世界で最も広く消費されている発酵乳製品、ヨーグルトの健康効果についてはすでに聞いたことがあるだろう。おいしいヨーグルトには、プロテインとカルシウムの最強コンビをはじめとする貴重な栄養素が凝縮されている。軽度の乳糖不耐症の人でもヨーグルトは簡単に消化できる場合がある。ヨーグルトの生きた培養菌(通常はLactobacillus bulgaricus (ラクトバチルス ブルガリカス)とStreptococcus thermophilus (ストレプトコッカス サーモフィラス)の組み合わせ)が、望ましくないバクテリアの消化器官への侵入を防ぐ可能性があることはよく知られている。
実際に、ブルガリアの農民の寿命が並外れて長いのは、彼らの食生活でヨーグルトが大きな位置を占めているからだと推測する人もいる。世界のさまざまな地域において、ヨーグルトはパンや水と同じくらい重要な必需食品であり、炭酸入りの「ヨーグルトソーダ」から、強い風味のチーズ、味わい深いソースまで、様々な食品に変化する。この発酵乳製品にまつわる料理の伝統が深く浸透していることから、作家のアン・メンデルソン (Anne Mendelson) は、その著書「Milk:The Surprising Story of Milk Through the Ages(ミルク:古代からのミルクに関する驚くべき話)」の中で、ハンガリー東部から中国西部一帯にかけての、ヨーグルトを愛好する地域のことを「ヨーギスタン」(ヨーグルトの国)と呼んだ。
自家製ヨーグルトは市販のヨーグルトよりずっと良い。普通は市販のヨーグルトよりも安上がりで、ほとんどの市販のヨーグルトに添加されている保存料、安定剤、増量剤、甘味料が含まれていない。自家製のヨーグルトには、(牛、山羊、羊、水牛の)最高品質のミルクを使うことができる。国内で名の通った商品よりも味の良い、地元産のホルモン剤フリーのミルクが使えれば理想的。ヨーグルトに使うミルクは、牧草で飼育された健康な家畜のものが望ましい。このようなミルクは、私たちが入手できる中で最も栄養価が高い上、超高温殺菌が施されてミルクの成分の一部が変性することもない。自家製ヨーグルトの味や舌触りは、商品化されたヨーグルトに勝る可能性がある。その上、ヨーグルトを作るのはとても簡単だ。
ヨーグルトは、スキムミルク、低脂肪乳、全乳【天然のままの牛乳】など、どんなミルクからでも作ることができる。幅広い料理にぴったりの濃厚でクリーミーなヨーグルトを作りたい場合は、牛の全乳を使うのが一番。牛や羊のミルクとは組成が異なる山羊のミルクで作ったヨーグルトも良いが、作った後に濾すか粉末のミルクを足さない限り、スプーンが立たないくらい柔らかいヨーグルトになるだろう。
最高の自家製ヨーグルト
多くのヨーグルト愛好家が求める濃厚な味わいに仕上げるためのもう1つのポイントは、ミルクをゆっくりと温めること。温めるスピードが早ければ早いほど、きめの粗いヨーグルトになる。温めることによって種菌と競合する可能性のある細菌が死ぬ。そして、ゆっくりと温めることによって、ラクトグロブリン【乳清タンパク質の一種】が変性し、ミルクに含まれているタンパク質が「小さな隙間に水分を維持しやすい細かい基質の鎖」と連結できるようになるとハロルド・マクギー
(Harold McGee) はその著書「On Food and Cooking: The Science and Lore of the Kitchen(マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-)」の中で述べている。
ヨーグルト作りには、良質の種菌(スターター)が必要だ。ヨーグルトの種菌は、チーズ製造業者を通して、または品揃えが豊富な食料品店で見つけよう。種菌の中には、長年にわたり受け継がれてきた在来のものもある。(Cultures For HealthやNew England Cheesemaking
Supplyがお勧め。)種菌を手に入れる代わりに、生きた培養菌を含むプレーンヨーグルトを店で買ってきて、ミルクに植菌しても良い。好みの味のヨーグルトを見つけ、1回ヨーグルトを手作りした後、その一部を種菌として次回ヨーグルトを作る際に植菌することによって、自分の種菌を維持できる。
私たちの作り方で必要となる種菌の量は、他の多くの作り方と比べて少ない。ヨーグルトの作り方のコツとして、イルマ・S・ロムバウアー (Irma S. Rombauer) の著書「The Joy of
Cooking」【料理の喜び(仮題)】からの抜粋を紹介しよう。同書の75周年記念版にはこう書かれている。「あなたは、使用する種菌の量がこんなに少ないのはなぜだろうかと驚き、もう少し量を増やせば結果がさらに良くなるのではないかと考えるかもしれない。しかしそんなことはない。細菌が混み合っていると、酸っぱくて水っぽいヨーグルトになる。」
