確実に、作物が、作った豊かでオーガニックな土壌で育つように、土壌のpHを理解する。酸性やアルカリ性土壌で何が引き起こされるか学び、更に、pHテストの結果をどのように自分の土壌に活用するかも学ぶ。
あなたの菜園の作物が、栄養分たっぷりの自家製有機土の恩恵を十分に受けられるようにするには、菜園の土のpHを理解する必要がある。pH は土の組成が相対的に酸性かアルカリ性かを表しており、pH と植物の健康や生育との間には密接な関係がある。土の pH は、土中の有益な菌類やバクテリアに影響を与え、植物の根が必須ミネラルを吸い上げられるかどうかを左右する。
土の pH とは何か
土のpHは、酸性またはアルカリ性の度合いを数字で評価したものだ。pH の値はすべて、0(最も酸性)から14(最もアルカリまたは塩基性)までの対数尺度で表わされ、pH7.0は中性を指す。pH は、化学の世界において水溶液中の活性水素イオン(H+)の濃度を測定するのに使用されている。ほとんどの食用作物が好むのは pH6.0~6.5 の間だが、菜園の pH が 5.5~7.5 程であれば、満足に収穫できる(スライドショーの表を参照)。pHの尺度は対数で表されているため、pH0.5の差は数字の印象よりはるかに大きい。例えば、pH7.0 は、pH6.0 より 10 倍酸性でないことを意味している。酸性寄りの土でよく育つジャガイモや多くのベリー類は、一般的な作物が好む pH の範囲に当てはまらない代表的な例だ。土の pH は、母岩や植物、長年の気象条件の相互作用の結果であり、気候や物理的環境によって変化する。ミシシッピー川東側や大西洋沿岸など、湿潤な気候が深い森林を育んできたような場所では、土は酸性であることが多い(pH は 4.0~5.5 の間)。比較的乾燥したアメリカ中西部の草原の土は、若干酸性寄り(6.0~6.5)で、ロッキー山脈など非常に乾燥した地域は、アルカリ土壌(7.0~7.8)が大部分を占めている。このように気象条件とpHの関係には一定のパターンがあるが、同じ気象条件でも、局所的な岩石の違いによって土壌の性質は大きく変わってくる。例えば、酸性の地域に風化した石灰岩が作りだしたアルカリ土壌が点在する場合や、標高によって雨量が異なる場合などが挙げられる。建設工事中に土壌がひどく撹乱されるのはよくあることで、表土が完全に失われてしまう場合もある。人工的な化学肥料の中でも特にアンモニウムや硫黄を多く含むものは、土壌をさらに酸性化する可能性がある。また、土の中の有機物を減らすような方法で耕作した場合にも土壌は酸性化する。石炭燃焼による大気汚染を原因とする酸性雨が小川や土を酸性化し始めたのは1800年代後半だが、それ以来ずっと、雨が降るたびに土壌が酸性化している地域もある。外的影響に加え、ピートモスや松葉など、有機物の種類によっては分解の過程で自然に酸性化する。石灰岩やその他のカルシウムの多い鉱物から土が生成される地域には、アルカリ土壌が自然に存在する。一般的に水分蒸発率が高い乾燥地帯では、蓄積した塩分が表土に山積みになることで、問題がさらに悪化する。アルカリ土壌の菜園は、有機物をたっぷり加えることによって、多くの作物は元気に育つようになり、土の保水性も良くなる。また、マルチングをすることで表土からの水分蒸発を抑え、植物の根域に塩分が蓄積するのを遅らせることができる。
土の pH を調べる方法
複雑な土壌化学をあなたの庭園に役立てることができるよう、ポイントを絞って説明してみよう。
菜園で作物が元気に育っているようなら、菜園の pH を心配する必要はないだろう。しかし、菜園の作物がご近所の作物ほど順調に育っていないようなら、pH の問題かもしれないので、pH 検査付きの土壌診断を受けた方がよいだろう。州の土壌試験所に基本的な土壌診断を依頼すると、居住する州によって無料~ 25 ドルの費用がかかる。pH 検査と多量要素の診断が含まれるのが一般的だが、微量要素も含まれる場合もある【多量要素:チッソ、リン酸、カリウム、マグネシウム(苦土)、カルシウム、硫黄など/微量要素:マンガン、ホウ素、鉄、銅、亜鉛、モリブデンなど】。
詳しい使用説明書が付いた土壌検査キットは、通常は農業教育センター(extension service offices)で入手でき、通信販売もされている。菜園の一部や一区画だけが不調な場合は、試験所に依頼して結果を待つより、家庭向けの pH 検査キットを試した方がよいだろう。ミズーリ州農業教育センターの専門家チームが、土のサンプルを 82 か所の土壌試験所に提出し、試験所からの結果と、DIYpH検査キットの結果とを比較した結果、20 ドルのラモット(LaMotte)ホーム・カラー・キット(ピースフル・ヴァレー・ファーム&ガーデン・サプライ(Peaceful Valley Farm & Garden Supply)で購入可)が、精度が高いという評価を得た。私個人は pH カラー・キットが好きだ。検査結果が色で分かるカラー・キットは、使っていて楽しいし、使い慣れるとオレンジ色(酸性)から緑(中性~アルカリ性)までの微妙な色の変化を見分けられるようになる。
