この水産養殖、ストローベイルガーデニング、フーゲルカルチャー(hugelkultur)、ラザニアガーデニング (lasagna gardening)、バイオダイナミックガーデニング、さらに水耕栽培の長所と短所の分析で、裏庭スペースを再考することができる。
文:シェリー・ストーンブルック
翻訳:田村 香
新手のガーデニング手法は、ガーデニング界で、目立つ段階に来ている。おそらく、新しい本や古い方法の再燃で、人気を集めているのだが、常に「ホットな」テクニックや製品や、菜園への考え方がある。しかし、何がインチキで、何が本当に機能するのだろう?どのガーデニング手法が役に立つのだろう?さらにその手法は、裏庭ガーデナーに対して、本格的な農的生活者もしくは市場向け菜園経営者にとっては、意味がある手法なのだろうか?あなたが最近耳にしたであろう、6つの庭造りスタイルの、利点と不安の種を掘り出そう。
ラザニアガーデニングについて
この手法は、ラザニアの層にする概念を(チーズとマリナラソースの代わりに)巧みにガーデニングに置き換えた。私たちは、植物のくずと堆肥化できるすべてのものについて話して行く。このアイデアは、多様な有機材料の厚い層を作り、マルチの役割を果たしながら、時間の経過とともに豊かな腐植土に分解する。層には、わら、堆肥(残飯を含む)、肥料、落ち葉、植物のくず、木片、樹皮ゴミ、コイヤ【ココヤシ皮の繊維】、新聞紙、段ボール、刈り草を含んでもよい。 理想は、窒素が豊富な(「グリーン」)と炭素が豊富な(「ブラウン」)の両方の素材を適切な混合状態にする。
長所:ラザニアガーデニングは、今芝生にしてある庭に新しい植え床を作るのに、特に素晴らしい不耕起の方法。芝生を枯らしたい場所で材料を層状にして、肥沃度を高めることができる。この方法は、家庭や庭の周りにある「廃棄物」を有効活用し、雑草を抑制し、結果として庭での時間を節約するのに役立つ。これは、中小規模の畑で実用的、ローテク、そして効果的な方法で、さらに豊富な活性土壌も作る。
短所:大きな庭では、その方法を可能にするのに十分な有機物を見つけるために多くの時間を費やす必要があり、さらに庭に運搬して広げるためにより多くの時間を費やす必要がある。層にする一環として、植物のくずを使用すると、ある種の害虫や病気の宿主が混入したり、提供したりするリスクがある。材料が十分に分解されていない場合、苗の根との良好な土壌の接触がないため、植え付けに良好な培地ではない可能性がある。
フーゲルカルチャー
ドイツや東ヨーロッパの他の国で何世紀にもわたって使用されている、hugelkultur(直訳すると「小山の培地」)は、木の枝の切り落とした部分のような木質のがれきで満たされた大きな植栽山を作ることだ。ラザニアガーデニング同様、この技術の中心的コンセプトは、豊富な有機物の分解だ。しかし、ラザニアガーデニングは、比較的早く分解する多様な資材の追加が求められる一方で、この手法は、長期戦だ ― ゆっくりとした木材の分解に頼りながら、時間をかけて土壌内の食物連鎖を増やす。
フーゲルカルチャーマウンド(hugelkultur mound)を作るには、植え床にしたいと思うおおよその形に、太い枝か丸太の層を据える(15ページの写真参照)。一般的なマウンドの寸法は、およそ1m×2m。次に、中くらいの枝を積み重ね、更に小さな小枝や棒にが続く。そして、あらゆる隙間に有機物(例えば堆肥、葉や刈草)を詰め込む。マウンド全体に約5cmの土を被せる。 最後に、マウンドにすぐに植えるか、もしくは最良の結果を得るため、少なくとも数ヶ月間 “休ませて” から植える。
長所:木は、土に驚くべきことをする。分解するにつれて、炭素を加え、植物の根と一緒に、作物が必要な栄養素を吸収するのを助ける菌根菌と呼ばれる有益な生物のネットワークを増やす。マウンドは水持ちがよくて、水はけがいい。さらに、マウンド内部の分解熱さえもたらし、栽培シーズンを延長することができる。この方法は、あなたの所有地に木のごみがたくさんある場合、それを利用するのに優れた方法だ。マウンドを造った後は、(特に上げ床のように持ち上げられているために)植え付けが比較的簡単だ。
