母なる自然のハーブの治癒薬に働いてもらい、
必要な休息をとろう。
文：マリア・ノエル・グロウヴス (Maria Noël Groves)
翻訳：沓名 輝政
良い睡眠をとるために、大変楽しくお手頃な自然療法がいくつかあります。とはいえ、睡眠は非常に捉えどころのないものです。米国疾病予防管理センター (Centers for Disease Control and Prevention) によると、大人には一晩に 7~9 時間の睡眠が必要ですが、この基準を満たせていない人がたくさんいます。大人の約 35% は、必要最小限の 7 時間さえ満たせていません。割合が上昇して有色人種では 46％、（大人より睡眠の必要な）10 代では 70％ 近くの人が推奨睡眠時間の 8 時間を取れていません。女性は特に不眠になりやすく、夜に横になりながらも眠れずに目の覚めている女性は 50％ に上ると報告されています。
ふらつきや倦怠感は、不眠によって身体の受ける影響のほんの一部に過ぎません。睡眠不足は糖尿病、心臓病、肥満、鬱、免疫力の低下、認識機能障害のリスク増大につながります。積み重なって出る影響もありますが、ほんの一晩の睡眠不足で風邪をひくリスクは 3 倍も高くなります。また睡眠不足はホルモン生成に影響し、グレリン（満腹を知らせるホルモン）が抑制され、レプチン（食欲をコントロールするホルモン）が増大するため、500 カロリーも余分に食べてしまうことになりなりかねません。例えもっと睡眠をとりたいとしても、満足に睡眠をとることがコントロール不可能なものと思われるかも知れません。幸いなことに、ハーブあるいはライフスタイルを少し変えると効果があります。
睡眠に役立つ主なハーブ 3 つ
より良い睡眠をとるのに有効な植物、とりわけ鎮静効果のある植物は数多くあり、神経系を鎮めたり落ち着かせたりします。各ハーブの効き目の感じ方は人によってまちまちです。トレーニングを受けたハーブ専門家としては、何でも良いので試したことのないハーブで徐々に始めることをお勧めします。最初は家でリラックスしている夜に試してみましょう。就寝の直前か、夕食から就寝までの間に数回、少量から始め、徐々に量を増やしていきます。
睡眠に効くハーブと鎮静作用のある薬との組み合わせには必ず注意してください。抗不安薬、睡眠薬、抗鬱薬、また一部の鎮痛剤や抗アレルギー薬も同様です。ハーブ治療薬と組み合わせることで沈静効果が強くなり過ぎる可能性があります（特に大量に摂取した場合）。沈静効果が強過ぎた場合の重大な副作用には、運転能力の低下、運転中や重機を操作中の居眠り、鬱や倦怠感のリスク増大、心拍数や呼吸の低下が挙げられます。
しかし、以下のハーブに人は十分耐性があり、比較的安全性も高いです。一般的には、チンキ小さじ１/5～1（1～5ml）を水で希釈して摂取します。お茶一杯に乾燥ハーブ小さじ 1、あるいは、ラベルに記載の錠剤数を摂取します。床に就く直前に摂るか、夕食後から床に就くまでの間、数回に分けて摂ります。
ジャーマン・カモミール（学名：Matricaria chamomilla）の花のお茶は、不安を和らげ睡眠を助けるものとして、またあらゆる年齢層の消化を助けるものとして用いられてきた長い歴史があります。ヒトの実験もいくつかあり、睡眠、全般的不安障害、健全なコルチゾール（ストレスホルモン）分泌に効果があることを裏付けています。カモミールの特徴としても、概してイライラしたり、神経質になっているすべての人に合います。高齢者施設で高齢者がカモミール錠剤を 4 週間摂取したところ、偽薬を摂取した人よりも睡眠スコアが顕著に上ったのです。同様の臨床実験を年配者に対して行ったところ、4 週間にわたって 400mg の錠剤を昼食後と夕食後に摂った人は、摂らなかった人と比較してかなりよく眠れていることが分かっています。睡眠障害のある更年期の女性にも効果がありました。出産直後の女性で眠りの質が良くない女性がカモミール茶を飲むと、飲まなかった人と比べてよく眠り、鬱気分も減少しました。カモミールは子供でも十分に耐性があります。但し、キク科の花にアレルギー反応を起こす人は、カモミールに対してもアレルギー反応を起こす可能性があります。
