文 ティム・リニー（Tim Rinne）
10年間私は気候変動の脅威について、知的、論理的レベルでくよくよ心配していた。しかし、気候変動の意味が個人的に分かり始めてやっと、状況の真の恐ろしさを理解した。それがいかに私や世界の人々の当り前の日常を破壊するものであるかということを。2009年の初頭、ある実感が腹を直撃するかのように湧いた。それは、私が自分の食糧供給についてほんの初歩的な手掛りも知らないということ。食糧がどこから来てどのように育てられたのか知らないということだった。
それって自ら墓穴を掘る生き方じゃないか？
私は変わる決心をした。というより小さな変化をたくさん。
私は何年もこの考えを弄んでいたが、土地を買って田舎に移住することは、実行可能な選択ではなかった。妻のケイ（Key）と私は、ネバダ州リンカーンで、自宅から1.6km以内のところで働いており、我々は毎日の長距離通勤による二酸化炭素排出が唯一の生態学的災害を起こすのだろうと結論づけていた。
その頃、親友のリンダ（Linda）は、「コハウジングと目的協同体（Cohousing and Intentional Communities）」というワークショップを見つけた。資源を共有し、皆で菜園で働き、負担を軽減することを目的に、互いに近所に住むことを選択した、同じ志を持つ人々の集団である共同農場（community homestead ）という考えに、リンダは感動した。この考えについて話し合ったあと、ケイと私が住んでいる古い近隣を再利用する方法が、我々野心的な3人組にとって最も賢明な方向に思われた。そして、リンダと彼女の夫エド（Ed）は、彼らの家を売り、我々の街区の2軒先に引越してきた。
突如として我々の頭数は倍になった。種が芽を出し始めた。
ケイと私は4軒隣の「問題の資産」を買い、修理するために自宅を抵当に入れることにした。我々は住人の賃貸期間が終了するとすぐに、そこにご近所菜園を作り、家屋を修理して、再び賃貸にした。これで、この街区で我々の資産は増えたが、まだ我々が何が出来るのか明確な見通しを持っていなかった。
色々探していたら、ふと、食べられる庭(エディブル・ガーデン)作りという考えと、ロザリンド・クリーシィ（Rosalind Creasy）著の同名の本を見つけた(81ページで利用可)。彼女は、我々の人生を（芝生も）永久に変えることになる質問を提示した。「なぜ我々は食べられないものばかり植えるのか？」
私はこの地域の多くの区画について考えた。22年間、私は忠実に草を刈り、注意深く樹木を育ててきたが、そのどれもが食べられる果実を実らせなかった。私の庭は全て、小さなトマト区画を別として、食べられる植物はひとつもなかった。私はなぜかと考えた。桃や桜の木はどこから見ても装飾品のように愛らしい花をつけ、そのほかに食べものも得られる。苺の苗は美しく一面に生えて、香りのよい宝石のような実は道行く人々にとって美味しい誘惑となる。
ある計画が固まり始めた。我が家の庭を、芝生でなく、食べものの庭にし、歩道のような公用地もそうしようと誓った。ケイと私は、人々が競って自分たちの庭にも適用できるような、都会の食糧生産区画の見本をつくろうとしていたのだ（人々はそれを見て驚いた）。
誰も田舎に移住する必要はないし、多くの人には無理だ。私たちは移住せずに芝生を生産的なご近所農園にすることができる。（持続可能な都会生活については、「都会の農的くらしのガイド」を参照。－マザー）
都会の農的暮らし
2009年の園芸シーズンの初めに、芝生の半分を鋤で掘り返し野菜を植えた。残りは翌年再開した。私はすぐに、いかに自分が無知だったかを学んだ。この大きさの菜園を作るとしたら、マスター菜園家コース（Master Gardener course）で学ぶ必要があることをケイが勧めてくれた。私は直ちに登録し、2010年のはじめの4カ月でそれまでの30年間に吸収したことよりもたくさんのことを学んだ。
ケイと私が食べられる庭作りで忙しくしている間、友人で新たな隣人となったリンダは菜園に取り組んでいた。彼女は夢中になって次の年までに夫のエドと一緒に裏庭をすべて菜園にしてしまった。
2010年5月に「問題の資産」の住人が出て行ったあと私たちで使用できるようになり、我々は前庭と裏庭すべてをこの地区の隣人たちが参加するための共同菜園にする作業に着手した。裏庭の大半を占めていた砂利駐車場を取り除き、黒い表土を入れた。そして、木片の歩道で囲まれた菜園を60cmの深さで掘った。
初めの年、私が150株の苺の苗を植えているのを興味深く見たたくさんの隣人たちは皆、私がその全部の苺をどうするつもりなのかと聞いた。「この近所で苺が好きなのは私だけかね？」と答えたのを覚えている。次の春、共同菜園を手伝ってくれた家庭に平等に2.8Lのみずみずしい果実を配ったが、断った人はひとりもいなかった。
その間、リンダとエドともう一人の隣人は、ケイと私が買った土地の近くのもう一つの放棄地の裏庭を開拓する許可を得た。2011年夏には我々の希望が叶ったように、リンダとエドは土地を手に入れることができ、我々の急成長プロジェクトに4番目の区画が追加された。彼らはケイと私が体験したのと同様の、家屋と庭の改修という大変疲れる作業に着手した。裏庭の土壌はひどいもので、大半が粘土と瓦礫だった。しかしその後改修され、その土地はすでにご近所菜園に加えられている。