工程は単純だが、次に重要なこととして、ヨーグルトをどのような方法で培養するかは各自で決めてほしい。43~46℃の間で一定の温度を維持できるような何らかの機器が用意できればよい。小さなクーラーボックスや魔法瓶も十分利用できる。クーラーボックスとヨーグルト作り用の容器の間に隙間がある場合は、お湯の入ったビンやバスタオルを詰めて理想の温度を維持できるようにする。また、ヨーグルト作り用の容器を食品乾燥機の中に入れて、適切な温度に設定してもよい。この他にオーブンを使うという手もある。オーブンはオフにして、パイロット灯、電球、またはお湯を入れた大きな容器で庫内を温める。この方法を選んだ場合は、うまくいくかどうか何度か試してみる必要があるかもしれない。安くて、簡単に操作できる電気式のヨーグルトメーカーを利用してもよい。
もしヨーグルトが固まらなくても、全部がだめになったわけではない。再度43℃まで温めた後、スプーン1杯分の種菌を混ぜて、もう1度トライしよう。
より濃厚でカルシウムの多いヨーグルトを作るために、ヨーグルトに粉末のミルクを加える人は多い。純粋なヨーグルトが一番だと思う人は、この工程を飛ばそう(後述のアン・メンデルソンがそうしているように)。「伝統的なヨーグルトの作り方では、ヨーグルトを濃厚にするのに、何かを加えるのではなく、ヨーグルトができた後に何かを引くことが多い」とメンデルソンは言う。これはつまり、ヨーグルトを濾してホエー(乳清)を取り除くということ。
ギリシャヨーグルトの作り方
現在、多くの大量生産メーカーは、ゼラチンや海草由来のカラギナンなどを使ってヨーグルトを固めている。しかし歴史的には、濾すことによってヨーグルトを濃厚にし、味を凝縮させ、ソースやその他の料理に適した状態にするということが行われていた。自家製ヨーグルトを濃厚にするには、ヨーグルトをチーズクロス【チーズを作る時に使うガーゼのような布】の袋に流し込むか、ヨーグルトをチーズクロスまたは清潔な布巾を被せた水切り用ボウルの中に注いで、数時間濾す。普通のヨーグルトと同じ培養菌で作ったヨーグルトを濾すのが、ギリシャヨーグルトの伝統的な作り方だ。ヨーグルトを最長1日水切りすると、ヨーグルトチーズ、別名「ラブネ」(labneh)になる。ヨーグルトの水切りは冷蔵庫で行うこと。
ヨーグルトの使い方についての面白くて斬新なアイデアに興味のある方には、「Milk:The Surprising Story of Milk Through the Ages」:アン・メンデルソン著、および「The Art of Fermentation【発酵の技術(仮題)】:サンダー・エリックス・カッツ(Sandor Ellix
Katz)著(こちらから入手可能)を強くお勧めする。
ヨーグルトの作り方
材料:
・ ミルク (ホモジナイズ(均質化)されていないもの、超高温殺菌されていないものが望ましい)
・・・ 1クウォート (0.95L)
・ ヨーグルトの種菌 ・・・ 大さじ1杯
手順:
ミルクを温める: 底厚の鍋にミルクを入れ、82℃になるまで弱火でゆっくりと温める(温度計を使うこと)。ミルクが鍋底に付着して乳糖が焦げないよう頻繁にかき混ぜる。
鍋を火から下ろす: ミルクを別に用意しておいたボウルに注ぎ、43~46℃になるまで冷ます。ミルクの入ったボウルを氷をいれた入りの大きめのボウルの上に乗せ、早く冷えるようにコツコツとかき混ぜてもよい。温度を注意深く見守ろう。
種菌を混ぜる: 小さなボウルに約1/2カップのミルクと種菌を入れて混ぜ合わせ、残りのミルクに注ぐ。均一になるまで混ぜる。
培養する: 植菌したミルクを用意した培養器に入れ、容器を数時間にわたり約43℃に保つ。ヨーグルトを固めている間、容器を揺すらないようにする。
堅さをチェック:
ほとんどヨーグルトは、3~4時間でカスタード状に固まるが、6~8時間経過した後のヨーグルトの方が好みだと感じる人もいるかもしれない。ヨーグルトは、培養する時間が長ければ長いほど、より風味が強く、きめが粗くなる。同時に、発酵時間が長くなればなるほど、より多くの乳糖が取り除かれる。発酵を始めてから数時間後に、小さなスプーンでそっとすくってヨーグルトをチェックする時は、すくった部分以外のヨーグルトを揺すらないようにする。約30分おきにチェックする。好みの硬さになったら、ヨーグルトを冷蔵する。
保存期間について: 自家製ヨーグルトは、好みの硬さになった瞬間が最もおいしいと感じるだろう。しかし、時間とともにヨーグルトの酸味が増して味が変わっていくのを楽しむ人もいる。1~2週間は保存できるが、5~7日を過ぎると、次回のヨーグルト作りの種菌としての能力が落ちる可能性がある。
Homemade Yogurt: Easy, High-Quality, Low-Cost
By Tabitha Alterman
2/19/2013
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