裏庭菜園家の生協産直所

Yard to Market Co-opが、小規模栽培者でも産物をシェアできる仕組みを作った。手で持てるだけのハーブの束から数十個の卵まで。

 

Yard to Market Co-op は裏庭菜園家が、ファーマーズマーケット、地元の日用品店、レストランに余った卵や少量の作物を持ち込めるようにしている。菜園家と消費者が結ばれ、お客さんは、買おうとする作物について一対一で話せる。Photo by Scott David Gordon.

 

文:クリスティー・キレン (Kristi Quillen)

翻訳:洲澤 朱美

 

 2013年、テキサス州オースティンのガーデニングコミュニティを通じてお互いに知り合った少数の人々が、ファーマーズマーケットで余剰農産物をどのように売るのかというジレンマで意気投合しました。市場農場規模で提供したくない個人としては、参入障壁が大きすぎるように見えました。彼らは、共有された農場の直売所、CSAプログラム、または何かを生み出すという考えを持っていました。

 共同設立者アニリーズ・ロットマン (Annelies Lottmann) とレズリー・ウイリアムソン (Lesley Williamson) を含むこのグループは、2013年の打ち合わせの大半を費やし、最も効果的な仕組みを考え出しました。共同所有に関心があったため、最終的に生活協同組合を組織することを決めました。 2014年の初頭、会員はホープ・ファーマーズマーケット (HOPE Farmers Market) で農産物を販売し始めました。そこでは、すでに菜園家が少量の農産物を持ち寄り販売できるようになっていました。その年の後半、彼らはホープ・ファーマーズマーケットの直売所を運営するのに十分な会員がいました。その後2015年にヤード・トゥ・マーケット・コープ (Yard to Market Co-op) と命名され、米農務省の付加価値生産者補助金 (Value-Added Producer Grant) を受け、サウス・オースティンのサンセット・バレー・ファーマーズマーケット (Sunset Valley Farmers Market) で2番目の農産物直売所を開設し、その労働者に給与を出しています。このグループは、2014年以来毎年収入を2倍にし、地域に約50人のメンバーを持ち、持ち寄られた果物、野菜、ナッツ、卵の90%を販売しています。

 週末2回の市場で、会員は売りたい商品を持ち寄りできます。ハーブの束や半ダースの卵でも可能です。参加するには、会員用申し込み用紙に記入し、合成化学品を使用しないなど、特定の規約に同意します。会員は参加するために75ドルを支払うので、資本が増え、誰もが平等な立場に立つことができます。誰かが協同組合を離れる時は、65ドル払い戻されます。市場に出す前に、会員はグループの手順書に従い製品の重量を計測し、束にします。市場のある午前中に、販売する商品を書き記す用紙に記入。市場の終了時、財務責任書のレズリーは、これらの用紙を販売記録と比較し、販売されたものを確認し、四半期ごとに各会員に支払います。

 市場で売らないものは、オースティン地区の食料雑貨店、、ウイッツビル・コープ (Wheatsvill Co-op)、それからレストランのブラックスター・コープ(BlackStar Co-op)にも持ち込まれます。作物は、買い手が個々に商品を求められる近隣のリストサーブス(Listservs)にも広告が掲載されています。卵や特色ある果物がひっぱりだこです。 50名全員を代表する5人の役員が毎月集まり、スケジュールの変更や季節のニュースを全員に知らせるためのニュースレターを送り、すべての会員が年1度の会議で一同に会してグループの問題に対して投票します。ヤード・トゥ・マーケット (Yard to Market) は、窓敷居で育てる菜園家 (windowsill gardeners) から小規模農家まで、自家製の農産物を販売するための入り口となっています。

 

少しの利益、多くのコミュニティ

 ニーチャ・ウテンポン (Nitya Uthenpong) は、2002年に原生植物や在来種で庭を変え始めました。一度に彼女は17の上げ床で育て、何年か経て、販路があれば余分な農産物を分け合うことができることに気づきました。彼女は農産物を市場に持ち込むことを考えましたが、すべての市場というわけではありませんでした。毎週土曜日をあきらめたくありませんでした。それで彼女の娘の学校を通じてヤード・トゥ・マーケット・コープを知り、参加しました。

