在来種のハチはミツバチと同様に作物に授粉する。蜜が豊富な花、昆虫ホテルなどで、裏庭をハチの聖域に変えよう。
地球上でもっとも有能な花粉媒介者である在来種のハチが、重大な危機にある。かつて彼らが蜜や花粉を集めていた草地はショッピングモールに変わり、巣を作るための枯れ木は見つけるのが難しくなっている。なんとか生き延びてきたハチたちも、多様な生態系を持つオーガニック・ガーデンに安息の場を見つけない限り、大規模農業の農薬の危険にさらされている。
労働の果実
ハチは、食べ物と生活空間さえあれば、その場所にとどまる習性を持つ。このような花粉媒介者の世話をすることで、ガーデナーたちは大きな収穫を得ることができる。イチゴ、ブルーベリー、カボチャは、良い実をつけるために在来種のハチの助けを必要とするが、マルハナバチ、コハナバチ、ヒメハナバチなどの在来種のハチは、そうした様々な作物の授粉を、ミツバチよりも無駄なく完璧に遂行することができる。マルハナバチがとまったトマトはより大きな実をつけるが、それはこの大きなハチがブンブンうなる動きが、風が吹くだけの場合と比べ、より多くの花粉をまき散らすためだ。また、複数の種類のハチが授粉したイチゴはいびつな形の実をつけることが少ないし、スカッシュビーという野生のハチが授粉をしたカボチャは、大きな実をつける。花粉媒介者は、米国の150種の作物生産に重要な役割を果たしており、非営利の野生生物保護団体 Xerces Society によると、私たちが飲み食いするうち3口に1口が花粉媒介者の世話になっている計算だという。
ハチのニーズ
北米原産の4000種のハチの70%が、地面に穴を掘った安全な場所を住処とする「地中バチ【ground nesters】」で、残りの30%は枯れ木に巣を作る「樹上バチ【wood nesters】」だ。ほぼすべての在来種のハチが単独行動で、群れは作らない。ハチは本来おとなしく、攻撃されたり窮地に陥ったりしない限り、刺すことはない。
年少のハチは、それぞれが好む作物の開花時期に合わせ、1年の然るべき時期に巣から出て行く。メスのハチはすぐに交尾をして巣作りに適した場所を選ぶが、それは好条件の花から300メートル以内であることが多い。(73ページの「在来種のハチを魅了する植物」を参照。)近くを何度か飛んでみて新しい住まいの近隣の様子を調べたら、すぐに巣穴を掘り始め、そこに卵を生みつける。必要とする花粉、蜜、時には、泥を集めるには、花々と巣の間を何千回も往復する必要があるので、花と巣は近ければ近いほど、飛行に費やすエネルギーを節約できる。
在来種のハチの種類
在来種のハチは、住環境と密接に結びついている。次に紹介する5種類のハチは、庭園や果樹園で授粉を行う。
マルハナバチ: 在来種のハチの中でもっとも大きく、エサを求めて一番遠くまで飛ぶ。活動期は春から秋で、幅広く植物の授粉を行うが、とりわけマメ科植物にとって重要。地中か木の窪みに巣を作る。在来種のハチの中で唯一、真社会性があり、集団で生活をする。
メイソンビー: 春に果樹園に現れることが多いため、オーチャード・ビーとも呼ばれる。ずんぐりとして固い毛に覆われた小さなハチで、黒か艶のある青または緑色をしている。たくさんの卵を、泥を使って木の枝の窪みに納める。人工の巣に住みつくことも多い。
ヒメハナバチ: ミツバチを小さくしたようなスリムな外見に、スズメバチのように長い羽根をもつ。年の初め頃が活動期で、果樹にとって重要な花粉媒介者。単独で地中に住むが、適地には多くのハチが密集して営巣している。
スカッシュビー: 黄色と黒の小さなハチで、キュウリ、ズッキーニ、カボチャなどウリ科の植物の花にとまる。オスの中には、メスが来ることを期待して花の中で眠るものもいる。単独で地中に暮らし、初夏まで出てこない。
コハナバチ: 小さく、背中に光沢がある。イチゴやブルーベリーなど、様々な花で授粉を行う。種類により、年の前半に活動するものと後半に活動するものがいる。巣から400メートル以内にいることを好み、単独で生活するが、適地には複数の巣がみられる。
ハチの聖域
地中バチのほとんどは極めて小さく、生存率を高めるため影を潜めて暮らしている。むき出しの地面に掘られた巣穴を見つけるのは難しく、アリや単独性のスズメバチが作るものとよく似ている。
