家のキッチンで自家製フードビジネスを始めよう

自家製フード法 (Cottage food laws) は、定められた基準の「安全な」食べ物を一定範囲の客に販売する自家製食品ビジネスを認めている。

 固定観念にとらわれずに考えよう。自家製の乾麺は、地元で大評判になるかもしれない安全な食べ物の一例だ。

 

 今ではほとんど全ての州で、自家製フード法が法令書に載っている。これらの法律は、自宅のキッチンで作った一定の「無害な」食べ物の製造・販売を認めている。自家製フード法は、州によって大幅に異なる。あなたの州の自家製フード法についての概要は、 Forragerを見てみよう。その前に、あなたの住まいがどこにあるかに関わらず次の4つの質問に答えてほしい。

 商品一覧には何をのせるつもりだろうか。あなたの州の自家製フード法には、販売できる「無害な」食べ物の内容についての概要が明確に記載してある。一般的に、冷蔵冷凍の不要な酸度の強いもの、ビン詰め製品(保存加工品、酢漬けやサルサ【メキシコの料理のソースで、トマト、タマネギや唐辛子などから作る】)、水分含有量の低い焼きものが含まれていると思う。場合によっては、販売できるものとできないものが明記されていることもあるだろう。飴や、乾物ミックス (dry mix) が含まれていることさえあるかもしれない。合法的に作ることができるものに的を絞ろう。できないことのために、時間とエネルギーとお金を無駄にすることのないように。もちろん、州法をあなたの希望に添うように変える努力をすることはいつでもできる。実際、多くの法律の規制が、こうした積極的な市民の権利運動によって緩められている。

 客層はどうだろうか。全ての自家製フード法では、一般大衆への直売を認めている。10以上の州で、間接的に、もしくは卸売ルートでの販売も認めている。レストランや食料専門店、地域の協同組合などだ。あなたの商品の無料サンプルをファーマーズマーケットや、法律に触れない場所で(その場の管理者などからだめだと言われない限り)配ることもできる(したほうがいいよ!)。

 あなたの「店」はどこだろうか。各州の自家製フード法は、どこで製品を販売できるかを定めている。ファーマーズマーケットや、地域のイベントはもっとも一般的な場所だ。しかし、州法がファーマーズマーケットでの販売を認めていても、そのマーケットがあなたの販売を必ずしも許可しなければならないわけではない。ファーマーズマーケットの中には、独自の規約などを設け、自家製フード企業に出店を認めないという所もある。最も多くの場所を認めている数州では、大抵、直接注文や自家製フード企業宅での受け渡し、メールオーダーも認めている。

 売上上限はあるだろうか。ほとんどの州では、自家製フードビジネスで販売できる製品について、年間の税引前の売上上限を設けている。これは、販売地域を広げずに達成できる最大限度の売上額に関係してくる。この額は、5,000ドルから45,000ドルの幅がある。上限を全く設けていない州もあるが、統制のための監督や調査のため、売上上限とは別の要件が設けられているかもしれない。

 以上の質問に答え、あなたの州の自家製フード法を理解したら、頭に描いている食べ物が販売するに値するものかどうか検討する必要がある。もしあなたのパリッとした手ごねパン、もしくは甘い苺ジャムが評判になっているなら、さっそく開業に向けて幸先の良いスタートを切ろう。

 

7つの「P」

 もっとも効率的な販売促進方法は、次の7つの「P」を盛り込んだ具体的な計画を作ることだ。商品(Products)、価格(Price)、場所(Place)、販売促進活動(Promotion)、人(People)、提携(Partnerships)、そして目的(Purpose)だ。美味しい商品を作ることは始めの一歩にすぎない。

 商品 あなたの好きなレシピを試すことから始めよう。味と香りのほかに、品質を一定させることが必要になるだろう。あなたの商品が他の商品よりも優れている点をはっきりさせよう。自家栽培の材料を使っているのか、一家秘伝のレシピなのか、アレルギーや食物過敏症の人向けにまかなうのか、特色を強調しておこう。

 あなたの地域の自家製フード法は、ビン詰め商品のラベルの表示内容を明記しているだろう。材料のリスト(分量の多い順に)と製造加工日に加え、あなたの名前と連絡先、更に「ホームキッチンで製造」に類似した記載が多くの州で必要とされている。いつも、商品の安全性を確保でき、思わず手にとってしまうような魅力ある包装を選ぶこと。覚えておこう。見た目で食べたいと思うかどうかが決まるのだ。

 価格 価格付けには、商品の競争力、市場価値、材料と手間の両方を加味したコスト計算が検討され得るだろう。多くの場合、価格はこの3つの視点を併せて決定される。

 場所 あなたの州の自家製フード法に明記されている販売場所には、大抵、ファーマーズマーケットや、地域のイベント、直接客に販売できる他の場所がある。間接的な販売や、卸売りが認められるのは、限られた州でしかない。

 販売促進活動 あなたが売り込もうとするマーケットは、潜在的な客層でもある。商品を売り込み、購入してもらい、満足してもらおうとする客の集まりだ。マーケットは、年齢もしくは地理的要素のような実際の人口統計、また、考え方、信条や価値観と言った心理的要素によって特徴づけられる。あなたの商品は、より大きな規模の一般マーケットの中では市場のすき間を埋めるものになるだろう。だから、最大限、目に見える形であなたの商品が市場のどこのすき間を埋めるものなのか、特徴を明確に打ち出すことが必要だ。

