収穫時期を限定しないようにしましょう。地域にかかわらず、ここで述べる13の寒さに強い作物が育てられます。四季を通じて栽培している菜園家の助言を聞いてみましょう。
寒い時期に食べる家庭菜園の野菜としてよく思い浮かぶのは、地下室に貯蔵するジャガイモなどの主要穀物や、低温で乾燥した場所に置いておく冬かぼちゃのような野菜だ。しかし今、家庭で野菜を作る人の多くが、冬の間中、新鮮野菜を収穫することに喜びを見出している。寒さに負けずおいしく育ったとれたての旬野菜が手に入るからだ。バーモント州ウォルコットにあるハイ・モーウィング・シーズ(High Mowing Seeds) のジョディ・ルー・スミス(Jodi Lew-Smith )によれば、種の買い付け時期は従来1月から3月と決まっていた。しかし今は秋植え用に6月から8月、そして9月に入ってまで買う人が急増しているという。畑から採ってきたばかりの野菜を食すことはただそれだけで大きな喜びであり、気温や降雪の可能性だけであきらるわけにはいかないのだ。
とはいえ、1月にトマトを育てるというわけではない。果菜類が育つには幾日も続く好天と温暖な条件が必要だ。そのおかげで実はや柔らかくなり、色づき、完熟して美味しくなる。冬は、葉物、茎野菜、根菜が中心で、気温が下がり、日が短くなるにつれて成熟してくる。更に冬野菜は気温が下がれば甘みを増す。冬収穫の人参やほうれん草を食べたことがあるなら、冬場のガーデニングがもたらす醍醐味は既に経験済みだろう。
私は夫のエリオット・コールマン(Eliot Coleman)と伴に、メイン州ハーバーサイドで四季農場(Four Season Farm) を経営しているが、ビジネスの鍵は冬場の生産だ。過去20年にわたり、様々なデザインのビニールハウスや穀物保護の方法を試し、データを集めてきた。また、多くの穀物を ― その複数の品種も ― テストし、冬にどれが最もよく育つかを調べてきた。
気候を考慮すべきか?
では、その土地の気候に見合った野菜を作るべきだろうか?その必要はない。南部の州では冬は広範囲にわたる作物生産に向いているが、北部の地域でも、寒さ対策をとれば、同じ作物の生産が可能であり、生産時期を拡大することが可能だ。 例えば、冷床のシンプルな温室、簡易ビニールハウス、また 1、2層のべたがけ資材【floating row cover:不織布など】(よくリーメイ(Reemay)と呼ばれる)などを使用する。これら生産時期を延ばす方法をとれば、特に夜間の地熱を取り込み、冷えと風による乾燥を防ぐことができるのだ。
アメリカ国内のどの緯度でも幅広い種類の冬野菜を育てるのに十分な日照が得られる。マザーアースニューズの最近の調査によれば、オンタリオやウィスコンシンなど、気候が障壁となそうな地域でも冬に野菜を作る人が急増している。こうした地域では作付の簡単な変更により、テキサスや南カリフォルニアといった冬場の生産が当たり前の多くの地域同様、年中戸外の畑で作物ができる。(リアル・ワールド・ガーデニング・チップス(Real-World Gardening Tips)のホームページでアンケート参加者のアドバイスを閲覧可能)。北東部では8月ごろから始まる時期を「2番目の春」と呼んでいるが、より暖かい南部の地域ではそれより遅い10月ごろでも作物は発芽し成熟するのに十分な程、気温は高い。
商業的にもまた冬の作付は上り調子だ。というのも、短い作付期間で一年中収入を得られるからだ。しかし更に割がいいのは家庭菜園だ。競争市場ではないため、均一で見ためが申し分ない作物を期限内に出荷する必要はないからだ。つまり、家庭で野菜を育てる場合、大規模生産する場合より、冬の作付のマイナス面をたやすく克服できるのだ。家庭規模での生産者は作付時期を試行錯誤できるし、たとえ狭くとも空いているスペースがあれば新たな作物を試してみることもできる。また、多くの品種を試しどれが一番生育がいいか、味はどうかを自分たち自身のために調べることができる。後に挙げる7つの品種は私が実際試行錯誤を繰り返して得たお薦めの作物だ。
葉物を食べよう