パッションフラワー（学名：Passiflora incarnata）は、より多くの割合の人にとって少々強く、効果が大きいため、私が眠りにつくハーブの一つとしています。パッションフラワーの花と茎は他の睡眠を誘発するハーブと良く合い、ぐるぐると思考が巡るのを和らげ、神経の興奮、ストレス、不安、イライラを鎮めます。パッションフラワーの効果を調べた実験は数少ないものの、優れた結果が残されています。ある実験では、パッションフラワー茶を摂った場合、偽薬よりも睡眠の質が 1 週間以内に上がっています。参加者は乾燥ハーブ 2g を 1 カップの熱湯に 10 分間浸したパッションフラワー茶を飲みました。また、パッションフラワーは、大変素晴らしい睡眠実験におけるハーブの処方の原材料の１つでした。その実験では、パッションフラワー、バレリアン、ホップのブレンドが相まって機能して、ゾルビデム（アンビエンのジェネリック医薬品）と同等の効果がありました。パッションフラワーの味は悪くなく、採れたてあるいは乾燥させたばかりのお茶、精油、あるいは錠剤で摂ることができます。
バレリアン（学名：Valeriana officinalis）の根は最もよく研究されていて、寝るための最も一般的なハーブです。米国で販売されている薬効のあるハーブ上位 20 に常に入ります。古来より筋肉弛緩薬や鎮静薬として用いられてきました。バレリアンは生の根のチンキの状態が最も良いのですが、錠剤やお茶（嫌な匂いで特に美味しいわけでもない）として摂ることもできます。肉体的あるいは精神的に緊張する人、不安を抱いている人、身体が温まらずに冷たい人に最も効果があることが分かりました。熱しやすくて体格の良い人にとっては、バレリアンによってそれが強まると感じるかもしれません。科学的な調査の結果はまちまちですが、バレリアンは、深い眠りに入るのを早めるようで、別名「睡眠潜時（sleep onset latency）」として知られています。バレリアンはその他の睡眠ハーブと合わせて摂ることでより効果が高まり、あまり副作用がありません。
まだまだある上手に睡眠をとるための秘訣
電源を抜き、頭を緩める。電源を切り、電子機器やスクリーンから発せられるブルーライトを少なくとも寝る 1 時間前には避けるようにしましょう。夜は明かりを小さくします。アロマセラピーや心地のよい音楽、暗色の日除け、ホワイトノイズマシン、耳栓などで、安らげる寝室にします。日々の落ち着ける決め事を編み出してお茶やお風呂で、退屈な本でも読んですぐに眠りにつけるようにします。
睡眠時無呼吸に対処する。大いびきをかいたり、呼吸困難で目が覚めたりする人は、医師に睡眠検査について聞いてみましょう。マスクやマウスピースで睡眠時無呼吸に対処することで、睡眠の質を高めて日中の活力を改善するだけでなく、心疾患などのリスクも軽減されます。
夜間に食べたり飲んだりしないようにする。 夕食に重いもの、夜中にお菓子、夜に 1~2 杯お酒を飲むだけでも睡眠の質を大きく下げ、夜中に目が覚める原因になります。
刺激物に注意する。 一日のどの時間帯でも（特に午後や晩）、カフェインなどの刺激物を摂ると、寝つきが悪くなり、夜中に目覚め、良質な睡眠がとりづらくなります。強壮効果の高いハーブも睡眠を妨げる可能性があります。
睡眠を助けるその他のハーブ
バレリアン、パッションフラワー、およびカモミールは、昔から今まで常に、最も堂々たる一般的な研究し尽くされたハーブで、合衆国で睡眠の助けになっています。 しかし、他にもあります。あまり一般的ではないが、それでも有用な睡眠補助薬で、私たちの注目に値するものです。 これらは、前述のハーブと同じ手順と注意事項を使用して準備できます。
アシュワガンダ（学名: Withania somnifera）はアダプトゲンです。つまり、体内のストレスと闘いながら、エネルギーを蓄えます。 神経系をサポートし、不安を和らげ、気分を高め、睡眠を改善します。 睡眠を助けるために、牛乳または植物性ミルクでアシュワガンダの根を煮て、ハチミツ少しとナツメグで味を整えて、食後の飲み物とします。 晩に服用すると睡眠が乱される人もいますが、これはまれです。 また、より良いエネルギーとストレスのサポートのために、日中にアシュワガンダを摂取することを考えても良いでしょう。 アシュワガンダは、チンキ、錠剤、粉末、またはお茶として服用できます。 甲状腺機能亢進症にかかっている場合、またはトマトやジャガイモなどのナス科の植物に敏感な場合は注意してください。
カリフォルニアポピー（学名: Eschscholzia californica）は、どこの庭でも栽培されている、弱いが有用な睡眠ハーブです。 すべての部位を使用できます。 採れたての植物（特に根）の効力が最も高くなります。 カリフォルニアポピーで、特に痛みが睡眠を妨げる場合は、また不安定な睡眠覚醒サイクルを持つ人々は、穏やかな痛みのサポートと心を落ち着かせる特性を得られます。 採れたての植物のチンキとして最適なカリフォルニアポピーは、乾燥した状態でお茶にしたり、錠剤の形で摂取したりすることもできます。
