原子力発電の将来は疑わしい

Photo Courtesy Dominion
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最近、ウィスコンシン州カールトンにあるKewaunee原子力発電所の所有者は、発電所内にひとつしかない原子炉2013年に停止すると発表した。なぜなのか?39年になるアメリカ合衆国最初の原子炉は1998年から廃炉準備に入っていたが、資金不足になり買手が見つからないのだ。

 これが原子力発電の将来を予告するというのは早計だが、2つの事は確かだ。原子力ルネッサンスの誇大広告がしぼんでしまったこと。そして発電所の所有者は重大かつ高価な安全上の問題に対処しなければならなくなったことだ。これは2011年の福島の事故で強まった。

 Kewauneeを入れて現在104基の稼働中の原発がアメリカにはあるが、数年前までは原発推進者や政府官僚は100基の新設を要求していた。今では原子力産業は次の10年間で4から5基くらいしか建設しないようだ。2基は建設中でジョージア州ウェインスボロ近くのVogtle発電所内にあり、あとの2

基はサウス・カロライナ州フェアフィールド郡のSummer発電所で建設予定だ。両プロジェクトは数か月(数年ではなく)の遅延で数億ドルという予算超過に陥っている。

 では、原子力産業の復活を妨げるものは何だろうか?スタンダード&プアーズ信用格付機関によると、不景気、電力需要の落込み、安い天然ガスだ。もうひとつの要因は建設コストの急激な上昇である。原発の新設にかかるコストはこの十年間で3倍以上になっており、Wall Street は原子力産業の貧しい財務実績ゆえに、連邦融資保証なしでは融資したがらない。

 ジョージア州の2つの新しい原子炉は、控えめに抑えて総額140億ドルだが、83.3億ドルの連邦融資保証(2005年のエネルギー政策のおかげで原子力産業へは185億ドルの借入保証がある)なしではうまくスタートしないだろう。一方、Summer発電所の所有者は彼らのプロジェクトの試算105億ドルのために、エネルギー政策の残り100億ドルを当てにしているが、議会の様子では更なる借入保証は難しいだろう。

 さらに、安全面での懸念がある。20128月、原子力規制委員会(NRC)はライセンスの更新を延期し、核廃棄物の保管場所が決まるまで新たな稼働ライセンスの発行を停止した。暫定もしくは恒久の使用済み核燃料(数10万年も危険な放射能を出し続ける)の保管庫がない状況では、原発の所有者は敷地内で、過密状態であまり保護されていない冷却プールの中で保持することになる。すべての核廃棄物の約75%がそのような冷却プールの中にある。残りは乾式貯蔵され、こちらはより安全で、保管場所が決まれば運ぶことができる。

 では、なぜ、原発所有者は核廃棄物を初期冷却の段階で早急に乾式貯蔵しないのか。彼らはお金を使いたくないし、NRCも彼らにそれを求めないからだ。その上、Union of Concerned Scientists【 憂慮する科学者同盟 】によれば、NRCは火災防止法(1980年制定、2004年改正)の遵守を強く求めず、現在47基の原子炉(稼働中の約半分)がどちらの法律にも従っていないのだ。これはささいな違反ではない。火災は原子炉の炉心に大きな危険をもたらす。

 そして最後に、34基の原子炉が洪水の危険に晒されている。NRCスタッフの報告によると、上流のダムが破壊して発電所の防御の設計を上回る場合、洪水は原発の防御壁を超え、安全装置が稼働できなくなり、放射性物質の拡散が起こりうる。

 NRCは福島の事故後も安全性の問題に対処しようとせず、少なくともあと5年はかかるとし、多くの重要な問題に目をつぶっている。約12千万人のアメリカ市民が原子炉の80Km圏内に住んで危険に晒されているが、古い原発の多くの所有者はこれらの施設を管理する気はないようだ。

 

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The Future of Nuclear Power in Question

By Elliott Negin 

April/May 2013