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家禽や豚はポリフェイス・ファームで、肥やしを出して、糞の小山を混ぜるという、二役にフン闘している。
文:ジョエル・サラティン
翻訳:浅野綾子
ポリフェイス・ファームズでは、鶏と豚が、2つのうんちの仕事を進めている。フンをすること、積み肥をかき回すことだ。
農場で家畜動物を飼育する人なら誰でも、畜産の大部分は、適切に管理された肥やしを中心に回ることを知っている。なるほど、肥やしは家畜動物のもたらす最大の利点の1つだ。それは丁度、家畜動物が生み出す乳や、肉、あるいは卵のように価値のあるものだ。が、残念ながら、農場が、肥やしという財産を肥料に最大限活かすことは稀だ。馬、牛、鶏の肥やしで堆肥を作ることは、家畜動物の価値を最大限にする最適な方法の1つ。少しの計画で、堆肥作りは、あなたの家畜動物と土壌の健康にとてつもない利益となり得る。
子供のころ、私の家では、菜園の隣にいつも積み肥(貴重な雑草の山積みのようなもの)があった。けれども、私の肥やし管理の直感的洞察は、思春期に開かれた。私たち家族の農場は、父と母が1961年に購入した時、大雨にうがたれた小峡谷の、岩が積み重なった不毛の地だった。ありがたいことに、父と母は創造的な人たちだった。父は、移動式電気柵システムを作り出し、すぐに初歩的な牛のローテーション放牧を始めた。父は、地域の大穀物倉庫からとうもろこしの穂軸を運び入れて(コンバインが来る前のことだ)、岩の上に広げたんだ。冬の餌やりに、束ねられていない干し草を旧式の干草積込機で積み上げ、家畜小屋に下ろすには(付属機器の)グラップル・フォークを使った。父はV字に穴の開いた給餌柵を作り出した。給餌柵は、干し草が置いてあるところにまで渡っていたから、牛は干し草の表面を食むことができた。食べると同時に、長い給餌柵を数インチ前に動かすだけ。これは、干し草を与えるには確かに簡単なやり方だったが、肥やしと尿が溜まってしまうという問題を生み出した。
家畜小屋のコンクリート床が、5、6インチ(約13~15cm)ほどのフンで覆われると、私たちは熊手で、給餌柵の前にたまった籾がらと食べ残しをかき出した。が、籾がらと食べ残しは、水っぽいフンをほとんど吸ってはいなかった。冬中、私たちは床をきれいにして、溜まったフンを肥やし散布器 (manure spreader) で畑に撒いた。驚いたのは、1月に撒いたフンは、土を肥沃にさせるにはほとんど何の助けにもならなかったが、冬の終わりや早春に向けて撒いたもの(まさに草が青々と育つ時だ)は、劇的な効果をもたらした。同じものを、同じ畑に、違う時期に撒いて、だ。
それで私は合点した。冬の真っ最中のフンは、眠った土中の微生物によって代謝されることができず、春までにただ溶け出してしまうか、蒸発してしまったのだ。肥やしの財産を有効利用するためには、利用のタイミングについて、もっと戦略的な考えが必要だったのだ。それには保管の必要は避けられなかった。
よく肥やしを屋外に置いては、そもそも私たちから養分を奪うのと同じ厳しい自然環境に、肥やしを晒していた。実際には、肥やしは水分を含みすぎて堆肥を作ることができなかった。その上、積み肥を作り始めるには周囲の温度が10℃必要なのだ。理想的な解決策は、堆肥作りの前に、自然環境から保護された適切な場所にフンを保管しておくことだったのだ。つまり、家畜動物がくつろぐ場所に、もっと炭素を投入しなければならなかったのだ。
良質な堆肥に向けて栄養分と微生物の調節
適切な堆肥作りには、5つの要素を調整することが必要だ。炭素、窒素、水分、空気、そして微生物。微生物が足りないという問題を抱えたことはない。あなたがその問題を抱えているなら、いつでも土をいくらか足すことができる。家畜動物のフンには多くの微生物が含まれているのだ。