ホップ（学名: Humulus lupulus）には鎮静作用と鎮痛作用があり、ドリームピロー [安らげるハーブを中に詰めた枕] に入れたり、睡眠ブレンドで他のハーブと組み合わせたりすることがよくあります。 ビールのような苦味は不快です。 採れたてのホップまたは乾燥したばかりのホップが最適です。
レモンバーム（学名: Melissa officinalis）は簡単に成長し、穏やかに落ち着かせ気分をよくさせる特性があり、他のハーブとよくブレンドでき、お茶、錠剤、チンキになります。 このハーブに人は十分耐性があり、あらゆる年齢層に人気があり、強力な鎮静剤ではありません。 採れたてまたは乾燥させたばかりの葉が最適です。
モクレン属（学名: Magnolia spp.）、特にコウボク（学名: M. officinalis）は、漢方薬で多くの用途があります。 睡眠の質を妨げるコルチゾールの過剰なレベルを減らすのに役立ちます。特に、ストレスが原因の不眠症で深夜に目が覚め、目が冴えて、再び眠りにつけない場合に役立ちます。 モクレン属は、過度な鎮静剤ではないため、昼間の使用にも有効です。 モクレン属のほとんどの品種も同様に使用できます。 商業的に見つけるのは難しいですが、マグノリアはいくつかの漢方薬メーカーから入手可能で、いくつかの睡眠処方で使用されています。 モクレンの木を見つけて、樹皮と小枝から独自の薬を作ることを考えてみてください。 あなたはその喜ばしいレモングラスとルートビアの香りと風味に気づくでしょう。 心を落ち着かせる成分は、水よりもアルコールや粉末でよく抽出されます。 高品質のウォッカまたは穀物アルコール 2 オンス (59ml) あたり、処理済みまたは採れたての樹皮および小枝 1 重量オンス (28g) のチンキ剤を作り、漉す前に少なくとも 1 か月間浸します。
霊芝（学名: Ganoderma lucidum）、マンネンタケ科のキノコは、漢方薬に利用され、多くのもののバランスを取ります。例えば、バランスが崩れているときにストレス、不安や浅い眠りとして表れる五臓の心を緩和します。霊芝カプセル、煎じ薬、または（アルコール抽出と水煮出しの）二重抽出チンキ剤を単独で、または睡眠のために他の伝統的なハーブと組み合わせて摂取することを考えてみてください。
タツナミソウ属（学名: Scutellaria lateriflora）は、古典的な鎮静剤であり、不安、ストレス、動揺を鎮めると共に、睡眠を促進します。 神経系の過剰刺激を抑制し、光、香り、音によって動揺する敏感な人々を安心させることができます。 鎮静や睡眠を誘発される人もいれば、日中は眠くならない人もいます。 採れたてまたは最近乾燥した植物材料が最も効果的です。 自分で栽培するか、Zack Woods Herb Farm などの米国の有機農場から直接購入して、品質の悪い植物材料（一部は肝臓に有害な可能性がある）の混入による質の低下を避けてください。
情報源
Mountain Rose Herbs (www.MountainRoseHerbs.com)
Gaia Herbs (www.GaiaHerbs.com)
Zack Woods Herb Farm (www.ZackWoodsHerbs.com)
Herb Pham (www.Herb-Pharm.com)
マリアのおやすみ茶
この素晴らしい味で強力な鎮静作用のあるお茶は、理想的で、就寝時のどんな習慣にもしっくりきます。
- パッションフラワー・・・小さじ 1/2
- タツナミソウ・・・小さじ 1/2
- レモンバーム・・・小さじ 1/2
- スペアミント・・・小さじ 1/2
- はちみつ・・・小さじ 1（お好みで）
4～6 オンス (118ml～177ml) の熱湯に 15 分浸し、ろ過し、お好みでハチミツを加えます。
マリアのおやすみブレンドチンキ
ハーブのこの組み合わせは、私が寝る時にお決まりのブレンドで、他のハーブを加えてお好みの味にしても良いです。
- パッションフラワーチンキ・・・2 の割合
- モクレン樹皮チンキ・・・1 の割合
- タツナミソウチンキ・・・1 の割合
ドロッパーボトルに混ぜ合わせます。就寝前に１～５ml（１から５滴、最大小さじ１）、また必要に応じて、摂ります。
マリア・ノエル・グロウヴス (Maria Noël Groves) は、ニューハンプシャーの松林に囲まれて暮らす登録済み臨床薬草学者で「Body into Balance」の著者。近著は「Grow Your Own Herbal Remedies（以下で入手可）」。他の記事やレシピについては、www.WintergreenBotanicals.com をご参照。
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