水危機を解決する画期的手段

石油戦争は敬遠できたとしても、「水戦争」は避けられない。

米国のメディア会社 Green Builder Media 代表のロン・ジョーンズ (Ron Jones) が最近、こんな不吉な予言をしている。地球上に厳しい干ばつがこのまま広がり続けた場合、ジョーンズが警告する未来は、私たちの想像を超える速さで、さらに深刻な形で現実となる可能性がある、という。米国で今まさに水危機に直面しているのが、カリフォルニア州、テキサス州、アリゾナ州、ジョージア州。2014年3月現在、アリゾナ州では、史上4番目の暖冬の影響で、各地で水不足に。テキサス州では貯水レベルが過去25年間で最低水準に低下。ジョージア州では、水不足記録を数年にわたって更新。カリフォルニア州では、深刻な干ばつの結果、アメリカが誇る穀倉地帯が広範囲にわたって作付できなくなったほか、飲料水の確保が危うくなるコミュニティが各地で見られた。

 幸いこの問題は、技術革新の世界で注目されているテーマだ。数々の新興企業が、水危機を緩和するための技術開発に取り組んでいます。持続可能な家づくりを目指す建築現場では、家庭の水消費量を削減できる仕組みを住宅に取り入れ始めている。

  カリフォルニア州フレズノ郡にある脱塩装置製造会社の WaterFX では、太陽熱技術を使って、塩分等の汚染物質を含むかんがい水が地表に流れ出たものを真水に変えています。試験段階では、同社の顧客 (ほとんどが地域の農業従事者) に1日あたり (1万4千ガロン (約53㎥) の水を供給しており、これを数年以内に、2百万ガロン (約7,600㎥ ) に増やす計画だ。 WaterFX によると、貯水槽の水のコスト(エーカー・フィートあたり約300ドル)なのに対して、この技術を使うと450ドルと現在は割高。ただ、気候変動や干ばつで貯水が減り続けると水道料金が上がるので、この価格差は縮まる可能性があるそうだ。

  水の浄化技術の向上はもちろんだが、各家庭での節水も、水の有効利用という目標を達成する上で重要だ。住宅メーカーの KB Home は最近、アメリカ国内でも特に水不足が深刻だったカリフォルニア州ランカスターで、「ダブル・ゼロハウス (Double ZeroHouse)」 の第1棟目を完成させた。「ダブル・ゼロハウス」は、水と光熱エネルギーの両面から効率性を追求。使った水を再利用し、超省エネ家電で節水して、エネルギー消費を実質ゼロ (将来的には電気料金タダ) にする住宅だ。

  KB Home の試算によれば、この仕組みを使うと、一般家庭で年間15万ガロン (約57㎥) 節水できる。平均で約70% の削減。「ダブル・ゼロハウス」の良く出来た水再利用システムでは、シンク、バスタブ、シャワー、洗濯機などで使った温かい水が、熱回収装置に集められる。ここで熱が取り込まれ、上水を給湯用に加温。この熱交換で約30% 節約になる。なお、使った水は最終的に回収タンクにストックし、庭など、外まわりの水やり用となる。

  現在のところ、「ダブル・ゼロハウス」で紹介されている水再利用システムは、新築住宅での設置費用が最低でも5,000ドル。KB Homeは、市場で受け入れられるには1,500~2,000 ドルの値下げは必要で、各種奨励制度、税金の還付に加え、需要増加の後押しがあれば達成可能、と見ている。

  水のコストが膨らむ中、エネルギーと水の両方を効率的に利用するこの種の設備も、元が取れる可能性が出てきた。インフラの荒廃、深刻な干ばつ、気候変動という三つの不運が重なり、水道料金はここ数年急上昇中。だから、独創的な省エネ法は、水危機対策として極めて重要なだけでなく、各家庭の月々の光熱費のやり繰りのために最も重要な事項だ。

 

気づける情報、ひらめく知恵、たのしい仲間、きっと見つかる。


購読登録は、こちらからどうぞ。


Innovative Solutions to Our Water Crisis

By Sara Gutterman 

February/March 2015