まずは堆肥を足そう
土中に含まれる有機物の量を増やすと、酸性またはアルカリ性に偏った pH は中性に近づいていく。有機物が緩衝材のような働きをし、土が極度の酸性やアルカリ性になるのを抑えるからだ。
完成した堆肥はほぼ中性の pH であることが多いので、まずは定期的に堆肥を足してみて、土の極端な pH が改善するかどうか試してみよう。pH 検査でわずかに酸性またはアルカリ性であるという結果が出た場合は、堆肥と有機マルチを施すだけで、菜園の土の状態はよくなり、作物は元気に育つようになる。
酸性土壌のpHを上げる
石灰は、過度に酸性に傾いた土を治す手段としてよく使われる。数か月かけてゆっくりと pH の値を上げていく石灰は、地面の石灰岩から作られた安価な土壌改良剤だ。通常は、ラベルに「ドロマイト石灰」と記載された、カルシウムとマグネシウムの両方を含む製品が望ましい。ただし、土が固く締まっている場合や、土壌診断でマグネシウム過多(マグネシウムはチッソと結びつく)という結果が出ている場合は、蟹または牡蠣の殻を粉末にして作られた低マグネシウム・高カルシウムの石灰を使用すべきだ。製品の種類や土のタイプによって散布量が変わってくるので、ラベルを読んで指示に従おう。適量の石灰を散布するには、土壌の pH を把握している必要がある。石灰を必要以上に散布してしまうと、それを矯正するのはとても難しい。このことを念頭において、最初は石灰は少なめに散布するよう心がけるとよい。私の場合、酸性土壌に対しては有機物とドロマイト石灰を加え、pH が 6.0 を超えたら、石灰の散布は行わないことにしている。薪ストーブから出た灰(アルカリ性)を毎年少量散布するという方法で pH を維持できることが分かったからだ。十分なカルシウムとマグネシウムを含んだ木灰には、石灰と同様の効果があるだけでなく、たくさんの微量要素も含まれている。木灰や石灰を使用する場合はなるべく少ない量を散布し、pH が 6.5 を超える土には木灰や石灰を決して加えないのがポイントだ。耕作地 50 平方フィート(4.6㎡) あたり、木灰 1 ポンド (0.45kg) を目安にする。木灰がふんだんにあったとしても、1,000 平方フィート (93㎡) あたり 20 ポンド(9kg)以上を菜園に散布してはならない。酸性の化学肥料を使用していない場合、酸性土に一度石灰を散布すれば、以降数年間は再び散布する必要はない。ただし、菜園が雨の多い地域にあり、多孔性の砂質土壌の場合は、pH検査で、1年おきに石灰を散布する必要があるという結果が出るかもしれない。pH 検査で必要だという結果が出ない限り、決して石灰を散布しないこと、また、ブルーベリーやツツジなど、酸性土壌を好む植物を育てている場所にも決して使わないよう注意しよう。
アルカリ土壌のpHを下げる
極度のアルカリ性(高い pH)の土に対しては、多くの場合、有機物と粉末状の硫黄を加えることで中和できる。ただし、アルカリ土壌でも、遊離石灰(別名炭酸カルシウム)が多く含まれる場合は、硫黄を使うメリットはほとんどない。遊離石灰が多く含まれるかどうかは、土のサンプルを酢に浸すことで調べられる。酢と反応して泡が出たら、その土には遊離石灰が含まれているということなので、菜園の土を入れ替えることを検討した方がよい。アルカリ土壌が主流の地域にいる農業教育の専門家たちは、有機物を加えて土壌改良すれば、pH が 7.5 の土地でもほとんどの植物はよく育つので、pHを下げることよりも、有機物を加えて土壌改良することを一番の目標にすべきだと強調している。アルカリ土壌は、土中にある植物にとって有益なリンをなかなか離さないので、機会があるたびに堆肥化された肥料を使ってアルカリ土壌の欠点を直そう。高いpHに関連する諸問題は、堆肥化された肥料によって解決できることはすでに分かっている。堆肥化された肥料とミミズ堆肥の両方に含まれるフミン酸(腐植酸)は、アルカリ土壌で育つ作物がリンを取り込みやすくする。また、普通の堆肥や被覆作物の腐敗した植物組織にも同じ効果がある。松葉などの酸性のマルチは、土の pH をわずかに下げる効果があるが、それ以外のマルチ(樹皮や木材チップ)は、土の pH にはほとんど影響がない。長年有機物を与え続けた私の菜園の土は、黒くてふかふかしており、土の pH 検査ではほぼ中性を示している。一方、私が新しく設置した区画の土は、目の詰まった粘土質で、pH 検査では酸性を示している。土壌のpH測定は、私がどのくらい土壌を改良し、酸性雨の影響を軽減し、土中の微生物の活動を引き出すことができているかを評価するのに役立つ。これらのステップの積み重ねが、よりよい菜園を育てることにつながる。
Your Garden’s Soil pH Matters
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