菜園の通説5つ

広く知られている通説を避けたり修正することを学んで、あなたの菜園が持つ可能性を、十分に引き出そう。

Photo by Getty Images/Amenic181

 

私が今まで取り組んできたどんな趣味にも、共通することが1つありました。いわゆるエキスパートと呼ばれる人たちによる情報は一部分しか正しくないということです。菜園も同じでした。

 こういった菜園の通説は古くからあり、世代から世代に伝えられています。先輩のアドバイスを信じ、今度はその情報を、新しく入って来た後輩に伝えるのです。モニターとキーボードを使って、誰でも菜園のエキスパートであると名乗れるインターネットは、一連の通説をさらに悪化させました。

 ソーシャルメディアには、菜園の通説であふれています。この記事では5つの通説を取り上げ、なぜ正しくないかを説明します。その過程で、植物とその環境についての新しい情報も紹介します。基礎知識で身を固めることで、菜園をより良く理解できるようになるでしょう。

 

通説1: 毎日水やりをする

 新しく植えた植物の根は大概、特に株分けや移植の場合、植えつけの際に傷つきます。新しく植えた植物に対する一般的なアドバイスのほとんどは、十分に水をやるということです。多くの人はこれを毎日水やりをすることだと考えますが、違います。そんなことをしたら植物は枯れます。

 根を失うということは、葉先を緑に保つために十分な水を取り込めないということです。そのため葉がしおれます。大切なのは、土の中の適度な水分含有量です。土壌を湿らせておけば、しおれた部分は少なくなり、新しい根が生えるようになるでしょう。

 水が土に加えられると、水は外へ向かいながら半円を描くように染み込んでいきます。水が移動すると、土壌中の小さな隙間は全て満たされ、水は有機物に吸い上げられます。土壌は水が根に吸い上げられたり、蒸発するまでの間、湿ったままでしょう。

 理想的な土壌は25%の水と25%の空気を含んでいます。多すぎる水は空気を外に押し出してしまいます。そうすると根が枯れてしまいます。これが、頻繁に水をやることで起きることです。そのことに気づいた時には、すでに植物は枯れているのです。

 毎日水やりをしなさいというアドバイスは、まず正しくありません。暑い天候であってもです。水やりで一番効果があるのは、植物を植える際、あふれるほどの水を土壌にかけることです。その後土が十分乾くまで、水やりはしないでください。

土が乾いたかどうか、どうすれば分かるでしょうか。一番信頼できる感覚を使うのです。触覚です。第二関節まで指を土の中に入れます。土が湿っているなら、まだ水をあげてはいけません。乾き始めたら水をあげます。

 定期的に水をあげるのも避けてください。水やりの頻度は、年間を通して変えるべきで、また、植物、土壌のタイプ、気温、湿気、使っているマルチの種類によっても変えるべきです。

 

通説2: ピートモスは土壌を酸性にする

 土壌にはいくつかの種類がありますが、どれも地域や環境によって変わります。あなたの土は、かなりの砂や粘土で占められているかもしれません。そして岩が風化してできたミネラルも含まれているかもしれません。用意できる土の種類を考えることは大切です。その土によって、どの植物を育てるのがベストかが決まるのですから。

 多くの野菜はやや酸性の土壌を好みます。シャクナゲ、ツツジ、ブルーベリーなど、酸性が望ましいものもあり、これらが健康に育つためにはより酸性の土壌が必要です。ピートモスは酸性なので多くの人がピートモスを加えると、酸性の土壌になると信じています。その結果、アルカリ性土壌の菜園家へ向けられる、よくあるアドバイスに、ピートモスを加えなさい、というのがあります。これは理にかなっているように見えますが実際に効果があるのでしょうか。もしそうなら、pHが変化した後、それはどのくらい続くのでしょうか。

 この具体的な質問に応えるために、私のブログ、www.GardenMyths.com において実験を行いました。この国の土とカナダ産のピートモスを混ぜ合わせたもの数種類を用意し、「ピートモスの酸性度」の折れ線グラフにあるように、数週間に渡ってpHの変化を測りました。

 pHの中性の値が7.0なのに対して、pH5.5のピートモスは、明らかに酸性です。土とピートモスを混ぜ合わせた5つの土のpHの幅は、その土に入れたピートモスの量によって違いが出ました。しかしピートモスによる酸性化の影響は、非常に早く失われました。たった1日で土壌サンプルは全て、pHがアルカリになりました。土を含む全サンプルのpHは、1週間後もそのまま変化はありませんでした。

 これは1回の、1種類の土によるテストであることは頭に置いておいてください。今回実験した土がアルカリ性なのは、この国の土には石灰石が一般に存在するからです。その土を酸性にしようとしても、すぐに中和されます。このタイプの園芸用の土では、ピートモスは土を酸性化しません。同じことが、ほとんどのアルカリ性の土にも予測できます。中和をもたらすものが多く含まれていない砂土であれば、ピートモスによる酸性化の効果があるかもしれません。

 