冬野菜の作物と品種を選ぶ際、どれが寒さに強いかが観点になる一方、作物の生育習性と時期はまた何を選択するかにも影響を及ぼす。たとえばほうれん草は耐寒性の越冬一年草で、秋に発芽し晩秋から冬にかけて成長し、春に種を付ける。次々と新しい葉を付けるので、冬中収穫することができる。一方、耐寒性の芽キャベツやブロッコリはある時期になると生育が止まる。(葉は捨ててはいけないおまけ。ぜひご賞味を)。トライしてほしい最高の冬の葉物をあげておこう。
ほうれん草: これは冬の葉物の中で個人的には最高位にランクインする。晩夏に植え付け、1層の被覆資材のもと冷床の温室でメイン州沿岸部の冬を越す。春になり日照時間が伸びることが抽薹する(種を付ける)最大の要因だ。手に入る品種の中でも「スペース(Space)」が一番生育がよい。寒さに大変強く、春抽薹は遅い。ルー・スミスは自身の試作をとおして、「ジャイアント・ウインター(Giant Winter)」に軍配をあげている。ワシントンの著名な種苗業者、オーガニック・シーズ・アライアンス(Organic Seed Alliance)のジョン・ナヴァツィオ(John Navazio)は「ウィンター・ブルームスデール(Winter Bloomsdale)」という品種を好み、現在「アバンダント・ブルームスデール(Abundant Bloomsdale)」という名の高級種を開発している。
レタス: ほうれん草ほど霜には強くはないが、冷涼な気候を好み、最も寒い気候の地域でも春と秋には素晴らしい生産を誇る。リーフレタス、特にベビーリーフのサイズ(密集して植え、8cmで摘み取る)のものは玉レタスより耐寒性では優れる上、複数回収穫を楽しめる。耐寒性が高いのは「レッド・オーク・リーフ(Red Oak Leaf)」や「ウィンター・ディスティニー(Winter Density)」や「ルージュ・ド・ビエール(Rouge d’Hiver)」などの品種だ。メイン州のジョニーズ・セレクティッド・シーズ(Johnny’s Selected Seeds)の「ファイブ・スター・レタス・ミックス(Five Star’ lettuce mix)」はカビに強い。これはよりじめじめした湿度の高い温室内で育てる場合、重要な特性だ。
ルッコラ: カット・アンド・カムア・ゲイン【cut-and-come-again:育った菜を根から数センチのところでカットして収穫し、数回収穫を楽しむ方法】を楽しめる野菜として人気上昇中。程よい苦みがあるルッコラは寒い日の食卓にとってスパイスとなる。この時期のルッコラは、ハムシがつきにくく、薹立ちせず、夏に強くなる強い苦みもない。 「アストロ(Astro)」は大変生育がよい。また「シルベッタ(Sylvetta,)」はカンザスやバージニアなどの北部地域でも多年性として育ち、比較的低い気温でもよく育つ。
アジアン野菜: 我が四季農場では、あらゆるアジアの野菜を試してみた。たいていはアブラナ科のものだが、15m内に被覆資材をかけて植え付け、温室は温めないでおいた。もっとも耐寒性が高いのはタアサイだ。葉は小さく深緑のスプーン型で香りは優しく大きな房を形成する。強火でさっと炒めると絶品だがとても柔らかいのでサラダにも向く。丸いグリーンのラグ状に地面を這うようにして越冬する。外側の葉を収穫すれば、中心部で新しい葉が育つ。僅差で次に続くのは「チンゲインサイ」だ。小白菜の一種でまっすぐな葉はぱりぱりして底部は白い。私が好きなのは、軽い触感のミズナ、茎が太くピリッとした辛みのあるカラシナ、それに青リンゴの色合いで葉先が広がった白菜、「東京べか菜」だ。驚くべきことにアジアン野菜は寒さに強いと同時に熱にも強い。抽薹した後も葉はおいしく、茎はサクサクで、花まで食べられる、と秀逸だ。
フダンソウ(Chard、不断草): 1年中栽培が可能で、レタスよりも暑さに強い。メイン州にある私の農園では、防寒対策なしで冬を乗り切ることもある。根だけを残して地表に出た部分は枯れ、春になるとまた成長を始める。冬栽培に向くもっとも寒さに強い品種は「アルゲンタータ(Algentata)」。
