昆虫や風がいかに作物に授粉するか学び、賢く育ててバッチリ収穫できるようになろう。
人間の場合、動けない中で生殖を行うことは考えられないが、植物の授粉においてそれは根本的な課題だ。種子を作るには、離れたところにある雄性細胞と雌性細胞の再生細胞(「配偶子」と呼ばれる)が合体しなければならない。この場合、別々の花からの再生細胞が合体することも多く、時には別種の植物の再生細胞同士ということもある。しかし植物は、自ら動いて奇跡を起こすことは不可能なので、代わりに周りの資源に頼っている。風、昆虫、鳥、そして時には人間の手を借りることもある。
植物の授粉を理解することの重要性は、以前よりも高まっている。というのも現在、単一栽培で使用される農薬の普及により、土地固有の花粉媒介者が急激に減少しているからだ。この非持続的な実情を一夜にして変えることは難しそうだが、自宅の裏庭に少々手を加えることで、花粉媒介者の数を増やし、ひいては自分たちの収穫も増やすことができる。授粉を成功させる多くの要因は、菜園家の管理にかかっている。特定の配置で植え、有機栽培を行い、野生の花粉媒介者に手を差し伸べ、必要に応じ積極的に人間の手で授粉を媒介する、といったことが考えられる。熟してから食べられる、種を持つ果実(ベリー、コーン、キュウリ、トマト、木になる果実)では、授粉の成功によるメリットはとても大きい。
植物によくあるように、食用作物は高度な再生システムを備えており、授粉という賭けに挑む準備ができている。繊細なめしべは花の中に隠され、自然現象から守られている。植物の花粉は、敵の待ち受ける外界での冒険に立ち向かう。蝋のコーティングや、エネルギーのための蓄積炭水化物まで備えた雄の花粉は、素早く活路を見つけて雌の受容器に入らなければならない。入り込んだら、花粉管を伸ばして子房につなぐ。こうして受精した種子が形成する。
自家授粉植物
豆、エンドウ豆、トマトは、「自家授粉」を行う種の例だ。つまり授粉を成功させるための必需品は、それぞれの花の中にある。必要な場所へ向けて花粉をまき散らすために必要なのは、タイミング良くかすかに揺れ動くことだ。自然界では、風や羽ばたく昆虫がそれを助けてくれる。豆、エンドウ豆、トマトが開花しても実をつけない場合は、授粉を行う昆虫が来なかったからではなく、天候のせいであることが多い。よく寒さや暑さが花の異常をもたらし、授粉の失敗につながる。天候による作物の不作を克服するため、寒さや暑さに耐性があるとされるものを何種類か植えると良い。トマトなら、「グレイシャー(Glacier)」や「トロピック(Tropic)」だ。これらは、繊細な種(例えば「モーゲイジ・リフター(Mortgage Lifter)」等)に影響を与えてほとんどの花を落としてしまうような環境下でも、実がなりやすい。
虫媒受粉
実を産するために、およそ35%の食用作物は、ミツバチ、スズメバチ、チョウ、ハエ、カブトムシなどの花粉媒介昆虫に何度も訪れてもらう必要がある。それらの昆虫は花の中に這い込み、おしべの葯からめしべの柱頭へ花粉を移動させる。そして他の花に移り、また同じことをする。虫媒受粉作物の花粉は、運ばれやすいように粘り気がある。また多くの植物は、花粉媒介者のサービスを受けようと、色とりどりの花でアピールしている。視覚に訴え、甘い蜜や栄養豊富な花粉、時には安全な寝床 で誘い込むのだ。適当な事例を挙げると:雄のスカッシュ ビーは、日暮れ時にオレンジ色のスカッシュフラワーの 中に身を隠す。夜になると、花は眠っているハ チを包むように閉じ、侵入者からハチを守る。 花の中では、ハチの動きによって花粉が花中 に、そしてハチの体中にしっかりまき散らさ れる。朝になれば、ハチはしっかり休息をと れて、スカッシュフラワーは首尾よく受粉で きているというわけだ。 ほとんどの花は、授粉を待つ多くの(時に は何百もの)子房を持っている。そのため、 通常受粉は2、3日かけて行われる。種をもつ 果物や野菜では、種が受粉した子房というこ とになる。イチゴの小さな種はすべて、花粉 媒介昆虫が16~25回訪れた結果だ。対照的 に、何百という成熟した種を持つスイカを生 産するには、半分ほどの訪問回数で事足りる。 これは花の形状が異なるためだ。 私たちは最近、MENのFacebookコミュニティで、各自の庭で花粉媒介者の活動をお膳立てするよう呼びかけた。ミツバチの巣(米国の最北の 地では、寒さに強いれんがの巣箱)を持つ人たちは、花 粉媒介が著しく改善したと言っている。また、ルリジサ、 イヌハッカやその他ハチが好む花を植えてみた菜園家は庭で多くの羽音がしたと報告している。し かしながら驚くことに、長期間植物を育て ている様々な州の多くの人たちは、年々ハ チや他の花粉媒介者の姿が見えなくなって いるという報告をしている。収穫を得るた め、近年ではカボチャの授粉を手で行わざるを得ないと話す人もいる。土地固有の花粉媒介者を活性化させる具体的な方法は、「在来種のハチをオーガニッ ク自家菜園へひきつける http://goo.gl/VvzPJT 」をご参照。もっとも効果的な戦略は、シンプルだ:あなたの庭に合う、蜜を作る花をできるだけたくさん育てること。花粉媒介者たちは、甘く栄養豊富な蜜のおもてなしを拒否できないはずだから。。。
和訳全文は12月発行。
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Plant Pollination Primer for Backyard Gardeners
October/November 2014
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