自然は本当に私たちを幸せにする

科学的研究は、自然の中で過ごした時間は私たちの脳と体を活性化するという強力な証拠を示している。

西洋社会が発展するにつれて、私たちは、技術の追求と人工的な創造に大きな重要性を置き、グレートアウトドアから退避してきている。積み重なる科学的証拠が明らかにしているのは、自らを自然から突き離すことで、危機レベルの環境問題から自身を遠ざけるだけでなく、重要なメンタルヘルスの手立てとの接触をも失い始めていることだ。緑の空間での時間を拒否することによって、私たちの遺産の本質的な部分を拒否する危険性がある。皮肉なことに、医療技術の進歩により、今私たちは真実をより明確に見ることができる。

 

緑を眺めることの科学

 インドのアーユルヴェーダ医学や伝統的な中国医学など様々な医療システムにおけるヒーラーは、長い間自然の重要性を提唱してきた。実際、多くの文化において、医学の一形態と見なされている。しかし、木々や花が心理的に良い影響を与えられるという概念は、科学的な方法で実験されないままで、1979年に行動科学者ロジャー・S・ウルリッヒ (Roger S. Ulrich) が、ストレスのある学生について自然の風景の精神的影響を実験した。学生は様々な環境風景を見た後、心理テストで精神状態や態度の違いが示された。自然の風景は、愛情、遊び心、親しみやすさ、高揚感のポジティブな感情を増加させた。一方、都会の風景が、学生に著しく呼び起こしたある感情とは、悲しみだった。自然を眺めると、怒りや攻撃的感情を軽減する傾向があり、都市の風景では、これらの感情を増加する傾向にあった。

 調査結果に後押しされて、ウルリッヒは、ストレスのない健康な成人の脳の活動を測定するために、同様の実験を準備した。彼のチームは、自然の景観を見ることは、セロトニン(神経系内で動作する化学物質)の生成の増加に関連していることを発見した。ほぼすべての抗うつ薬は、神経細胞の通信で使用するためにセロトニンの可用性を向上させることで動作するように考えられている。それ故、通称「幸せ物質」だ。

 森林浴という日本語の用語の意味は「森を浴びる」で、日本の研究者は、木々の間を歩いた被験者内のストレスホルモンのレベル低下を発見した。

追跡調査では、緑の空間は一種の視覚のバリウム(自然の風景はポジティブな思考を育て、ストレス後の怒りや攻撃性を下げる)として作用することを示した。

他の多くの現代の研究者は、ウルリッヒの先駆的な仕事をサポートするための客観的な試験を用いてきた:

 • ある研究では、テキサス州の住宅ケアセンターにおける高齢者が、2つの状況(一旦は菜園内で、そして再び屋内教室)で同じ精神活動に従事。被験者は菜園にいる間ストレスホルモンのコルチゾールを低いレベルで生成することが示された。

 • 室内に植物、特に花の咲く植物があると、感情的な映像によって誘発されるストレスからの回復を向上させることができ、脳波の動きがすぐに正常に戻ると、カンザス州立大学の研究者が発見した。

 • 台湾の研究グループは、田舎の農場の風景は、特に創造性に関わる右脳の高いアルファ波の動きと相関があることを報告した。森林風景や天然水の風景は、アルファ波の動きを促進し、心拍数を減少させる。逆に、筋肉の緊張の増加は、都市の風景と関連している。

 

森林を浴びる

今ある森林を維持する多くの理由の中で、精神的な側面というのは大きい。 1982年に、日本政府の林野庁は森林浴計画を始めた。日本では、Shinrin は森林を意味し、Yokuは「浴びること」を示す。広義では「全感覚で、森の雰囲気を取り込むこと」。1990年、千葉大学の宮崎良文博士は、屋久島(日本で最も崇められる森林のある場所)の美しい風景の中で森林浴の小さな研究調査を実施した。宮崎氏は、研究室の制御された環境で散歩をした人たちと比較して、森を歩いた後の被験者中のコルチゾールのレベルが低いことを発見した。

 それ以来、日本の大学や政府の研究者は、被験者が森林内で過ごす間の生理学的兆候を評価するためのプロジェクトを含め、詳細な調査を協働している。これらの研究では、森林環境で過ごすと、睡眠を改善し、精力と生き生きとした気持ちを向上させながら、精神的ストレス、うつ症状と敵意を減らすことができることを確認された。これらの主観的な変化は、数十近い研究報告の客観的な結果と一致していて、より低い血圧、脈拍数、コルチゾールのレベルは、木々や花々に囲まれて過ごした時間と伴っている。

 ストレスホルモンは、私たちの免疫で、特に抗ウイルスキラー細胞などの第一線の防御者の活動を損なう可能性がある。森林浴は、ストレスホルモン生成を低下させ、気分を高めることができるので、また、免疫系の強さにも影響を与えることは驚くべきことではない。