新鮮な肥やしは、直接堆肥として施すには窒素が多すぎる。動物によって、生のフンに含まれる炭素と窒素の割合は異なる。牛のフンの炭素・窒素割合は18対1、鶏は7対1だ。これが鶏の肥やしが「ホット(未熟で発酵熱が出る)」と言われる所以だ。同じように、他の炭素源も割合は様々だ。例えば、おがくずは500対1、木のチップ(葉は含まず)は250対1、落葉樹の葉は35対1、わらは100対1。理想的には、堆肥は25対1から30対1になるべきだ。
理想的な農場では、適切なバランスと調合割合は、他に選択肢のない状況で起こる。私のような放牧業者は、家畜動物がいつも屋外にいるのを見たいものだが、家畜動物をいつも屋外にいさせるのは、ある季節には望ましくもなく、現実的でもない。鶏は、2、3フィート(約60~90cm)の積もった雪を喜ばない。さらに、急な寒波で、給水ラインは凍結し、家畜動物の世話に必要な基本的な事は、骨の折れる仕事になる。
冬の終わり、雪解けの季節、牛の群れが地面を踏みしめることで土にかなりのダメージを与えることがある。豚も同じくだ。フンを本来あるべき場所に保管し、適切な炭素・窒素割合を取り戻すという難問を解決することで、昔ながらの寝わら、もしくは厩肥作業への回帰につながった。ジーン・ログストン (Gene Logsdon) は、このことを彼の小冊子「Holy Shit (仮題:神聖なクソ)」の中で、誰よりも雄弁に言い表した。タイトルで読むのをやめないように。一読の価値ある本だ。
厩肥を作るための寝わら
近所で昔働いていた作業者たちがこう教えてくれた。農場で働く男たちの朝の日課の1つは、納屋周りにある湿った牛のフンを集めて、一輪車に載せ、納屋に運び入れることだと。藁に覆われて家畜に踏まれ、この栄養たっぷりのフンは屋内に置かれたことで、突如として保護され落ち着いた状態を享受したのだ。私は寝わらを炭素のオムツと呼んでいる。オムツが厚ければ厚いほど、良い働きをする。この炭素のオムツは多機能の素晴らしいスポンジなんだ。
第1に、炭素オムツは、全てを安定させるため、壊れやすい栄養素を分子のレベルで炭素に科学的に結合させて、吸収する。厩肥は、蒸発(におい)と、溶出(地下水の汚染)の両方を抑える。肥やしの蒸発を抑えるのは特に喜ばしい。というのも、小屋などの囲いで保護して飼われる家畜動物のもっともよくある悩みの1つは、悪臭だからだ。これは、豊かさと資源が農場から逃げて行くことに等しい。
第2に、厚い寝わらは、家畜動物に、暖かく、やわらかで、快適なくつろぎの場所を与えてくれる。コンクリートは、人間にも同じように、家畜動物にも有害だ。泥はもっと良くない。清潔なくつろぎの場所を提供することは、鶏や牛の群れの健康に実を結ぶ。寝わらは、触って暖かくはないが、凍ることはない。嫌気性の発酵プロセスは、十分な熱を生み出して、地面が凍結する時でさえ、凍ることがないのだ。
最後に、厚い寝わらは、センチュウや、他の病原体と戦う微生物が繁殖する生息環境を提供する。これはもっとも大きなメリットの1つかもしれない。というのも、家畜動物の収容環境問題の核心である、病気の問題に触れるからだ。「bugs」は、私たちの文化ではマイナスの影響を及ぼすものと考えられがちな一方、本当のところは、多くの「bugs」(顕微鏡でしか見えない小さな細菌類、カビ・キノコや、クモ・ミミズ・ウジのような小さな虫をわかりやすく表現した言葉)は良いものだ。仕掛けは、良い「bugs」が、悪い「bugs」を打ち負かす生息環境を提供することだ。私はこれを、「免疫学の地勢 (immunological terrain) 」と呼ぶ。
健康的な免疫学の地勢が存在するためには、大きく、深く、厚くなければならない。ソフトボールサイズの積み肥が存在し得えないのと同様、薄っぺらな場所に免疫学の地勢は存在し得ないのだ。ここにそのやっかいな問題がある。家畜収容施設は、設計される必要がある。そうすれば寝わらの厚さは、構造上のまとまりを欠くことなく意味のあるもの(12から48インチ:約30~120cm)にすることができるのだ。土台、壁、えさ箱やその他全てが、この高さの寝わらを収容できるものである必要がある。家畜小屋もしくは農園内の建物は数多くあるが、1つも厚い寝わらを扱えるように設計されていないのだ。これは、ほぼ間違いなく、アメリカ農村地帯における、特筆すべき最も大きな農業における茶番だ。