通説3: マルチにはコンポストが一番

 マルチをするために、お勧めのものは多くありますが、自分の菜園にとって一番良いものを選ぶのは難しいかもしれません。マルチは土壌の湿度、雑草など、よくある問題を解決するために、畝の上に被せて使います。コンポストと木質チップの2つは、菜園家が好むものとして広く知られています。

 ではコンポストか木製チップか、どちらがより良いでしょう。ブライアン・C・シャーレンブロック (Bryant C. Scharenbroch) とゲーリー・W・ワトソン (Gary W. Watson) の調査研究は、両者と肥料を比較しました。都会の硬くなった土壌(新しい住宅開発地で見られるような)で成長する木々を観察しました。「土壌成分」の表と「木全体と根の重さ」のグラフが、2人が発見したものを表しています。

 マルチとして使用されたコンポストと木製チップの両方とも、硬さ(土壌密度)を減らし、有機物を増やし、土壌に栄養成分を増やしました。

 コンポストの方が有機物を増やしましたが、カリウムとリンの濃度も劇的に増えました。コンポストを入れすぎると、この2つの成分を有害なレベルにまで増やし、有機物の効能の邪魔をすることになるかもしれません。

 コンポストと木製チップは、pH濃度も上げました。コンポストは土壌を酸性にするという、一般に信じられていることと矛盾する結果となったのです。

 これらの個別の処置で、木はどのように成長したでしょうか。肥料もコンポストも、水やりのみに比べ、木の成長を良くしました。でも木製チップが一番良く成長させました。

 

通説4: 木製チップは窒素を減らす

 畝に木製チップのマルチを使うことは一般的ですが、一方で、土壌中の窒素が奪われると信じ、木製チップの使用を躊躇する人も多くいます。有機物を分解するために、土壌中の微生物は窒素と炭素のバランスを必要としています。そのため多くの人は、木材にはほとんど窒素がないため、木質チップを分解するために微生物は、土壌中の窒素を取らないといけない、と思っているのです。

 微生物が土壌から窒素を取っているというのは、正しいです。しかし微生物は顕微鏡で見えるくらい小さいです。微生物は木に接している土1センチ中のごくわずかの量の窒素だけを取り込みます。それよりも重要なのは、その程度のことでは、根が成長している箇所で、窒素の減少は起きないということです。この研究結果は「土壌成分」の表にあるように、コンポストも木質チップも、窒素の減少ではなく、増加となりました。

 

通説5: トマトの脇芽は常に取る

 トマトの脇芽は副枝で、葉が主枝に接続している部分にでき、それをそのままにしていると2次的な枝になり、果実を付けます。

 脇芽は取り去る必要はありません。脇芽を全て残しておくと、トマトはよく成長し、よく実をつけるでしょう。でも、脇芽を取ってしまいたくなる、いくつかの理由があります。

 トマトを育てるには、基本的な3つの方法があります。1つ目は、ただ植え、後は自然にまかせます。この方法では、トマトは副枝を出し、地面を這うように伸びていくでしょう。2つ目は、植えた後は自然に任せますが、ワイヤーケージの中で育てます。果実を地面に付けることなく成長し、より簡単に収穫できます。3つ目は脇芽を取り、主枝を支柱に固定します。「トマトの生産」の表にある様に、どの方法にもいくつか利点があります。

 脇芽を取ると、全体の生産量は減り、果実の総重量も減るでしょう。脇芽を取るトマトは、詰めて植えられるので、1平米当たりに植える数は増えます。広さ当たりの生産量は、脇芽を取っても取らなくても、だいたい同じです。

 脇芽を取ったトマトは、残された数少ないトマトの成長に、より多くのエネルギーを集中し、その結果、大きな実をつけます。もう一つの利点は果実がより早く熟すことです。これは寒い地方での菜園には、大きな利点になり得ます。

 葉が混み合うため、脇芽を取らない方が病気になる可能性は高いです。葉が混み合うと風通しが悪くなり、病気も広がり易くなります。脇芽を取ることは、葉を地面につかせないことにもなり、トマトの実は、ナメクジなどの害虫に気づかれにくくなります。

 脇芽を取らないトマトは、尻腐れや裂果になりにくいですが、これに関しては、脇芽を取った1本仕立てのトマトであっても、水やりを適切に行えば、普通は防げます。

 3つのトマトの育て方を書いてきましたが、3つを組み合わせてより良いトマトを作ることもできます。ワイヤーケージで育てようと、1本仕立てにしようと、最初の2つ、3つの脇芽は取らずに副枝にして、それ以降の脇芽は全て取っていくというのも可能です。栽培期間が長い地域では、苗をたくさん増やすため、早いうちに出た脇芽を取り、それを発根させて植えることもできます。

 

ロバート・パブリス (Robert Pavlis) は、植物マニアで30年以上に渡り、カナダのオンタリオ州南部で植物を育てている園芸の名人です。彼の生物化学の知識は、多様な園芸に関する事実を調べ上げるのに役立っていて、その結果は、彼のウェブサイト、www.GardenMyths.com で公開されています。

 

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