秋に菜園にカバークロップを播けば栄養豊かな土づくりができ、数か月後の春には野菜がすくすく育つようになる。
文: パム・ドーリング (Pam Dawling)
翻訳: 浅野 綾子
カバークロップは菜園の土や、カバークロップを播いた場所に後で植える植物に多くの恩恵をもたらします(55 ページの「カバークロップの 5 つのメリット」をご参照)。こうした恩恵を手に入れるには、雑草を抑えて有機物や「バイオマス」を大量に増やす、成長力の強いカバークロップ群を育てる必要があります。夏の終わりや秋はカバークロップを播くには一番楽な時期。というのも、カバークロップが菜園で雑草以外の作物と競合する必要がないからです。この季節遅くにまくカバークロップは、霜に弱くないものであれば長期間(冬を通して)成長できます。
以下にご紹介するのは、おすすめの冬のカバークロップ。バージニア州中央にあるツイン・オークス・コミュニティ (Twin Oaks Community) で、私たちが数十年にわたりガーデニングをしてきた経験にもとづくものです。ツイン・オークスでは、屋外とビニールハウスで集約的に野菜を栽培し、1 年を通して 100 人の人たちに食材を提供しています。
カバークロップがもたらす肥沃で生産力のある土は、地域住民に日常的に食材を提供するのに役立ってくれます。
カバークロップえらびと栽培のタイミング
タイミングはとても重要です。というのも昔ながらの栽培シーズンの遅い時期にカバークロップをまくことになるからです。以下のカバークロップを選ぶには、住まいの地域の初霜日から逆算して種まき時期を計算してください。体系的に理解してもらえるように、ツイン・オークス(耐寒気候区分のゾーン 7:平均的初霜 10 月 15 日[ゾーン 7 の最低気温は -17.8℃ ~ -12.2℃])に当てはめた日にちを記載しておきました。「霜枯れ」に記載されているのは、霜で枯れてしまうカバークロップです。「冬枯れ」に記載されているのは、真冬の寒さで枯れてしまうカバークロップです。「耐寒性」に記載されているのは、越冬するカバークロップです。
初霜前 60 ~ 80日(ツイン・オークスの場合:7月26日~8月17日)。 霜枯れ:ソバ、サンヘンプ、大豆、ササゲ、エンドウ豆、フジマメ、ヒエ、ソルガムとスーダングラスの交配種。冬枯れ:オーストリアの冬エンドウ(ゾーン 6 かそれより数の小さいゾーン)、オーツ麦。耐寒性:クリムゾンクローバー、レッドクローバー。注意:オーツ麦を早く播きすぎないこと。早く播きすぎると秋に結実するおそれがあります。
初霜前 40 ~ 60 日(ツイン・オークスの場合:8月17日~9月6日)。霜枯れ:大豆、エンドウ豆。冬枯れ:オーストリアの冬エンドウ(ゾーン6かそれより数の小さいゾーン)、大麦、オーツ麦。耐寒性:冬小麦、冬ライ麦、オーストリアの冬エンドウ(ゾーン 7 かそれより数の大きいゾーン)、レッドクローバー、クリムゾンクローバー、ヘアリー ベッチ、ソラマメ。注意:ゾーン 7(またはそれより数の大きいゾーン)の地域では、ライ麦を 8 月に播かないこと。播くと結実するおそれがあります。
初霜前 0 ~ 40 日(ツイン・オークスの場合:9月6日~10月15日)。耐寒性:冬ライ麦か冬小麦か冬大麦をクリムゾンクローバーと混植、レッドクローバー、オーストリアの冬エンドウ(ゾーン 7 かそれよりも大きい数)。注意:霜に弱いカバークロップをまくには遅すぎる時期です。
初霜から 0 ~ 24 日後(ツイン・オークスの場合:10月15日~11月8日)。耐寒性:冬ライ麦か冬小麦をオーストリアの冬エンドウと混植。注意:霜に弱いカバークロップをまくには遅すぎる時期です。
次に冬のカバークロップのいくつかの種類について、メリット・デメリットを説明します。
草類
穀類の草はすべて、土壌浸食を防ぎ、雑草をおさえ、有機物を増やして、余分な栄養分を取り除きます。土壌構造を改善し、有益な微生物を活発にしてくれます。
冬小麦(学名:Triticum aestivum)は冬越しする作物で、ライ麦より安価、春の管理も楽です。というのも結実するのが遅く、かさも少ないからです。大麦やライ麦と比べて作物を植える前に枯らすのも楽で、雑草化もしにくいです。冬小麦は、大麦やオーツ麦よりも重粘土に耐えますが、水害に弱いです。ライ麦やオーツ麦と比べて、虫や病気に若干やられやすい傾向があります。
冬ライ麦(学名:Secale cereale)は「シリアル・ライ」とも呼ばれます。こちらも越冬し、150 から 210 センチメートルまでの背丈に成長して、大量のバイオマスができます。春、ライ麦を土にすき込んでから作物を植えるまで 3 ~ 4 週間ほど待つ必要があります。というのもライ麦には種の発芽を阻害する生化学化合物(「アレロパシー」ともいう)があり、この働きがなくなるまでにそれだけの時間がかかるからです。
冬枯れするカバークロップは雑草を抑えてバイオマスを増やします。これが土を覆うマルチとなって、早春まで土をその場に固定します。春、枯れた残渣は緑肥よりも土にすき込みやすく、または植えつけの際にレーキで端に寄せるのも簡単です。
オーツ麦(学名:Avena sativa)は冬に枯れやすいです。苗はマイナス 8.3 ℃で枯れます。生長した株はマイナス 6.6 ℃より低い温度になるとかなりの害を受けます。水害にはある程度の耐性があります(小麦よりも耐性がある)が、暑さや干ばつにはあまり耐性がありません(ライ麦ほどではない)。オーツ麦はライ麦や小麦よりも土にすき込みやすいです。しまった心土をやわらかくする効果はライ麦ほどありませんが、アレロパシーの影響はライ麦よりも少ないです。オーツ麦は、次の年の早春に栽培計画がある場所に理想的です。
オーツ麦は、初霜より少なくとも 40 日早く播いた方がよいでしょう。そうすれば寒さで枯れる前にバイオマスになる大きさになります。ゾーン 7 の地域にあたる私たちの菜園では、8 月にはカバークロップ用オーツ麦に空いた区画が必要です。私たちの菜園では、早生のスイートコーン、春ブロッコリーやキャベツ、春植えのじゃがいもを収穫した後にオーツ麦を播きます。次の年にはエンドウ豆やキャベツ、プロッコリー、ニンジン、じゃがいも、ほうれん草の植えつけや、何度かまくスイートコーンの最初の種まき前に、オーツ麦を土にすき込みます。
その他に試せる霜に弱い穀類や草として、ソルガムとスーダングラスの交配種(学名:Sorghum bicolor x S. bicolor var.sudanese)、ソバ(学名:Fagopyrum esculentum)、大麦(学名:Hordeum vulgare)、ヒエ(学名:Echinochloa esculenta)があります。
カバークロップの 5 つのメリット
1️⃣ 地力:土壌生物がカバークロップの残渣を作物の根が吸収する栄養分に分解し、土壌の腐食物を増やす。
2️⃣ 土質:菌根菌が植物の根と共生して発達し、微小な粘土と有機物の粒子を団粒に粘着する物質を生産する。この作用によって、土に酸素や水が通る穴が多くできるようになる。
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