りんごと玉ねぎが秋に甘さと風味を運ぶ。

りんごと玉ねぎは、両方共、秋冬に保存しておける秋に欠かせない作物だ。玉ねぎは土に半分埋まって育ち、りんごは母なる自然の最も美しい木の1つに実る。野菜に果物、それぞれの種類の中で、りんごも玉ねぎも各々重要な位置を占めている。料理人なら絶対に切らしてはいけない素材だ。

 

 

翻訳:浅野 綾子

 

苗・種から育てる玉ねぎ

 買い物をする人なら、玉ねぎには何種類かの色があることがわかる。赤い玉ねぎは甘く穏やか、白い玉ねぎは若干辛味が強い。そして茶色のものは風味豊か。菜園家なら違った区別の仕方も学ぶ。アメリカ南部の夏が短い場所では、「短日【日照が短くなると花が咲く植物】」種の玉ねぎが育てられる。日照が10~12時間になればすぐに球根が形成される種類だ。北部では、冷涼な気候と、日照が14~16時間の夏日に適した「長日【日照が長くなると花が咲く植物】」種の玉ねぎが育てられる。南部のジョージア州ビディリア (Vidalia) は、硫黄分の低い土質のおかげで、極甘の玉ねぎの名前に使われるようになった。けれども、多く育てられている短日栽培品種は「イエロー・グラネックス (Yellow Granex) 」だ。「ワラ・ワラ・スイート (Walla Walla Sweet) 」は、耐寒・長日性の玉ねぎで、ワシントン州ワラ・ワラ生まれだ。サイズ・穏やかな刺激・みずみずしさを求めて品種改良された、本質的に甘い栽培品種だ。

 玉ねぎは、時期と用途によっても区別される。菜園家の料理人には重要なポイントだ。きちんと計画をたてれば、自家製の玉ねぎを1年中食べることができる。春には保存用の玉ねぎを植えて、夏の終わりに冬越し用のものを植える。玉ねぎ栽培の一番簡単な方法は、苗から育てることだ。8~10センチ位離し、肥えた土にただ立てて植えるだけ。だが、苗から育てる場合は、栽培品種がほとんど選べず、ホームセンターの棚に置かれると最適な状態でなくなっていることがよくある。そこで、メイン州の私たちの農場では、全ての玉ねぎを種から育てる。押し固めた土のブロックにあらかじめ種をまく。ブロック1個あたり種4つだ。農繁期の作物用に3月に種をまき、冬越しの玉ねぎ用に8月の終わりに種をまく。

 定植する際には、ブロックを縦横それぞれ30センチ程離して植える。これは単に手早くできるだけでなく、草取りの手間も軽減する。細く伸びて育つ玉ねぎは、雑草に陰を作ることがなく、植える間隔が広ければ掘り起こして草を取ったり、マルチをするスペースが広くとれるのだ。玉ねぎは水分が必要な作物だ。マルチは水分を保ち、草を抑える。私たちが育てる一番保存の利く栽培品種は、「パターソン (Patterson) 」と呼ばれる黄色い玉ねぎだ。保存用の赤い玉ねぎには「レッド・ウィング (Redwing) 」を試してみよう。

 冬越しの玉ねぎは、半透明のビニールシートをアーチ状の電線管の上に広げた低いトンネルをかけて保護できる。「ワラ・ワラ・スイート」はこの栽培方法に向いているが、「ブリジャー (Bridger) 」と呼ばれる栽培品種の方が、私たちの所ではもっと重宝している。晩春に、可愛らしい水気の多い球根ができたらすぐに使い始める。保存しておいたものが丁度使えなくなる頃だ。低いトンネルがけをしたこの玉ねぎは、農繁期に栽培する玉ねぎが秋に収穫できるまでもつだろう。

 

畑からキッチンへ

 8月の初めまでに、農繁期栽培の玉ねぎの上の部分がだらりと頭を下げてくる。これは、引き抜いて、葉のついたまま植床に並べて天日干しする時期が来たというサインだ。それから、風乾(curing)をするために、被いのある乾燥した場所に移動させる。保存期間を拡大するための段取りだ。そこから、湿気のある地下貯蔵庫でなく、乾燥した冷暗所に移して保管する。