 「今では、誰かが市場にいると分かっています。私はただ余剰作物を置いてくるだけ。」と彼女は言います。最近の市場には、その朝に摘み取った食べられる花とハーブを何束かをまとめてタイ料理用にしています。

 役員会で3年間働いていたヘイリー・ブランドリー (Haley Bradley) は、コープのモデルが彼女にとって魅力的だと言いました。なぜなら、それは最も公平な分担に思えたからです。最初の1年は、多くの収入はありませんでしたが、水道料金を支払うことができ、翌年は水道システムを改良しました。彼女が生産したものを売ることで、必要経費を相殺するのに役立ち、家計の範囲内で菜園を追求しやすくなり、より多くのニワトリを育てるための投資など、庭でより多くのプロジェクトをすることができます。

 ジェン・マック (Jen Mack) は友人を通じで9ヶ月後に会員になり、現在は役員会と直売所のコーディネーターとして働いています。彼女は両市場で農産物直売所を経営し、ボランティアを組織しています。組織は人々に、彼らが持っているときに持っているものを提供し、小さな方法で貢献できることを示していると言います。彼らは参加するために莫大な余剰作物をつくり出す必要はありません。「あなたが近隣の人に受け取ってもらおうとした農産物でさえも価値があります」とジェンは言います。

 ニーチャが参加したのは、ある意味では、育てる物で何かしらを稼ぐ裏庭菜園家の真髄をサポートするためです。「私たちは最高のお金を獲得する」と彼女は言います。彼女はまた、オースティンのコミュニティで強力なコープモデルを高く評価し、それをサポートしたいと考えていました。 「コープの全体的な考え方は、私たちの負担で大金を稼ぐのではないということです。」

 一ヶ月に一度、ヤード・トゥ・マーケット会員の庭で会って交流し、誰かが発表会をよく行います。 「何よりもコミュニティに参加しました。」とニーチャは言います。彼女の庭は自然と触れ合える、癒しの場所になっていて、分かち合いたいと思っています。また、オーガニック志向の店の野菜でさえ数日前に採られたものだという世の中にあって、新鮮な採れたて作物の有り難さも伴っています。「庭に出て、何かを選んで、それを持ってきて、すぐに調理する — その感覚に勝るものは他にありません」

 ジェンはオースティンの農業や園芸コミュニティでしばらく関わっていましたが、その大きなコミュニティ交換会にも、彼女は参加する意欲を持っていました。「庭から何かを引き出し、それを消費する人に売ることは本当に何か特別なことです」とジェンは言います。

 

菜園と菜園家の育成

 メンバーの考え方は、アニリーズが長年にわたって発見したと言っていることを踏襲しています。都市菜園家は必ずしも利益を求めているわけではなく、コミュニティを探しています。最初、役員会は菜園家に手を差し伸べる際にお金を生む可能性を強調しましたが、昨年、彼らは協会の所有権やメンバーシップで培った他の特典にもっと集中しました。裏庭菜園への情熱を分かち合い、知識を交換し、お互いを支え合い、必要経費を相殺するという特典です。参加した結果、メンバーはもっと作物を植えようとしたり、品種を変更したりと、菜園にもっと時間を費やしています。

 市場では、裏庭菜園家は互いに学び、一般的な苦情や質問、特に地域的なガーデニングの問題について共有できます。「それは農場直売所で最高のものの一つです。メンバーは菜園で何が起こっているのかについて話すでしょう」とアニリーズは言います。他の人が同じ問題を抱えているのを知るまでは、特定の作物を育てることが得意ではないのです。

 「私は農産物直売所で働くことが大好きです」とヘイリーは言います。「私はテキサス州で園芸について多くのことを学びました。私は菜園家として成長しました。」今年、ヘイリーは100本のイチゴの株を植え、初めてジャガイモを栽培しています。過去に彼女は何でも食べたいものを少し植えましたが、現在は数少ない作物を大量に育て、他の農産物は仲間に頼っています。

