コミュニティー菜園プロジェクトを育てる

 

創意工夫、創造力と少しの気概で、この小さなノースカロライナ州の町は、健康的な食物を必要としている隣人のためのコミュニティ菜園プロジェクトを育て上げた。

 

 

文:パット・ストーン(Pat Stone)

翻訳:中村 真理子

 

 数年前、私はやきもきしていた。「たくさんの課題がある。」自分に言った。「そして、世界には多くの困難な人たちがいる」と。一番困るのは、自分がそれらに対して全くの無力だと感じていたことだった。このような気持ちを感じたことがあるだろうか。たとえ私が環境意識の高い生活を送っていて、価値あるものに寄付をしていたとしても、自分自身のこの二つの手で何か実際に手応えのある変化を起こす必要があった。どんな小さなことでも。

 自分の手(土のついた手だけれど)を見ながら、この考えが急に思いついた。私は、ガーデニングに関する知識をかなり持っている。では、困っている人々に配る収穫物を育てられるコミュニティ菜園プロジェクトを立ち上げてみたらどうか、と。困っている隣人のために新鮮な食物を育てる、これ以上わかりやすい人助けの方法があるだろうか。

 飢えは甚大な問題だ。米国人の7人に1人が地域の食糧支援に頼って暮らしており、14%以上の人が公的な基準での貧困以下の生活を送っている。少なくとも5人に1人の子どもが飢えのリスクにある。あなたの住むまさにその地域でも、飢えに苦しむ人が増えている。だが、食料支援団体は、新鮮で栄養価の高い旬の食材を滅多に提供しない。ほとんど全ての食料は、缶詰か箱入りだ。これには疑念の余地がない、なぜならそれらの食べ物は安価で長持ちするからだ。このように工業的に生成された食べ物について考えると、新鮮な野菜を育て彼らに与えるという自分のアイデアがより一層魅力的に思えてくる。私のアイデアが世界の貧困問題を解決するものでないことはわかっている、でも自分が住んでいる地域のための実践的な何かになるかもしれない。

 

始まり

 私の住むノースカロライナ州のフェアビューの友人たちに提供型コミュニティ菜園についてどう思うか尋ねたところ、蜜の上の蜂たちよりも早く、歓声が湧き上がった。私に加え多くの人が現実的な方法で支援をしたがっていた。まもなく、私たちの町のコミュニティ菜園は、諮問グループに、食物を育てる広大な借地、たくさんの寛大な寄付、簡易トイレからトラックいっぱいのコンポスト肥料、そして整地して種を植えてくれる多くの有志たちが集まった。

私たちのコミュニティ菜園プロジェクトは、大恐慌時代に1エーカー(約1,224坪)の土地で食べ物を育て困っている隣人に分け与えたというこの地域の取り組みから、「主のエーカー」と名付けた。

 いま、私たちのコミュニティ菜園は8回目の成育期にある。これまでに私たち有志で55トンの有機食物を育て、困っている隣人に提供できたことを誇りに思う。私たちの美しいガーデンは、毎週のコミュニティ食事会、ガーデニング講座、新しい家庭菜園、志ある人々による余剰生産物の持ち寄り/引き取りプログラムなどの副次効果を生んだ。「主のエーカー」は食べ物を生産するだけでなく、コミュニティを育ててくれたとすぐに学んだ。

 

あなたの町で提供型菜園を始めよう

 もし、あなたの地域でこのような取り組みを立ち上げたいと考えていたら、まず菜園プロジェクトに賛同してくれる仲間を見つけることが必要になるだろう。チームとしての最初の活動は、組織を作ることと計画を練ること。中心となるグループをつくり、定期的に会う委員会を立ち上げる、その中からファシリテーターとなる中心人物を任命する。次に、重要な課題について議論していく。例えば、何人の人が関与するか、彼らの役割はどのようになるか、という点。「主のエーカー」では、常勤の菜園管理人と臨時の菜園実習生や多くのボランティアがいる。また、どんなモデルの提供型菜園を作り上げたいかについても決める必要がある。私たちの場合、収穫した農作物は全て地域の食糧支援団体を通して提供している。他のモデルでは、コミュニティ菜園に関わった全ての人が幾らかの分け前をもらったり、自分の裏庭を提供して食物を育てる形をとるところもある。

