い合わせください。 大麦は平均的な菜園の土でよく育ちます。土地の準備としては、十分に除草した後、重いレーキを使って土の塊を崩 し、地面を平らにします。先に耕運機をかけておくと、作業の手間が省けます。その後、先の太いレーキを使って土に 浅いすじを作ります。種袋に記載されている植え付け密度の条件を確認しますが、菜園であれば 46 平米あたり 450gの種子が適切です。小規模な農場では、1 平米あたり 120~150 本の苗が得られるような播種量を選びます。

 菜園では、大麦の種を手で播くことができます。私は種の総量を 3 分の 1 に分けます。最初の 3 分の 1 は、できるだけ均等になるように全体に撒きます。2 回目の 3 分の 1 も同じように行い、最後の 3 分の 1 でできるだけ均等にしま す。種子のほとんどは、レーキでできた溝に落ちます。レーキを使ってすじの 上に土を押し込み、種を埋めていきます。種は土の表面から 1~11/2 インチ(2.5 ~ 3.8cm)下に埋めるのが理想的です。埋まっていない種は鳥に食べられ てしまう可能性が高いので、できるだけ覆うようにしましょう。大規模に植え る場合は、種を一定間隔のすじにまく条播機を使う必要があります。

 麦に水をやりますが、土を濡らさないようにしてください。早い段階で水を やりすぎると、収穫量が落ちてしまいます。栽培期間中は、土に均等に水を与 え続けますが、大量に水を与えてはいけません。土は常に軽く湿っていますが、決して濡れていてはいけません。

 大麦は多量の肥料を必要としません。むしろ、窒素が多すぎると、植物の成 長が活発になり、倒伏(茎が地面に近いところで曲がってしまい、収穫が困難 になり、収穫量が減ること)が起こりやすくなります。また、大麦の品質を示 す「ふっくらとした実」の割合は、窒素濃度が高くなると減少します。また、 窒素が増えると、麦芽用の大麦としては好ましくないタンパク質が増えてしま います。麦芽用や食用として栽培する場合、穀粒中の窒素の割合は 12% を超 えてはなりませんが、飼料用として栽培する場合はそれ以上の割合でも問題ないです。商業用の畑では、1 エーカー(4 千平米)の土壌に含まれる既存の窒素重量と添加する窒素の合計は 1 エーカーあたり 86~95kg にすべきです。し たがって、どの程度の窒素を添加すべきかを知るためには、植え付けの前に土 壌分析を行う必要があります。一般的な菜園の土壌であれば、46 平米に対して

約 450g の粒状肥料(40-0-0 など)を加えれば、大体の目安になるでしょう(特に菜園が以前、ふんだんに施肥する人 に所有者されていたら)。比較的豊かな土壌であれば、この半分以下の量で済むこともあります。植え付けの頃に肥 料を加え、その後の栽培期間中は窒素肥料を一切加えないようにします。

 大麦が必要とするリンとカリウム(NPK 肥料の「P」と「K」)は、窒素に比べてはるかに少ないです。土壌中のリ ン酸(P)濃度が 20ppm 以下の場合は、P2O5(五酸化リン)を 1 エーカーあたり 13.6kg(最大)施肥することで改善 されます。同様に、土壌中のカリウム(K)濃度が 75ppm 以下の場合は、カリウム肥料を追加します。一般的な菜園用 の土壌であれば、おそらく肥料を追加する必要はありません。

 硫黄は大麦が最も必要とする微量栄養素で、約 10ppm ですが、一般的な菜園の土に硫黄を添加する必要はないで しょう。

 

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