気候対応農場へ シフトしよう

マザーアースニューズ 自然 自給 DIY

土にやさしい持続可能な農地管理を実践して、そのごほうびを手に入れよう。

文:ジェフ・マイヤー(Jeff Meyer)

写真:チャールズ・グッディン(Charles Goodin)とミカエル・メイナード(Mikael Maynard) 

翻訳:浅野 綾子

 

 農業ほど長い歴史のある技術なら、今や完全無欠にちがいないと思うのは無理もありません。何といっても研究には、作物栽培はおよそ2万3千年前にはじまったと受け取れる記述があるのです。これほど長く続いてきたなら、人間はあらゆる問題を解決してきたに違いないと思うのはごく自然なことです。

 でも解決してはいなかったのです。実際に土壌劣化は世界中で起こっており、その責任は主として現代の慣行農法にあります。耕起、行き過ぎた肥料の使用、土地の浸食など、集約農業の技術は土壌にストレスを与え、結果として環境上の害や食物生産量の減少をもたらしています。

 企業農業や慣行農業のみが土壌危機をもたらした犯人であると信じることもまた、無理のないことかもしれません。

 今のオーガニック運動がはじまった時、有機農業は1900年代初期からすでに良い評判を得て、その恩恵を受けていました。けれども実際は、有機農業も環境にはさほど良いものではありません。というのも、そのねらいは狭い範囲(消費者が農薬漬けになった生産物を口に入れないようにする)になりやすく、有機農業は多くの場合「木を見て森を見ず」の状態だからです。

 土を再生することにより気候変動に対抗するという栽培方法をはじめること、集団でとりくむことが重要です。このことはまた、ここに来て押し寄せる波のように多くの農家が農地を管理する方法を変え「気候対応農法(Climate Farming)」とよばれる栽培方法を採用している理由でもあります。

「気候対応農法」とは?

 「気候対応農法」は、すでに実証済みの持続可能な複数の農法を、1つの現実的な農法へと融合させています。私たちは「気候対応農法」を、ジョニー・アップルシード・オーガニック・ビレッジ(Johnny Appleseed Organic Village)で実践して(そして進化させて)います。このビレッジは、ジョージア州南東部にあるオケフェノキー国立野生生物保護区(Okefenokee National Wildlife Refuge)近くにある、持続可能な生活の開発地域です。

 私たちの目標は、表土の健康状態を改善し、農家に炭素隔離と窒素固定の技術を身に着けてもらうことです。

「気候対応農法」は、パーマカルチャー、シントロピック農法(syntropic farming)、環境再生型農業という、時の試練を経た農業技法を一体化したものです。伝統的な農地管理の方法と現代の科学研究をくみあわせながら、この農法を作り上げました。

 なぜ、わざわざ手間をかけてこれらの農業技術を組み合わせ、1つの体系にまとめあげたのか。それは、大気中に存在する二酸化炭素の隔離が、気候変動との戦いの鍵だからです。農業には気候を大きく変える可能性があります。「気候対応農法」はその大変動をもたらす、自然で効果的なきっかけになります。

 この記事では、私たちの農場でおこなわれた2つの事例研究をご紹介します。読者が自分で栽培を実践・実験するアイデアになるでしょう。

モノカルチャー果樹園の事例研究

 「気候対応農場」になる前、ジョニー・アップルシード・オーガニック・ビレッジでは、典型的な有機農法が行われていました。気候変動の緩和についてよく考慮されていましたが、十分ではありませんでした(やや誤った方向に進んでさえいました)。

 最初の解決策の1つは、すでにあったメイホー[米国南部原産のサンザシ]を単一栽培する果樹園を、環境再生型のフード・フォレスト[森の構造を真似た作物栽培方法。フォレスト・ガーデンともよばれる]に変えることでした。所有地に、並べて植えつけた木、低木、または多年生植物があれば、以下の解決策と同じ対策を採りいれることができます。

 以前、メイホーはある方向に、完全にまっすぐに並べて植えつけられていました。それによって3つの大きな問題が生じていました。

 1️⃣ 狭い植え床は表土が流出しやすく、木の根がむきだしになって木が不安定になりやすかった。

 2️⃣ 植え床が土地の自然の等高線にそっていなかったため、大雨の水で貴重な土や栄養が植え床から流出していた。

 3️⃣ メイホーの周りにはサポート品種がまったくなく、コンパニオンプランツもまったく植えつけられていなかった。木はなんと全部同じ状態で、見るからに寂しいモノカルチャーだった。

 この問題を改善するため、典型的な有機農法の枠の外に出る必要がありました。パーマカルチャーのデザイナーのマシュー・リース(Matthew Reece)に触発されて、メイホーの株間の土を掘って木の回りに置き、それぞれの木の幹のまわりを、土を盛り上げた島にしました。メイホーの島の間にできた小さな溝はそのままにされ、今ではそのおかげで水や栄養が外へ逃げないようになっています。

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