 このように、様々な形で菜園ロジェクトを運営することができる。私たちは、健康的な土壌をつくり、限られたスペースで高い収量を得ることができる深く掘った揚げ床で作物を育てている。他のグループは、伝統的な畝や箱で区画分けして育てるところもある。

次に、収穫物をどのように分けるか考える。地域の食料支援団体に連絡をとり、何を必要としているか、何が歓迎されるかを確認する。また、退役軍人施設や女性のシェルター、貧困者のための食料庫など寄付を歓迎してくれる団体を探し、彼らが活用できるものを育てよう。

 最後に、地域ですでに他の誰かが提供型菜園事業を行なっていないか確認する。もしいれば、彼らから学び、また協働することができる。同じ志を持つ私たちはみんな協力しあうことができる!

 

コミュニティ菜園の必需品

あなたの菜園で耕作を始める前に、これらの要素を考慮して欲しい。

・土地。日に6−8時間日照を得られる耕作向きの良い土地を提供してくれる人が必要となる。できれば、他の人が出入りしやすい場所で選びたい。保育園や学校、公園、教会など、土地提供に前向きに応じてくれる団体を探そう。もし彼らの支援の下できれば、事務作業の軽減にもなりうる。さもなくば、おそらく非営利団体として法人化が必要となるだろう。

・水。耕作に必要な水が現場で得られない場所で、菜園づくりを行なってはいけない。水を引くことで失敗した菜園の例が実際にある。

・物資。あなたはおそらく隣人や地元企業の寛大さに驚くことだろう。私たちのコミュニティ菜園は、多くの物資提供を受けることができた。フェンスから種まで、寄付で賄うことができた。具体的に必要なものを個人的に相談すると、彼らは非常に寛大だ。それは非常にありがたいことだ。時に、「主のエーカー」がもたらした最も良い点として、皆が人助けをしやすくなったことであると思う。本当に多くの人々が他の人を助けたいと考えているが、どのようにすれば良いのかただ知らないだけなのだ。まさにそのおかげで、私たちの菜園が一人のアイデアから今や何百人もの人々が携わるプロジェクトになり、そしてたった1エーカーの土地で昨年12トン以上もの収穫物を得ることができたのだと思う。

 私にとって、この一連のコミュニティ菜園プロジェクトで得られた意外なやりがいは、他の人と協力する喜びだ。一人一人が示す、私たちの育てた野菜に対する感謝の気持ちは、目を見張るものがある。しかし、食料寄付は貧困の解決にはならない。これらは、応急処置であり、恒久的な解決策ではない。真の解決策は、少しずつだが、人々が共に働きお互いに知り合っていき、いずれ私たちみんなが助け合いの精神を持つ隣人になることから始まる。「主のエーカー」では、全てのボランティアが、与える以上のものを与えられていると感じ、食物だけでなく友情を育む機会に恵まれたことに感謝している。

 

このコミュニティ菜園プロジェクトとマザーアースニューズの繋がり

 「主のエーカー」はマザーアースニューズと面白い接点がある。菜園管理人であるスーザン・サイズ (Susan Sides) とスーザンの夫フランクリン・サイズ (Franklin Sides)、設立者の私は皆、1980年代にマザーアースニューズで働いていた。私は、編集補佐兼ガーデニング部門の編集をしており、スーザンとフランクリンはマザーの菜園スタッフだった。スーザンとフランクリンはマザーアースニューズ・エコヴィレッジの長く使用されていなかった休眠地を、のちに記事の材料を提供する小さな菜園として耕した。

 「主のエーカー」の委員会が菜園管理者候補に聞き取りを行なった際、スーザンが適任者であると誰もがすぐにわかった。彼女は、素晴らしい菜園家なだけでなく、人となりも素晴らしい。さらに、フランクリンの献身、気さくさ、クリエイティブな工作の才能は地域の伝説だ。彼らと再び活動することができて光栄だ。「人間関係は、提供型菜園の主要な収穫物ね。そして愛が通貨代わりね。」とスーザンが言うように。

 

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Grow a Community Garden Project

By Pat Stone 

December 2016/January 2017