ハチはよく知られた花粉媒介者ですが、2019 年 5 月に 『Biology Letters』で発表された最近の研究では、ハチと比べてあまり知られてはいないものの、夜行性の蛾が花粉媒介で重要な役割を担っていることが強く示唆されています。
これらの蛾は、この研究で「夜の花粉媒介ネットワーク(nocturnal pollen transport network)」と呼ばれるものの一部であり、数十ある植物タイプに送粉する蛾の種は 100 以上に上ります。研究によれば、蛾は花粉を口器(吻[頭部で、目より前方に突出した部分や、口またはその周辺から出て伸縮のできる管状の口先])ではなく、体の前部につけて運ぶといいます。そのことは、蛾の送粉が見落とされてきたかもしれない理由になります。一般的に科学者は、花粉の跡がついた昆虫の吻から花粉を採取しています。この研究が意味するのは、こうした蛾の働きは、農地におけるいくつかの野生植物の科にとって必要不可欠であるということです。とりわけ、日中ハチやチョウ、ハナアブが飛来しない植物にとってです。 蛾の花粉媒介に対する貢献とその個体群の減少を考慮して、研究者らは、日没後に蛾が行う極めて重要な花粉媒介の働きを守るために、農業生態系における保全戦略に蛾を加えるべきであると主張しています。また、夜の花粉媒介ネットワークは、この研究で明らかになった点を超える働きがあるかもしれません。本研究論文を読むには www.RoyalSocietyPublishing.org で「nocturnal pollinators(夜の花粉媒介者)」の検索を。
* 和訳全文は1年おきに発行される和訳電子版のバックナンバーでお楽しみください
コメントをお書きください