短所:複数のマウンドがある大きな菜園をしている場合、この手法では、相当量の木くずを手に入れることになるだろう。あなたが所有地に植林場や、簡単に利用できる剪定した枝や小さな丸太を持たない場合、他のどこかから、木材を運搬しなければならない。このやり方ではまた、他の多くの手順よりも、設置時間がかかり、薪割りや運搬がいくらか必要となる。新しいフーゲルカルチャーの植え床への初めての植え付けが、あまり良くない結果だと気付くことになるかもしれない。木はゆっくりと分解されるので、それ以降の季節では改善された結果に気づくことだろう。
水産養殖の長所と短所
この方法は、アクアポニクスとしても知られ、新鮮な農産物と自家養殖の魚という2つの「産物」を一度に生産する。植物と魚は別々の場所で育てられているが、同じシステムの一部であり、通常はポンプとパイプのシステム(左の写真)を通して水循環が行われる。
長所:廃棄物利用と閉ループシステムに興味があるなら、このモデルは多くのものを提供する。魚の排泄物は植物に供給され、魚に戻る前に植物は必然的に水を浄化する。農家にとって(デトロイトのような都会の都市農家の間にさえ)、ますます一般的となっている方法だ。一石二鳥の手法で、栽培者にとってより多くの収入をもたらし、外部肥料に費やされる金額をより少なくすることができる。
短所:水産養殖システムを構築するには、かなりの空間と時間と費用が必要。システムの全部品(水を循環させるために魚のタンクやポンプなど)を購入し、野菜の健康だけでなく、魚の健康や必要なモノも監視する覚悟が必要となるだろう。水産養殖は、市場向け菜園家か、グループとして参加している人の菜園、例えば参加率の高い学校庭園やコミュニティガーデンに最も適している。地元の規則を確認しよう。魚を販売するには、それ自体の法的ガイドラインが伴う。
水耕栽培の長所と短所
水耕栽培は水産養殖と混同されることが多いが、両者には多くの根本的な違いがある。水産養殖は魚の排水を回収して植物に送る閉ループシステムだが、水耕栽培では代わりに、植物に送るための市販の液肥に依存している。
長所:栽培スペースが不足している菜園家なら、小規模な水耕栽培の設置で、それでも野菜を植え付けることができる。土を使わないシステムは、従来のシステムに比べて水の使用量を減らすことができる。ワシントン州の、ある水耕栽培のレタス栽培家は、彼の作業において、土壌で栽培していた時に使用する水の、約10分の1だと報告している。水耕栽培では、栄養と生育環境を厳密に管理することができ、除草する必要がない。
短所:水耕栽培の設置は安くない(家庭用栽培者のための小型で簡単な水耕栽培キットでさえ、最大200ドルのコスト、さらに液肥の継続的なコスト)。病気によっては、システムを通じてすぐに広がる可能性がある。さらに、一部の人は、工業化された農業システムの土壌肥沃度や土壌侵食で生まれた実際の問題を克服する方法として、水耕栽培法があると見ている。これらの問題に前向きに取り組み、私たちの土地と食糧システムを再生するために活動する代わりに、この技法は、屋内で(提案している人もいるが、高層ビルでさえも)電気スイッチ式の作物栽培にスイッチすることになる。
ストローベイルガーデニングについて
この技法は、ストローベイル【訳注:藁のブロックのこと】がプランタだという(反対側の写)コンテナガーデニングの一種。置かれたベイルに直接植える。まず、新鮮な藁の(干し草は使わない)ベイルを分解するスピードを上げるために、数日間毎日水をかけ、さらに数日間肥料を加え(これはベイルを温める)「適切な状態にする」。さらに約10日間水を注ぎ続け、内部温度が周囲温度に低下するまで繰り返す。最後に、植え付け穴を掘り、少しポッティングミックス【訳注;主に天然の植物由来の有機培地をミックスした培土のこと】を加え、地面に植えるように植える。