それぞれに独特のフン
私たちの農場では、家畜動物ごとに異なる手順を用いる。反すう動物は、干し草をつるした箱から食べる。箱は、寝わらを敷く時に、手巻きウィンチ(カーテンのような)で、クランクを回して上に動かすことができる。寝わらにはとうもろこしを加える。牛が、春に草を食みに外へ出る時期に、豚を小屋に入れる。豚は発酵したとうもろこしを探し、積まれた寝わらを通気して、好気性の堆肥に変える。豚が用事を終えたら、堆肥を畑にまく。
鶏は引っかくことがあるから、反すう動物のように寝わらを下にぎゅっと押すことがない。また、牛とは違い、真冬の炭素を加える間、外に追い払うことは簡単ではない。この産卵鶏が冬に背の高いトンネル支柱の鶏舎に引っ越す前に、12から18インチ(約30~45cm)厚の木のチップを投入する。これは、鶏が小屋の中にいる100日間、鶏のフンを処理するのに十分な炭素だ。3フィート(約90cm)平方につき鶏1羽の計算だ。全粒穀物(小麦、大麦、ライ、オーツ麦)は、毎日寝わらの上に撒く。鶏の引っかきを刺激するためだ。穀物はいくらか寝わらの中に細かく落ちて、芽吹き、鶏の引っかきと彼らのごちそう探しをさらに刺激する。この引っかくことと通気作用全てが、春の畑にまく、素晴らしく栄養のある堆肥を生み出すのだ。
豚はちょっと違う。草食動物や鶏と違い、フンがをする場所を選ぶ。つまり、フンがついている場所以外は地面を鼻でほじくり返すが、フンがついている場所はそのままにしておくのだ。どうでもいい干し草やとうもろこしの飼料をあげると、豚は半分食べ、半分は撒き散らし、汚れていない寝わらの中にかき混ぜてしまう。春、フンの場所に糞便以外の資材を混ぜて、3週間ほど置き、畑にまく。豚のフンは十分な水分、窒素と微生物を供給してくれる。一方、フンがついている以外の部分は、空気と炭素を供給してくれるのだ。
肥やし堆肥のパーティを開こう
寝わらをする間、ミネラル、木灰、もしくはその他好みの土壌改良材を加えることができる。このプロセスの間の生物学的な酵素の働きは、さらに強力な豊饒の一発を作り出して、全てを向上させる。堆肥作りは、その他のプロセスから切り離されたものではない。実際、堆肥作りを、家畜収容や家畜シェルターのシステム設計に組み込むことは、一連の作業から多くの仕事を取り除き、相乗効果を生み出すのだ。
厚い寝わらは能率を上げる。というのも、日々の掃除の変わりに、1年に1回の掃除ですむからだ。これは、掃除をいやな仕事からパーティへと変身させる。パーティを開いて友だちを呼ぼう。熊手と一輪車を持参するように伝えよう。祝いの時、豊かさをその手につかむ時だ。気に入らないなんてあり得ないだろ?
想像しよう。化学肥料に費やされる全てのお金が、アメリカの農村地帯中で厚い寝わらの「炭素オムツ」用の炭素に遣われることを。想像してみよう。病気にかかった、他の植物を脅かす、低品質の木が木片にされ、それによって私たちの森が癒され、質が高められていくことを。想像してみよう。炭素セクターの何千もの新しい仕事が、安い石油を求めて戦う数知れない兵士の仕事に取って代わることを。想像してみよう。全てのミミズが、有毒な化学薬品よりも堆肥を施されて喜ぶ様を!この炭素豊かな未来を現実にしよう。農場で、小屋で、そう、質の良い堆肥に仕上げられた肥やしを手に始めるんだ!
たのしい暮らしをつくる
マザーアースニューズ
The Pitchfork Pulpit: Composting Livestock Manure
By Joel Salatin
February/March 2017
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