ケール(Kale): ヨーロッパのケール「ブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)」の中では、「ウィンターボー(Winterbor)」が極めて丈夫で寒さに強いが、「ラシネート(Lacinato)」など深緑色のタスカン・ケール(Tuscan Kale)に比べて味は落ちる。「イーブン・スター・スムース(Even’ Star Smooth)」という品種は-15度近い寒さにも耐え、葉は柔らく甘みがある。もっとも寒さに強いのはシベリア種(セイヨウアブラナ、学名B. napus)で、柔らかく、他品種よりも香りがマイルド。シベリア種のうち、オレゴン州の種苗業者「アダプティブ・シーズ(Adaptive Seeds)」が紹介する「トゥルー・シベリアン(True Siberian)」と「ウェスタン・フロント(Western Front)」は、冬の間を通して収穫できる。
マーシュ(Mache、ラムズレタス、コーンサラダ、野ヂシャ): デリケートで運搬に適さず、市場にほとんど出回らないので、菜園家のご褒美的な野菜だ。秋まきの一年草でどこでも育ち、秋の涼しさに誘われて芽を出す。冬野菜の中でもとくに寒さに強いが、成長は極めて遅い。葉はほんの7、8センチほどで収穫するのがベストで、再生はしない。しかしそうしたあれこれも気にならないだろう。というのも、マーシュの葉は他にはない珍しい形をしているからだ。まるで数滴のビネグレット【サラダのドレッシング】を注ぐためにデザインされたかのような、軽く湾曲したお椀型をしている。冬に成長するため、ビタミンも豊富。
クレイトニア(Claytonia): この大きな喜びを与えてくれる小さな作物は、知る人ぞ知る冬野菜の主役だ。北米原産で、別名を「マイナーズ・レタス」という。カリフォルニアのゴールドラッシュの日々に、坑夫(マイナー)たちに栄養を与えたのが由来だ。コイン大の丸い形で、水気の多い葉は柔らかく口当たりが良いのでサラダに向くが、繊細すぎて調理には向かない。秋まきの一年草で、霜害から守ってやれば、冬の間は収穫しても次から次へ伸びてくる。春になると、香りの良い小さな白い花を一面に咲かせる。
パセリ: ハーブの中でもっとも寒さに強いが、冬場は成長が鈍る。それでも、防寒対策なしで(ゾーン5にあたる北米中部地域でさえ)冬を越す場合もある。春に種をつける前に、青々としたみずみずしい房状の葉をつける。料理人は平面状の葉をしたパセリを好むが、もっとも耐霜性があるのは「フォレスト・グリーン(Forest Green)」などの縮れた品種。パセリは自然播種で自生する2年生植物のため、一か所に植えて付近一帯を荒らさずにおけば、翌年には新たな芽を出すのが見られる。
風味を添える根菜類
貯蔵用の根菜類を育てる場合も、すでに述べたような新鮮さを味わう冬野菜と注意点は同じだ。氷点下になる地域なら地中に放置し、必要なときに掘り出せばよい。ただしより寒さの厳しい地域でも、ジャガイモは別だ。(冬場、畑の隣に作物を貯蔵する方法については、「屋外根菜貯蔵庫(Outdoor Root Cellar)」を参照。)
ニンジン: バーモント州で、大量の雪のカバーに覆われただけで、冬を越したニンジンを見たことがある。ただ、いつもそれをあてにするわけにはいかない。沿岸地域のメイン州では、束ねていないバラの麦わらか干し草を敷き詰めた冷床【人工的に熱を加えず、太陽熱だけで保温する苗床】に植えるか、熱を入れていない温室で園芸カバーをかけておけば安心だ。7月後半から8月半ばまで複数回に分けて種を撒くが、より温暖な地域の読者からは、11月下旬頃に撒くという話も寄せられている。(ビーツも同時期に植え付けが可能だが、寒さにはあまり強くない。)霜を何度かやり過ごすと、冬ニンジンはキャンディのように甘くなる。強い香り成分が引っ込み、天然の糖(つまり天然の不凍剤)が前面に出てくるためだ。昼間の長さが10時間ほどに伸びる1月後半から2月になると、香りが弱まる。イチ押しの品種は「ナポリ(Napoli)」。