 グループの一員であることで、ジェンはガーデニングのやり方も変りました。彼女は他のメンバーでも同じだと見ています。彼らは自身のスキル、時間、財務を強みと利益にできます。「私ができない生産物を誰かに育ててもらうことができます。私はキャシーのニンジンに頼っていると自覚してますよ 」とジェンは言う。

 ヘイリーは自分が楽しむプロジェクトにもっと多くの時間とエネルギーを費やすことができ、新しい挑戦をしています。彼女は、テキサス州議会が2013年にビン詰めのジャムやゼリー、グラノーラ、脱水果物などの自家製製品の販売を許可するコテージフード [販売用の自家製食品] の法令を可決した後可能になった、コテージフードプログラムを仲間と開発しています。彼女はまた、家族が食べられない卵を売る場所があるので、鶏の群れを4から18に増やしました。「私はそれを楽しんで、鶏はもっと 楽しい生活を送っています。」と彼女は言います。サポート、市場、そして鶏に投資する利益がなければ、彼女はあきらめていたかもしれません。

 アニリーズにとっては、仲間の協同組合のメンバーが鶏の群れを広げ、たくさんの卵を売ることに成功しているのを見て、インスピレーションを得ています。コープとは、労働の成果がどこかにあるのです。1つの驚くべき傾向は、彼らが一年中果実を売っているということです。裏庭での農業はテキサス州の気候では難しいかもしれませんが、人々は果物の樹を楽しんでいます。アニリーズは次のように述べています。「あなたの樹がうまくいけば、果物ががとんでもなくたくさん成るのです。」余剰作物のための既存市場、共有資源、支援があれば、新しい作物を育てることは投資してリスクをとる価値があります。

 最近、グループは、メンバーが安く買うためにイチゴの苗を大量に購入しました。苗5鉢の代わりに、ヘイリーがしたように、100鉢を購入。「それで、私たちのガーデンの大きさと構成が変わってきます」とアニリーズは言います。「イチゴの場合、私はいつも躊躇していますが、私が150鉢植えるなら、いくつか失っても納得します。」

 毎月、役員会は近くのガブリエルバレー農場(GabrielVally Farm)からの完全な苗木を注文。彼らは成功が見込まれる地域や季節に適した作物をターゲットにして販売します。「週末に45kgのニンジンを販売することができます」とアニリーズは言います。「人々がニンジンを栽培するとき、彼らはそれを食べるので、私たちはいつもより多くを必要とします」。彼らは市場性のある品種の種や苗を注文し、植え付けを促すことができます。会員は良い取引をして、苗がきっかけで「あなたも菜園家を助けようとして、ここにいるの?」と尋ねる通行人とファーマーズマーケットでの会話が始まります。

 菜園家の知識交換をさらに支援するため、果樹を剪定し維持するクラスを組織し、毎月の庭鑑賞ツアーを通じて会員と地域社会を結びつけます。会員は、多くの菜園専門家や専門の菜園家になりつつある人のコープ内での、豊富な知識を共有する機会に特に関心を持っています。

 コミュニティのサポートは、裏庭菜園家に、今後も継続するためのもう少しの原動力を与えます。過去に、厳しい凍結や病気で自作作物を失ったとしたら、始めていなかっただろうと、ヘイリーは言います。しかし今、彼女はグループ内で解決策を見つけることができ、また再試行する動機があります。

 

コープモデルの改良

 アニリーズによると、進行中の挑戦は、メンバーと関わり、関与し続けるとともに、参入する準備をしている人々に基盤を構築し助けるという、コープの使命を果たすことです。

 「理想的な世界では、最小限の関わりが低いメンバーでさえ、私たちが互いに所有するものとしてのコープについて感じ、語るでしょう」とアニリーズは言う。この目的のために、役員会は、より強固な運用方法を構築し、農産物直売所でより多くの訓練の実施に取り組んでいます。彼らは会員制と財産管理の必要を含めることを考えています。つまり、誰もが直売所で何時間も働けることに同意します。彼らは会員と協力して地域社会の関与から利益を得、哲学を分かち合うために、そのような協力とコミュニティの意識を構築したいと考えています。