 キッチンで、生玉ねぎが少しあれば大活躍だ。サラダに、サルサに、バーガーに。けれども、あらかじめ炒めた玉ねぎはたくさんあればある程良い。私は、ズッキーニの風味を引き立てたり、ケールのようなアブラナ科の野菜の甘みを出すために、炒めておいた玉ねぎを加える。カブの葉だって、玉ねぎと炒めれば素晴らしい味わいだ。玉ねぎほど美味しく飴色に炒められる食べ物はほとんどない。特に、バターを合わせればなおさらだ。炒めた玉ねぎを加えたハッシュブラウン (hash browns:じゃがいもを細かく切り、フライパンに平たく広げてこんがり焼いた料理)を考えたらわかるだろう!オニオンスープのほとんど肉のようなコクを考えてみよう。実際、玉ねぎを入れないスープ、シチューなんてあるのだろうか。玉ねぎだけだって美味しいのだ。真中で半分に輪切りにし、小さな平たいバターとタイムをひとつまみのせ、軟らかくなるまで焼き上げる。唯一玉ねぎの難点は、調理する時に目に染みて涙が出ることだ。皮むきは、水を出した蛇口の下でやろう。そうすれば戦いに半分勝ったも同然だ。

 

りんごの木を育てる技術

 木を1本だけ育てることができるなら、私はりんごの木を選ぶだろう。授粉を確実にするために、実際は2本になるが。適切な栽培品種を選べば、一生恩恵に預かることができるだろう。アメリカのそれぞれの州には、その地で繁殖する独自のりんごの品種がある。私たちの住むメイン州海岸沿いの地域では、「ゴールデン・ラセット (Golden Russet) 」と「ノーザン・スパイ (Northern Spy) 」が生存競争を勝ち抜いた品種だ。りんご栽培が伝統的に受け継がれてきた州よりも暖かい州でさえ、低温要求量【正常に開花するために必要とされる低温の程度・期間】の低い品種を選ぶことができる。あなたの地域の農務出張所、あるいは地域の専門家に聞いてみよう。隣近所で育てているりんごの木を見てみよう。りんご穫りのできる園を訪ねて、りんごを試食したり、オーナーと話をしてみよう。

 りんごの木の栽培には技術がいるが、いくつかの簡単なことを実行すれば、栽培を成功に導く助けとなる。アルミニウムの金網を丸め、端で重ね合わせてホチキス止めした輪で若木を囲み、ねずみ、ハタネズミ、センコウムシから守ろう。年に一回、できれば休眠中に剪定しよう。枯れた、あるいは傷ついた部分を取り除く。また、地面と並行に伸びる枝から垂直に伸びる実のつかない「徒長枝 (water sprouts) 」を刈り込む。交差し、もしくはすり合っている枝を取り除き、同じように幹に向かって内側に伸びている枝も取り除く。目標は、木の中央を開けた状態にして、日当たりと風通しを良くすることだ。ミントやエゾギクのような蜜の豊富な花を欠かさないようにしよう。昆虫による授粉や、害虫の天敵を呼び込む助けとなる。毒性のあるスプレーや粉剤を使わないようにしよう。木の下を干草やわらで覆い、土が更に肥えるようにその場で分解させよう。

 「サマー・ランボー (Summer Rambo) 」のような早生種は、夏の終わりのりんごパイにうってつけだ。けれども、私が一番太鼓判を押す品種は、私も育てている「ゴールデン・ラセット (Golden Russets) 」のような保存性に優れたものだ。市場で輸入品しか出回っていない時に、自家栽培の果物を供給してくれる。パイやタルト、ケーキ、かりっと焼いたチップス、コブラー【フルーツ、小麦粉、バターなどを使った焼き菓子】を作ろう。もっとも、りんごは単にデザートのためだけのものではない。りんごを使った私のお気に入りの料理には、チキンスープ、カレー、サラダ、りんごとチーズをのせたグリル焼きトーストなどがある。りんごの木と一生付き合っていく中で、私がもっとたくさんの料理を編み出すだろうことは間違いない。

 

りんごと玉ねぎを使った美味しいレシピや、あなたのお気に入りの玉ねぎ品種の使い方、品種を問わず手に入るりんごの使い方は、以下のリンクを見てみよう。

りんごと玉ねぎを使った鶏肉のレシピ

りんごとチーズの秋サラダ

りんご詰め玉ねぎのオーブン焼き

 

バーバラ・ダムロッシュは、メイン州の「Four Season Farm」に在住。秋冬を通して、りんごと玉ねぎの味覚を楽しんでいる。著書に「The Garden Primer(仮訳:菜園入門)」、共著に「The Four Season Farm Gardener’s Cookbook(仮訳:フォー・シーズン・ファームの農家の料理本)」がある。

 

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October/November 2016