自分の敷地に地中バチが生息しているかどうかを調べるには、じっくり観察するしかない。バージニア州立植物園には143種の在来種のハチが生息するとされるが、同植物園の管理人、T’ai Roulston 氏は「成人して巣の外に出たハチは、育った場所の近くに巣作りすることが多いので、ハチが一度使った場所を保全すれば、そこに継続的に巣が作られることになる」と述べている。また、地中バチの保護に一番良いのは「耕される恐れのないたっぷりの土と植生のスペースを用意すること」で、日当たりの良い南向きの斜面が好ましいが、地中バチの中には垂直に切り立った土手を探すものもいるという。
マルハナバチの巣は通常、うまく隠れた場所に作られ、入口から長いトンネルが掘られているが、生息環境に物資が足りなければ、快適さを求めてヒトにかなり近い場所(たとえば玄関脇など)に居を定めることもある。2~3日の間ときどきホースで水をかけていれば、ハチはたいていどこかへ移って行く。
裏庭にハチをおびき寄せるには、砂混じりの泥山の周囲に低めの木枠を設置し、腐った丸太か古くなった薪を何本か添えればよい。後は小山に草を茂らせ、ハチを誘い込む多様な植物を近くに植えれば、ハチの聖域が完成だ。
昆虫ホテル:500室予約
早咲きの果実類を授粉するのに一番適しているのは、木に巣を作るメイソンビーだ。彼らは、窪んだ小枝の芯の柔らかい部分(ニワトコやキイチゴ類の枝)や、カブトムシやその他の昆虫が枯れ木にあけた穴の中に巣を作る。木に巣を作るハチの仲間には、切り株や丸太を好むものもいる。
もし、あなたの庭のそばに、枯れ木や腐った丸太のある森が開けていれば、すでにかなりの数のメイソンビーや木に生息する種がいるだろう。近くに枯れ木がない場合、フェンスの支柱や丸太で代用が可能だ。ドリルを使って、フェンスの支柱や丸太の南側に深い穴をたくさんあける。ハチは種類によって穴の大きさの好みが違うので、穴は2mmから8mmに幅をもたせる。穴をやや下から上向きに空ければ、雨水が入ってくるのを防ぐことができる。
ヨーロッパでは、多くの都会の公園に昆虫ホテルが置かれ、支柱のいらない構造のそれには、木に巣を作るハチやその他の昆虫の住居が用意されている。奥行きの深い箱に、茎や穴をあけた丸太が巧みに詰められたところを想像してほしい。昆虫ホテルを簡単に作るには、木のパレットを何枚か積み上げ、そこに茎や切り口にドリルで穴をあけた丸太を差しこめば良い。
どんな在来植物が花粉媒介者を魅了するか
多くの種類のハチが、決まった時期に決まった作物からだけ花粉を集めて蜜を吸う(例えば、春はブルーベリー、夏はカボチャというように)。彼らが食料をあさるのはほんの数週間だけなので、夏の間、色々な花を咲かせておくことが肝心だ。最近の研究では、多様な花を植えるほうが、単一種類の花を大量に咲かせるよりも、より多くの在来種のハチを引き寄せることが分かっている。
在来種のハチは、在来植物と共進化する。だから、在来の植物を育てることが自然と在来種のハチをひきつけることになる。多くの野菜やハーブが、成長の早い一年草や多年草の花々、花の咲く潅木や樹木と同様、ハチを魅了する(ページの「在来種のハチを魅了する植物」を参照)。よくよく注意して見れば、あなたの庭に茂るたくさんの植物が、羽の生えた素晴らしい生き物を魅了する自然な磁石になっていることに気づくだろう。ハチの好きな植物を見つけたら ― ほら、バチっと見て ― その植物をもっと増やそう! それこそ、ハチが必死で求める救いの手を差し伸べる一番の近道だ。
在来種のハチを魅了する植物
次に紹介する花々や野菜、ハーブ、果実は裏庭のハチの聖域をより素晴らしくしてくれる。
一年草の花:ヤギルマギク、コスモス、クフェア、ヒエンソウ、ポピー、ヒマワリ、百日草
多年草の花:ノコギリソウ、アガスターシェ(ヒソップ)、ブラック・アイド・スーザン、カリガネソウ、ハルシャギク、エキナシア、キツネノテブクロ、タチアオイ(一重咲き)、ラムズイヤー、モナルダ(ビーバーム)、観賞用ネギ、ペンステモン、ロシアンセージ、マツムシソウ
野菜:アーティチョーク、カルドン、豆類、キュウリ、エンドウ、夏および冬カボチャ
ハーブ:バジル、ルリチシャ、イヌハッカ、コンフリー、コリアンダー、タンポポ、ディル、フェンネル、ラヴェンダー、丈の低いクローバー、ミント、オレガノ、ローズマリー
フルーツ:リンゴ、ブラックベリー、ブルーベリー、クランベリー、スグリ、メロン、ラズベリー、ストロベリー
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By Barbara Pleasant
August/September 2013
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