イギリスやアメリカの料理本に登場するフランスパンの歴史から取り出した古典的なフランスパンの作り方を紹介するので、作ってみて欲しい。フランスパンを使ったクルトン、シナモントースト、パンプティングなど様々なレシピからも、何か1つ試してはいかがだろうか。
こねて作らないこのパンは、まるでケーキのような食感をしている。自家製のジャムやバターによく合う。
フランスパンには全く異なる2つの伝統がある。1つ目は小麦粉、パン種、塩、水といった4種類の材料だけで作る、現在、人気があるパリパリした硬い皮のおしゃれなパンだ。パン種にイーストではなくサワー種を使うと、熟練のパン職人が焼いたような仕上がりになるので、多くの方に自宅で焼いてみてもらいたい。
何百年もの間、英語圏の人たちが「フランスパン」と言って思い浮かべていたパンは、我々が現在愛してやまない表面が黄金色でパリパリしたパンではなかった。また、サワー種など思いもよらなかった。そもそも、パンに酸味など好まなかったからだ。19世紀の料理本では、スターター(発酵種)やパン生地に重曹を加えることで、かすかな酸味も中和するよう助言されていた。
フランスパンの歴史
歴史的には、我々がパン屋や家庭で真似して作ってきたのは、フランスパンの歴史で2つ目となるバター、卵、牛乳で風味をつけた、イーストで発酵させた柔らかい白いパンである。1600年代から1700年代の料理本の著書たちはこうしたパンを「フランスパン」と呼んでいたが、その後は「フレンチロール」と呼ばれるようになった。この柔らかくて繊細な味をしたパンによって、我々はフランス文化、とりわけフランス料理が感覚的に洗練されていることに気付かされた。
このタイプの「フランスパン」は流行こそ廃れたものの、決して消えてしまったわけではない。アメリカパンのレシピから小麦粉、牛乳、脂肪などの基本材料の比率を割り出してみれば、数世紀前のフランスパンが決して見捨てられていなかったことが分かる。フランスで広まった、イーストで発酵させた風味豊かな白いフランスパン(1600年代と1700年代にイギリスの著者が紹介した)と、19世紀と20世紀の大半を通して料理本の目玉として君臨した古典的なアメリカパンの違いは、生地に砂糖が少し加えられて、塩の量が増やされている点だけだ。リンゴ酒やワインが発酵の過程でさっぱりした口当たりになっていくのと同じで、生地に加えた砂糖の大部分はイーストで分解されるので、砂糖はパンを甘くするのではなく、生地を柔らかく膨らみを増加させるように作用するのだ。
ここで、アメリカのサンドイッチパンを再紹介したい。昔のイギリスの料理本を経由した本家本元フランスからの本格的なレシピだ。この基本のフランスパンのレシピは、ヘンリー・ハワードが1708年にイギリスで初めて紹介したものだが、素晴らしいことに、1924年の「ボストン・クッキングスクール・クックブック」と、1970年度版「ジョイ・オブ・クッキング」と同じレシピなのだ。1708年のレシピと現代のアメリカのレシピで唯一目立った違いは、アメリカのレシピには砂糖が加えられている点だけだ。料理本やオンラインで見られる風味豊かな白いアメリカパンは、実際にはフランス人がかつて贅沢なパンと呼んでいたパンと全く変わらない直系子孫なのだ。贅沢かつ新たに注目すべきパンと言えるだろう。
基本的なフランスパンレシピ
材料
• 無漂白の白い小麦粉4カップ(約600グラム)
• 塩小さじ1.5杯(好みで)
• 卵3個
• 砂糖大さじ2杯(アメリカ版を作る場合)
• 温めた牛乳1カップ
• 無塩バター大さじ2杯、室温に戻して柔らかくしておく
• イースト小さじ2と1/4杯
作り方
1708年、このレシピが発行された頃、卵は裏庭から採れたて、牛乳は搾りたて、バターは作りたてのものを使っていた。白い小麦粉は現在のものほど白くはないが、大した問題ではない。私が自宅の裏庭で飼っている鶏の卵の濃厚な黄身で作ったパンを友人に出すと、「どうして、このパンはこんなに黄色いの?」と聞かれることがある。
正直に言うと、私は砂糖と規定量の塩を使い始めたばかりだが、その焼き上がりにはとても満足している。皆さんにも、イーストで発酵させたちょっと豊かなアメリカパンの伝統を改めて評価してもらえたら幸いだ。
作り方
1. ボールに小麦粉を入れ、好みで塩を加え、混ぜておく。
2. 別のボールに卵を割り入れ、好みで砂糖を加え、かき混ぜておく。
3. 小鍋に牛乳と柔らかくなったバターを入れ、バターを細かい粒状にする。
4. 小鍋を約43~46度に温める。
5. バターがよく溶けるようにかき混ぜる。温めた牛乳とイーストを手順2で用意した卵のボールに入れて混ぜる。
6. 手順5のボールに約1カップの小麦粉/塩を加え、生地を作るための「スポンジ」(予め発酵させた)を作る。なめらかになるまで混ぜる。
7. なめらかになったスポンジの表面に小麦粉を振りかけ、覆いをして、温かいところに置く。
8. スポンジが明らかに発酵して膨れ、振りかけた表面の小麦粉にひびが入ってきたら、残りの小麦粉を加える。
9. 手あるいはミキサーでざっくりひとまとめにする。ケーキのようなテクスチャーになるよう、昔から、このパンはこねないで作られている。
10. 覆いをして、2倍に膨れ上がるまで温かいところに置く。
11. 2倍に膨らんだら、軽く粉を振ったカウンターに置く。
12. 手あるいは麺棒で優しく押して、パン型と同じ長さで幅は2倍の長方形になるように成形する。