 ヤード・トゥ・マーケットは、自力での始まりから、アイデアが煩雑な状態で成長するにつれ、徐々に独自のモデルになりました。シーズンが終わってから良いアイデアが出て来ます。すぐに行うことはできませんとアニリーズは言います。それは庭のようで、別の季節がやってきます。グループは来年、これらの良いアイデアを実現し、少しずつ拡大し続けることができます。メンバーは誰もフルタイムの仕事として市場に参加していないので、試行錯誤を繰り返していく意欲のある核になるグループに頼ってきました。「これで完璧であるとは言えません。」とアニリーズは言います。「熱心に勉強して、学ぶことにオープンでいい。」

 

地域の食料システムの場所

 結局、主催者はコープがより広い食料システムにおいて重要な役割を果たすことができることが解り始めました。ヤード・トゥ・マーケットは誰に対しても、入り口を創りだします。趣味の家庭菜園家でも、レストランに出入りしたり、食料品店に売ったりするのに十分なほど大きくはない、小規模な農家でさえも。

 この実現によって、彼らは始めたばかりの小さな農家をもっと結びつけたいと考えています。小規模な栽培者は、すでに構築されたインフラと効率的なシステムを活用して、販売しているものが市場に上手く乗せられるかどうかを記録と販売データで正確に判断出来ます。その共同作業は、ヤード・トゥ・マーケットが顧客にもっと多くを提供する助けになり得るのです。現在、グループは野菜、果物、ナッツ、ハーブ、卵を販売しています。より大きな運営を含めることで、肉や乳製品を提供し、小規模農家がビジネスを続けるのにも役立ちます。

 ヤード・トゥ・マーケットは、市内で手頃な価格の食料が手に入ることを目指すべく作業も続け、メンバーが育てた食べ物を誰もが食べられるようにしたいと考えています。

  「これは私たちの気持ちのすべてに近いものです」とアニリーズは言います。 「自分たちの食料を栽培する理由の一つは、有機農産物が高価だということです。」彼らは、市内で手頃な価格で自家製の農産物を提供したいと考えていますが、会員には高いリターンを与えています。アニリーズが言うことは全国の農家が求めるバランスでもあります。

 彼らは、農業や園芸の訓練プログラムを提供するサステイナブル・フード・センター (Sustainable Food Center) や、オースティン市やサスティナブル・フード・センターとともに、最近になって(市のコミュニティに手頃な価格の有機農産物をもたらすために)車での販売を開始したファームシェア・オースティン (Farmshare Austin) など、オースティンの他の組織に加わり始めています。

 グループはそのシステムに農産物をいくらか販売し始めましたが、街の食料入手の一般的な動機に対して、独自の販路(複数の小規模生産者から食品を販売するための高度に組織化されたシステム)を提供することもできます。

 ヤード・トゥ・マーケット、その本質は、個々の人々へ菜園をする権利を与え、食品の入手の問題に対処することとジェンは言います。「食料安全保障上の問題の解決策の1つは、人が小規模であろうとも自分たちの食料を栽培し始め、育つものや売れるものに焦点を当て、隣人から余剰分を得ることです。」ヤード・トゥ・マーケットはその交換を可能にする正式なチャンネルを生み出したのです。「他のコミュニティも同じモデルを提供できるはずです。」とジェンは言います。

 このグループは彼らの作成した資料をオープンソースにしているので、他のコミュニティの裏庭菜園家はヤード・トゥ・マーケットのモデルを適用することができます。数人の菜園家の卵が一緒に集まって農産物を売っているので、コープは園芸家を実践手法の面でサポートし、地元経済にお金を入れ、ハーブを数束であろうとも、誰でも交換に参加できるようにしています。

 

クリスティー・キレン (Kristi Quillen) はマザーアースニューズの編集者。ヤード・トゥ・マーケットについて詳しく知り、書類、テンプレート、あなたの地域でコープを始めるための情報をダウンロードするには www.YardToMarket.Coop をご参照。

 

 

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Co-op Farmstands for Backyard Gardeners

By Kristi Quillen |  August/September 2017