カブ: 私のお気に入りは、丸くて白い日本の「はくれい」という品種。温度を氷点より上に保てば、生食に適した甘く柔らかい実と、味の良い葉が得られる。「ホワイトエッグ(White Egg)」は南部で人気の貯蔵に適した品種だが、冬場ならどこでも育つ。イタリア原産の「コレット・ビオラ(Colletto Viola)」は実の上側がピンク色で、白い部分は甘く歯ごたえが良い。
ニラ: 冬野菜のサラダやスープに取り入れると、豊かな玉ねぎのような風味が加わる。ヨーロッパの家庭ではもっとも一般的に栽培されている冬野菜ではないだろうか。冬の品種で人気があるのは「レクストン(Lexton)」。ニラを冬に収穫するには、早春に植える必要がある。
ラディッシュ: この端正な野菜には霜対策が必要だが、その一方で涼しい気候を好む。私たちは、フレンチ・ブレックファスト(二十日大根)種の「ティント(Tinto)」と「アビニヨン(D’ Avignon)」の栽培に成功した。ナバジオは、香りがよい「チェリーベル(Cherry Bell)」を推している。
冬栽培に挑戦
冬の野菜作りは、驚くほど簡単だ。11 月半ばから 2 月半 ばまでは米国のほとんどの地域で雑草が少なく、日差しが 弱く水分が蒸発しにくいため水やりの回数も少なくて済み、 のんびりペースで作業ができる。自分にはどんな作物が向 いているのか、いろいろ試してみよう。いずれの場合も必要 最低限の装備でスタートし、(あまりの手軽さに驚く作物も あるだろう)それから方向性を決めて調整して行くのが良い。 空きスペースがあれば新しい作物を植え、頃合いを見計らいながら、自分にとって最適なリズムを探そう。多くの収穫 が得られるよう、堆肥はたくさん用意すること。また、恐れる べきは寒さよりも暑さだということを覚えておこう。晴れた日 には、冷床・簡易トンネル・温室の水はけをよくし、熱をこも らせて収穫前に野菜が調理されてしまうことのないようにしよう。
進化し続けている分野なので、新種の登場にもアンテナ を張っておこう。種苗業者の「ジョニーズ・セレクテッド・シー ズ(Johnny’s Selected Seeds)」、「ハイ・モーウィング・シー ズ(High Mowing Seeds)」、「テリトリアル・シード・ Co.(Territorial Seed Co.)」では素晴らしい品種を数多く取 り扱っている。米国でもっとも期待できる育種家たちもいて、 冬野菜の改良に取り組んでいるが、彼らは(人工的で)偏 狭な最新の品種改良は行なわないようにしている。ナヴァ ツィオが指摘しているように、品種改良を行なうことで、毎 年の気候の変化に対処しやすくなる。育種家フランク・モー トン(Frank Morton)の素晴らしい業績は、彼のカタログ「野 生の種(Wild Garden Seed)」で見ることができる。有機農 家ブレット・グロースガル(Brett Grohsgal)が作物をメリー ランド州の寒い屋外にさらすことで作った素晴らしい種は、 「FEDCO の種(Fedco Seeds)」「南部の野で種を育てる (Southern Exposure Seed Exchange)」のカタログで見られ る。「アップライジング・シーズ(Uprising Seeds)」「アダプティ ブ・シーズ(Adaptive Seeds)」「シスキュー・シーズ (Siskiyou Seeds)」は小規模ながら注目すべき革新的な 種苗業者だ。そしてもっとも大胆な試みは、自分の畑でもっ ともよく育った株の種を毎年とっておき、その畑の冬の環境 にぴったりの作物を作ることだ。(様々な野菜の採種につい ては、「作物一覧(www.MotherEarthNews.com/Crops-At- A-Glance)」にアドバイスが載っている。)あなたも冬栽培 のパイオニアになれるかもしれない。
バーバラ・ダムロッシュは、有機園芸の国内第一人者の一人。 栽培期間を延ばす器具を自分たちの菜園で何年も試した後、 夫のエリオット・コールマンと共に、廉価で、組立てがカンタンな クイック・フープのしくみ(36 ページに掲載)を開発した。
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