植物、痛みと病気

1984年に、ウルリッヒは、同じ病院で同じ胆嚢手術を受けた成人の記録を検証する、権威ある「サイエンス誌」で画期的な研究を発表した。患者間の唯一の主要な違いは、彼らが回復のために運び込まれた部屋だった。病院の一方の側の部屋には、小さな森が視野に広がる窓があり、反対側の部屋には赤レンガという根本的に異なる眺めをだった。結果は非常に劇的だった。屋外の眺めが森だった人は、かなり短い入院で、手術後の苦情が少なく、麻薬の代わりにアスピリンで、自身の痛みを抑えることができた。他の研究で、ウルリッヒの調査結果が確認されていて、以下のようなものがある。

 • ノルウェーの研究では、オフィス内やオフィスからの景観に植物があると、大幅に労働者が取る病気休暇が減ることが示された。

 • 日本の園芸学会誌に2008年に発表された研究では、鉢植えの植物で高校の教室を緑化すると、植物のない部屋に出席している学生と比較して、学校の保健室への訪問回数が低下することが示された。。。

 

自然と脳

 批評家は、自然の風景を見ながら気分が改善されたと報告した被験者は、単に研究者の期待に応えるよう正しいチェックボックスをマークしていたのだと言うかもしれない。真の客観的試験は、脳内に入り込み、自然に注意を向けている間に脳を分析する能力だろう。

 1990年代に、カリフォルニア州の研究者は、機能的磁気共鳴装置(fMRI:洗練された脳イメージング技術)を用いることにより、その能力を獲得した。彼らの発見は、見た目に美しい自然の景色が、オピオイド受容体に富んだ、脳の特定部を興奮させることを示した。これらの受容体は、ドーパミン報酬系内の脳細胞に接続し、ポジティブな態度に必要なモチベーションを推進する力を運ぶ。

 これは驚くべき発見で、自然が脳のためのモルヒネの小さなドロップのようであることを明らかにした。痛みの抑制が一番知られている、オピオイド受容体だが、はるかに多くのことを行う。これらの受容体が活性化されると、人は自身にストレスがあると認識する可能性が低くなり、感情的な結びつきを作る可能性が高まり、ネガティブな記憶にこだわることが少なくなる傾向がある。

 二つの別々の研究では、韓国の研究者は、被験者が、都市や自然を主体とした景色を見る間に、脳の活性化パターンを評価するために画像を使用した。最初の研究では、都市の風景を見ることで、扁桃体(脳の中心、ほとんどの場合、恐怖の感情に関連付けられている)における顕著な活性がもたらされた。このような中心の過活動は、衝動性と不安に関連付けられている。さらに、慢性ストレスとコルチゾールは、扁桃体の活動を促進し、この過活動状態では、選択的にネガティブな出来事や経験の記憶を優先させる傾向がある。これは悪循環になる。世界はもう少し恐怖と憂鬱に見え、多くを占める記憶で真であると確認される。扁桃体が定期的に高めらている場合、脳の恐怖を焚きつける。良いお知らせは、思考プロセスを認識し、恐怖の量を落とせる環境に身を置くことにより、コントロールを取り戻すことができるということだ。

 ストレス緩衝効果を示す大集団の研究は、気分とストレスを主観的や客観的な評価を用いた研究の上に積み重なるもので、そしてこの情報は、逆に、病院のデータや脳イメージング研究の上に積み重なると、自然の影響力の様子が現れる 。それから、日本からの10数件の森林浴研究を加えると、自然の中で過ごす時間は人間の健康や生理学に何の結果ももたらさないと支持することが不可能になる。これらの科学的調査の結果は、自然保護の重要性に私たち全員を目覚めさせるはずだ。個人や国、それから、明らかに惑星の健康は、自然との接触が人間の健康に不可欠だと認識するかどうかによる。

木の正しい得点

研究では、喜びと幸福は木の密度が増加するにつれて上昇することを示されている。木が大きく、密度が高いほど、風景の美しさの得点が良くなる(ある程度までは)。木がきつく密集している(小道が過度に狭く薄暗い)場合は、風景は不吉な予感となり恐怖を引き起こす。

 木材を壁に添わせることは、やり過ぎかもしれない。日本の研究者は、床や壁の木材の適量について最も良いのは、表面積の30〜40%あたりであることを見出した。すべてを取り外し、部屋全体をパネル張りにすると、ストレスは実際に増える。

 

自然と健康

マザーアースニューズ

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Seeing Green: The Importance of Nature for Our Health

By Eva M. Selhub and Alan C. Logan 

December 2015/January 2016