農的暮らし|自給自足生活の実践

テキサス州の目的共同体【Intentional Community:理想を共有する人々の理想をめざす共同体】は、馬による農耕や有機農業から、神、土地、お互いへの愛のある暮らしまで、教義どおりに実践している

 

By Bryan Welch

 

私は子供のころ、大きくなったらアーミッシュ【 合衆国 の ペンシルベニア州中西部 などや カナダのオンタリオ州 などに居住するドイツ系移民の宗教集団。移民当時の生活様式を保持し、農耕や牧畜によって自給自足生活をしていることで知られる。】になりたかった。

 どうしてアーミッシュを知ったのかは分からない。私はニューメキシコの砂漠地帯に住んでいて、アーミッシュの人を見たことはなかった。だが、役蓄【農耕・運搬用の家畜】で農業をして、自分の食物を育て、自分の衣服を作り、簡素な材料と協力の精神でお互いの小屋を建てる人々がいると、いつしか、知った。

 私は、自分の暮らしをそんな風にしたかった。

 もちろん、レーシングカーを運転したかったし、ロックバンドでギターを弾き、アフリカのサファリに行きたかった。これらは、結局、気晴らしの世界だが。

 アーミッシュは、民族特有の共同体でもあり、私はアーミッシュとして生まれてはいないのだ。しかし、だれもが簡単に思いとどまれるわけでもない。

  Homestead Heritage という宗教的共同体は、テキサス州ワコの郊外を拠点とし、役畜で農業をし、自分の食物を育て、自分の衣服を作り、お互いの小屋を建てている。キリスト教信仰と物質的簡素さ ― 外見でさえも ― アーミッシュと非常に似ている。メノナイト運動【Mennonite:メノー派は、キリスト教・アナバプテストの教派。非暴力、暴力を使わない抵抗と融和および平和主義のために行動している。】などの宗教的共同体で、アナバプテスト【Anabaptist:再洗礼派は、キリスト教において宗教改革時代にフルドリッヒ・ツヴィングリの弟子たちから分派した教派。長く教会史上異端とされてきたが、20世紀に入ってその運動が再評価され、現在そのうち福音的なグループがプロテスタント福音派の有力な潮流のひとつとして理解されている。 】と関連している。

 しかし、Homestead Heritageの創設者の多くは、アーミッシュやメノナイトとして生まれていない。ユダヤ人、バプテスト派、ペンテコステ派として生まれている。元々彼らの多くは、都会のニューヨーカーだった。ロサンジェルスから来た人もあり、イスラエルからも、1960年代の共同生活体的な暮らしから来た人もある。彼らは、馬による農業をするよう生まれた訳では無く、しかもキリスト教信仰を持つよう生まれた訳でもない。技能、価値感、信念を学び、それから、自分たちの周りに共同体を作ったのだ。

 その共同体は1973年に、ニューヨークで小さな市内の使節団として始まったもので、メンバーは、隣近所や大自然ともっとつながりたいと思う人たちだった。彼らは土地を見つけた ― まず、コロラド州、最終的に、テキサス州。1990年、ワコ近郊に510エーカー【約2km2】を買い、新しい農場を「Brazos de Dios【神の腕】」と名付けた(これは、隣接するBrazos川の元々の正式名)。彼らは、家と小屋を建て、教会を建て、作物を植えて家畜を育てた。

 Blair Adams は、共同体創設者の一人で、自著「What We Believe【私たちの信ずるところ】」の中で伝統と信念の考察を長文で記している。約50ページにわたる内容の濃い学術的なものだ。

 だが、Brazos de Diosを訪問すると、(そうしようとしない限り)神学的な議論に立ち入ることはないだろう。教区民はめったに神学を話題にあげず ― たとえ、そうしたとしても、彼らには信念の根源や具体的な歴史に関する深い認識があることを知るだろう。彼らの最も明白な神の教え ― 共同体内のどこからでも見える ― は、自然美、精巧な芸術と技術、美味しい自然食、親切心を愛すること。

 私たちは、Homestead Heritageと共に活動していて、マザー・アース・ニューズ・フェアを通じて、彼らは、Ploughshare Institute for Sustainable Cultureというスクールの紹介をしている。スクールでは、養蜂、オーガニック・ガーデニング、蹄鉄工、木工、石鹸作りといった伝統技術を学べる。生徒に、チーズの作り方、ハーネスの作り方、自分用の食器と家具の作り方を教えている。Ploughshare Instituteのオンライン(www.SustainLife.org)で詳細を学べる。

 Homesteadのメンバーが言うには、イエス・キリストの教えの導きで、より意義深く、慈悲深い暮らし方を探した。ひいては、近代社会を統治する搾取的制度に依存せず、より自立した生き方を求めることになった。その過程で、自給自足の技能を得て、今では、その技能を他の人々に教えている。

 メンバーはまた、Homestead Heritage のライフスタイルの果実を直接訪問者と共有している。Brazos de Dios の中央広場には、カフェの周りに店が立ち並び、共同体で採れた食物を提供している ― 牧草育ちの牛の肉やソーセージ、自家製パイやアイスクリーム、広場のすぐそばの製粉所で挽いた自家製小麦の出来立てパン。近くのギフトショップの小屋(ニュージャージー州から移動して組み直した築200年のコロニアル調の小屋)では、精巧な芸術品、家具、手織りの衣服、楽器、本、その他、共同体の居住者が創作した多数の美しいアイテムを販売している。(2世紀にわたって人の足や車輪で擦れて滑らかになった)移築前の元々の床板を張って建てられた世界レベルのギフトショップだ。

 共同体の建造物はほとんどが、古い建物を建直したもので、最初の米国植民地地区から部品ごとに運び込まれた。Homestead Heritageの教区民であるKevin Durkinは、50年前、カツキル・マウンテンにある幼少時の家から丘を上ったところにある放置された小屋に心を奪われた。それで、数十年前、Brazos de Diosでの農的暮らしで小屋が必要になった時に、解体して移動できる伝統的な木材組みの建物を探しに行った。彼は、他の人々へ移設サービスを販売し始めて、とても楽しく活動した。今まで、合衆国中の200以上の小屋を移動した ― 美しい家で新たな暮らしを見つけたい多くの人々のために。内ひとつは、東京でコミュニティーセンターとするために、ニューヨーク州北部で解体され出荷された。

 Brazos de Diosの穀物は、元々1760年頃にニュージャージー州北部で建設された建物に収められた水力駆動の製粉所で挽かれている。繊維工芸用の建物は1830年頃にニューヨーク州ミドルバーで建てられた小屋だった。協会の講義は、独立戦争の頃George Washington(ジョージ・ワシントン)が本拠地としたコロニアル調の家に付随していた小屋を改修して開かれている。協会のダイレクターのButch Tindellは、「ジョージ・ワシントンの馬がここで眠った」という史跡標示板を注文するかなと冗談を言う。。。

 

Homestead Heritage: Self-Sufficient Living in Action