長所:支持者たちは、これは安価でコンパクトな方法で、たとえ土壌を持っていなくても、どこでも行うことができると言う。藁は、コンテナとマルチ、両方の機能をする。地面に向かってかがむことに苦労している場合に助かる上げ床の区域や、時間をかけた草取りや他の肉体的にきつい庭仕事をする必要もないだろう。
短所:この工程は少し不安定かもしないし、新たにベイルを調整するには注意と時間が必要だ。また、作物は、分解しているベイルから土壌と同じような栄養を得ることができないため、栽培期間を通して定期的に肥料を加えなければならない。つまり、効果的な自家製肥料を作れない場合は、購入した肥料に頼らざるを得なくなる。
バイオダイナミックガーデニングについて
ここで述べられている他の方法の中でもユニークな、バイオダイナミック栽培は、栽培手法というよりも哲学だ。バイオダイナミック協会によれば、この方法論は1920年代に開発され、農場を生物多様性の中で成長する単一の自立生物として認識していた、科学者で哲学者のルドルフ・シュタイナー博士の原則に基づいている。この栽培スタイルは、農薬を避け、作物や家畜を統合し、農場自体の生命の躍動からのニーズを満たす閉ループシステムを採用している。
長所:バイオダイナミック栽培は、自然と共に機能し、抗わない。原則は有機栽培を超えたもので、周辺の森林、生態系、河川、そしてすべての植物や動物の命を考慮している。化石燃料などの外部からの流入を制限、または排除し、代わりに耕作と肥沃度に役立つ動物を使用するという考え方だ。バイオダイナミックの栽培者は、害虫駆除に役立つ有益な昆虫を引き付けるために、花を咲かせる多様な植物を育てる。この方法は環境的に持続可能であり、経済的に持続可能であり、堆肥、肥料、および害虫駆除策さえも農場で作られるため、外部からの購入はほとんど必要ない。バイオダイナミック栽培は、関わっている栽培者にとって有益であり、学習の好機に満ちている。
短所:いくつかの果物や野菜を「バイオダイナミック」として販売したい場合は、バイオダイナミック認証取得のために年間300ドルの費用を支払わなければならない。しかし、認定によって、より高いプライス・ポイント【訳注;消費者にとって魅力的だと考えられる小売価格】を達成できるようになり、なお、コストは地元の栽培者組合のメンバー内で配分することもできるだろう。
この方法を完全に取り入れるためには、少なくとも少量の家禽や家畜を飼育して敷地内で肥料を生産するという覚悟を決めることになるだろう。
栽培者によってはやや「はみ出した」バイオダイナミクスの概念を見い出すかもしれない。シュタイナーは精神界と科学の強い関係を信じていたし、さらに農場の「生命力」を養うための特定の薬草調製物を開発した。そうは言っても、現代のバイオダイナミックの基準は、主に持続可能性と生物多様性の側面に焦点を当てている。
これらの型破りな方法すべては、実験を伴い、あなたのニーズに合わせて(おそらく混合とマッチングの技術さえ)自分の庭で試したいものを選ぶことができる。たとえば、バイオダイナミックの枠組みの中で、フーゲルカルチャーマウンドを設置して植えようとするかもしれない。または、ストローベイルガーデンベッドに並行して、ラザニアガーデンベッドを試して、その結果を比較、対比してもいい。
もし結果を報告したい場合は、Letters@MotherEarthNews.comに原稿を送ろう。私たちは今後の出版で、あなたの発見を伝えるかもしれない。食物の栽培という意味では、皆で共通点を見出し、お互いの成功に役立てることができる。
Shelley Stonebrookは、オレゴン州に拠点を置く市場向け菜園経営者であり、マザーアースニューズの寄稿編集者。 彼女は庭で栽培された植物を抽出した石鹸を手作りして、彼女のショップで販売している。
たのしい暮らしをつくる
マザーアースニューズ
Unconventional Gardening Methods: Pros and Cons
By Shelley Stonebrook
February/March 2017
コメントをお書きください