13. 25×11×8センチの大きさのパン型の内側にバターをしっかり塗り、円柱状にした生地を継ぎ目が底になるように入れる。 14. 覆いをして、生地の上部が少し膨らむまで、温かいところに置く。光沢のある皮に焼き上がるように、表面に溶き卵を塗る。
15. 177度のオーブンで40分間焼く。
16. オーブンから出して、パンを型から外し、ラックにのせる。
17. パンを2時間ほど冷ましてから、スライスして、食卓に出す。
フランスパンの食べ方に関するさまざまなアイデア
この古典的なレシピのフランスパンは、バターやジャムを塗ったり、トーストしてスープの中に入れたり、他の食べ物と一緒に食べるのに適したパンだ。古典的なフランスパンのレシピと合わせて、私がよくやる食べ方をいくつか紹介するので、このパンのファンになってもらいたい。
サンドイッチ
柔らかくて、美味しそうな黄色をした古典的な自家製サンドイッチ用のパン。薄くスライスして、好みのサンドイッチの材料を挟んで食べる。
バター付きパン
自分でバターとジャムを作るには理由がある。温かい古典的なフランスパンには、シンプルだけどとびきり美味しいジャムやバターがぴったり。
1. バターを作るには、生クリームをフードプロセッサーで分離(脂肪分が水分から離れる)するまで泡立てる。
2. 分離した生クリームをボールに入れて、水分を取り除き、冷水を加える。
3. スプーンを使って、冷水の中でバターを押し、バターミルクをすすぎ出す。冷水が透明になるまで(つまり、ミルク分がすべて取り除かれた状態)、この作業を繰り返す。
4. 次に、冷水を捨てて、もう一度バターを押して、バターの内部に残っている水分を取り除く。バターを皿の上に置いて、パンとジャムと一緒に食卓に出す。休日の集いにぴったりの一品。
クルトンのレシピ
今回紹介するレシピから1品だけ作るとしたら、このレシピがお勧めだ。英国流クルトンには様々な形があるが、このクルトンは「美味しさを超えた」レベルだと思う。本記事のために、自分で作ってみたが、私の口からついて出た言葉は「オーマイゴッド!」だけだった。それほど素晴らしいレシピだ。
1. パンを約6ミリの厚さにスライスし、耳の部分を切り落とし、両面にバターを薄く塗る。
2. 中温に熱した鉄板で薄いきつね色になるまで焼く。(Fryとあるので揚げる訳した方が良いのかもしれませんが、鉄板の上で揚げると言うのは違和感があるので、焼くと訳しました <承知しました。Fried Riceのように油で焼くという意味で良いと思います。)
3. 焼き上がったクルトンを半分あるいは4分の1に切り、スープにいくつか入れたり、浮かべて食べる。
クリスプブレッド
簡単に作れる美味しいクラッカー
1. パンを薄く(6ミリ以上にはしない)スライスする。
2. 耳を切り落とし、半分か4分の1に切る。
3. 150度のオーブンできつね色になるまで焼く。チーズスプレッド、レバーパテ、カントリーパテにぴったり。
シナモントースト
寒い冬の朝にぴったりなトースト用の温かいトッピング。子どもたちには常に大人気。気分が落ち込んだときは、シナモントーストとお茶が薬代わりになる。
1. シナモンと砂糖を1対2の割合で混ぜる。好みで味を調節のこと。
2. パンをトーストし、室温に戻しておいたバターを好きなだけ塗り、その上にシナモンシュガーをたっぷりかけ、熱々で食べる。
フレンチトースト
フランス人はフレンチトーストのことを「失われたパン」と呼ぶが、私は見つけた幸せだと思う。私はフレンチトーストを作るためだけにフランスパンを1本作っている。
1. 厚切りパン1枚につき、卵1個と牛乳4分の1カップを用意して、かき混ぜ、卵液を作る。
2. 平底の皿にパンを1枚入れ、卵液を注ぎ、片面ごとに1、2分間、卵液に浸し、中までしっかり浸透させる。バターを入れた中火のフライパンで、卵液をしっかり吸収したパンをこんがりきつね色になるまで焼く。
3. メープルシロップ、砂糖、レモンなど好みのトッピングと共に食べる。
パンとバターのプディング
このレシピは、私にとって「危険な料理」の分類に入る。食べるのをやめられなくなるので、頻繁に作らないようにしている。私はこの料理と共に育ってきたと言えるほど、思い出がつまったレシピだ。夜が寒くなる晩秋から早春にかけて、母がよく作ってくれた。パンプディングをプリンにしてくれるのは、浸み込ませたカスタードだ。
1. オーブンを177度に予熱しておく。
2. ボールに卵4個、砂糖4分の1カップ、牛乳1クォート (950ml) を入れて、軽く泡立ててカスタードを作っておく。
3. 2カップの水を沸かし、4分の3カップ分量のレーズンを入れる。
4. レーズンは3分間ほど湯通し(半ゆでにする)、水を切っておく。
5. 454グラム(1ポンド)のパンの耳を全て切り落とし、1.3センチ(0.5インチ)の厚さにスライスする。
6. 常温に戻しておいたバターを片面に塗る。
7. 9カップ分の容量のあるスフレ型の内側にバターを塗る。パンをバターが塗られた面を下にして並べて、レーズンをのせる。パンを並べて、レーズンをのせる作業を繰り返して、層にしていく。
8. カスタードを加える。
9. 30分間そのままにした後、1時間、あるいは表面がきつね色になって、ナイフを刺しても何もつかなくなるまでオーブンで焼く。
たのしい暮らしをつくる
マザーアースニューズ
Back-to-Basic French Bread Recipe
William Rubel
December 2016/January 2017
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