そして魔法のように私たちの土地の改革が他の区画にも広まっていった。私たちと一緒に栽培した翌年、2人の隣人が彼らの小さな庭で菜園を作る気になった。更に小道をはさんだところに住んでいる2人の住人が、健康状態のため庭に出られないので、彼らの裏庭に入る許可を申し出てくれた。また、ある投資家は私たちが近隣のためにやっていることに感心して、彼の庭全部を菜園に提供してくれた。彼らの土地を使わせてくれる見返りとして、皆と同様に余った野菜や果実を分け合うことにしている。5年後には、市内に2ヘクタールの菜園、果樹園を開拓し、果樹50本、ぶどう棚休憩所9軒、ベリー園15箇所に。
ところで、小村（Hamlet）とは？
始めの2～3年は自分たちが創りつつあるものに対して「村」という呼び方をしていた。けれども、私たちのやっていることはそれよりもワンランク下のような気がしていたので、その呼び方はいつも少しおこがましく感じていた。
「小村（hamlet）」という言葉はもともと教会や店をもたない小さなコミュニティを意味していたらしい。小村の住人は小村に欠けている必要なサービスを近くの村に依存する。その定義がぴったりだと思った ― 完全な自給自足には小さ過ぎる。常にリンカーンの都心の一部であるのだから。ホーレー（Hawley）の歴史的地区でこのような暮らしをしていることから、今では私たちのコミュニティをホーレー小村（Hawley Hamlet）と呼んでいる。
全体で20家族が私たちの小村に参加している。皆がそれぞれの畑を持ち、共同の果樹園から果物を分け合い、3つの「寄贈された」裏庭では、ジャガイモと豆とひょうたんの1年ごとの輪作を確立し、収穫物は皆で公平に分けている。
鶏、蜂、太陽光発電などなど
うちは角地のため、市の法律にある程度従うとしたら、鶏小屋に適したひっそりとした場所がなかった。家の近くでただひとつ適していたのは隣のバリー（Barrie）の私道だった。失うものはなにもないと思い、バリーに鶏を飼う気があるか聞いてみた。彼はこのアイデアに飛びつき、2011年の5月からバリーと彼の下宿人のパット（Pat）と私は4羽のかわいいロード・アイランド・レッドのパパになった。まるで時計仕掛けのようにそれぞれが確実に30時間毎に卵をひとつずつ産み、私たちの世帯を十分にまかなってくれている。
この農的なコミュニティに着手しはじめた頃、私は全員が食べ物だけを育てるということにかなりこだわっていた。けれどありがたいことに賢明なリンダ（Linda）の助言によって、我々が受粉を頼る蜂にとってどれだけ花が重要かを指摘してくれた後、特にそのこだわりはなくなった。リンダの提案で我々は一緒に養蜂のクラスを受け、2012年の4月に最初の巣箱を設置した。
ケイと私はまた、築108年の我が家を「環境に優しい」住居に変えることにも力を注いできた。2009年に地熱を利用した冷暖房システムを設置し、水道光熱費が激減するのを目の当たりにした。2011年には屋根に太陽光発電を設置し、電気を使うだけでなく発電することを始めた。また壁に断熱材を入れ、省エネの電気を取り付け、節水タイプのトイレにし、すべての縦樋に雨水タンクを設置した。
我が家に施した環境保護的な改善の中で最も楽しんだのは、「グリーンハウス（greenhouse）」と名づけた温室を増築したことだった。歴史的な地域に住んでいるので、元々存在する近隣の建物とも調和するものを建てることは絶対だった。園芸書を読んでいてエリオット・コールマン（Eliot Coleman: メイン州の有機農業家で暖房なしの温室で一年中作物を作っている) のことを知り、同じようなことができないかと思った。それで床が土で太陽以外の熱源を持たない温室をつくった。
また近所の畑には 460 x 910cm のシンプルなビニールハウスを、材料費10万円以下で作った。ただの透明なビニールシートを覆いにしたもので、最初の霜で外の栽培シーズンが終わった後も長い間1ブロック分のサラダ用の野菜を育てることができる。
近所とのつながりを作る
ここで紹介したことは全て政府の援助なしで行ってきた。小村は自分たちで始めた自立した都会の農的暮らしであり、こんな取り組みが国中に広がればと思っている。この小村の構想をすごく魅力的にしている特徴は、近所同士でつながりを築き、協力し合って近所の庭で食物を育て、地域の資源を有効に利用し、逼迫した生態系への負担を軽くすることで、どんな都市部でも同じようにできることだ。
共に農作業をすることはまさに近所の人たちにとって本物の磁石のようだ。30年間の政治組織での経験では、一緒に食物を育てるということほどに垣根を無くし対話を促すものを見たことがない。ケイと私がこのブロックに住んで最初の22年間、私たちはおそらく1人か2人の近所の人の名前を知っていた。だが小村を築きはじめて5年の今日では、もう知らない人がいない。全員のことを知っている。皆美味しくて質のよい食物を作るために一緒に働き、常に新しいことを学ぶのを楽しむ。そして益々の安心と充足を感じている。
私たちのやったことは、誰にでもできる。そしてその全てが始まるのは・・・そう、畑なのだ。
ティム・リニーはネブラスカ州リンカーンに住み、Nebraskans for Peace の州のコーディネータ。ハーレー小村を創るのに集ってきたご近所さんたち全員には報いきれないほどの状況。
Homestead Hamlets: Neighborhood Gardens That Create Community Food Security
By Tim Rinne
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