 販売促進活動のために預金口座を空にする必要はない。あなたが持っているスキルによって、コンピューターを満足に使えるスキル、時間とお金があるのなら、多くの無料(もしくはほとんど無料に近い)販売促進手段を使うことができる。多くの自家製フードビジネスでは、商品を広めるために速やかに魅力的なウェブサイトを立ち上げる。あなたも、Wix, WeeblyやWordPressを使って無料でウェブサイトを作ることができる。ソーシャルメディアも潜在的な客層に売り込み、繋がるためのお金のかからない方法だ。

 人、提携、目的  客による紹介や口コミは、最も効果的な販売促進になる。これが多くの食品業者が「80対20ルール」に倣う理由だ。成功した企業の数々が認めている。80%のビジネスチャンスは、その企業が探し当て、満足するサービスを提供し、捉えて離さない20%の客が連れてくるのだ。

 提携を強化することもできるだろう。特に、似たような理念をもった事業体と繋がれるのなら尚更だ。例えば、焼きたてパンを売るなら同じ地域市場で活動しているジャムメーカーと提携する。その逆もしかりだ。提携は、売上を押し上げ、客の満足度を維持するために大いに役立つ。

 最後に、商品に対するあなたの情熱を、あなたが言うこと為すこと全てに散りばめよう。あなたの目的意識、すなわち商品を通して成し遂げたいことは、商品にかける思いを語る際になくてはならないものだ。その話に心惹かれた客が、お気に入りの食べ物に出会うきっかけにもなるだろう。

 ビジネスを始めるために必要なものは、おそらく今台所にあるはず。客に大評判の商品をすでに手中にしていることだってありそうだ。自家製フードムーブメントに加わることは、新しい収入源を確保するための楽しめる手段以上の意味がある。地域の地産地消活動を盛り上げることにもなるだろう。何よりもまず、自家製フード法のおかげだ。ラベルの「採れたて」「ホームメード」の言葉が、まさにそのものを表すようにできているのだから。

 

自家製フードビジネス成功例「Happy Tomato」

Happy Tomatoのラベルにあるシンプルなうたい文句、「違いを作るのはソース」。2012年、オーナーのリズ・ジェイムズ (Liz James) は、自宅を拠点にした食品ビジネスを始めた。シンプルで、手早く、健康な食事で家族が夕食を共にして繋がることを助けるビジネスだ。

 リズは、幸運にもバージニア州に住んでいた。同州には融通の利く、中小規模企業のための自家製フード法がある。「自家製食品加工者 (home food processor)」という資格も設けており、家での料理にも商業活動と同じような機能を持たせることを可能にしている。この資格取得には多くの手順、調査、手数料がかかるが、リズは、これによって比較的早く効率的に卸売りという目標を達成することができた。

 リズの話は、地域資源と支援が新しい会社の成功にどれだけ深く作用するかという実例だ。「文句なく、地域のサポートがなかったら今日私はここにはいなかったわ。」とリズは言う。様々な非営利団体が、経営計画ワークショップや、販売促進の助言を提供した。2,500ドルの「Kiva Zip」ローンは、資金の一部を支えた。このローンによって、リズはビン詰めや料理用具、スープ鍋を温めるための適当なガスレンジの購入にあてた。「Kiva Zip」は「Kiva (www.Kiva.org) 」のプロジェクト。一般市民が共同で貸主となり、借主に対し、ウェブを通じて少額貸付をする。

 リズがファーマーズマーケットで直販した一方、地域のWhole Foods Market【アメリカのスーパーマーケットチェーン】を含めた地元の小売店への販売も同時に行い、地元での卸売りビジネスも構築した。2014年までには、業態を卸売りに特化して、販売促進努力を店内でのデモンストレーションと試食に絞った。「この仕事をしていて一番わくわくするのは店内での試食提供をするとき。ましてや買い物客が私のソース瓶を手にしてレジに行こうとしたときなんてたまらないわ。」とリズは言う。

 卸売りの得意先のおかげで、Happy Tomatoはリズの目標である、一週間に135から150ケース(1ケース12個入り)の製造に迫る勢いだ。それだけの製造数があれば、製造設備を増やし、更に人を雇えるようになる。リズは、Happy Tomatoを起業してから幾つかのパートタイムをしていたが、利益を伸ばすにつれて少しずつパートの時間を減らしている。「人生で初めて本当にしたいと思うことをしながらお金を稼いでいるの。昔のように再び家族がみんなで夕食の食卓を囲む理由と方法を提供することよ。」とリズは言う。「一日の終わりのこの満足感。これに勝るものはないわ」。

 

リサ・キビリスト (Lisa Kivirist)とジョン・イバンコ (John Ivanko)は、Homemade for SaleFarmstead ChefRural RenaissanceECOpreneuringの共著者。自家製フード企業を経営し、ウィスコンシン州ブラウンタウンにある受賞した、太陽光・風力発電の宿 Inn Serendipity Bed & Breakfastの共同オーナー。

 

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マザーアースニューズ

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Run a Cottage Food Business from Your Own Kitchen

By John Ivanko 

February/March 2016